可愛くて強か 4
【ゴールデンウィーク中は何をしている?5日にバーベキューをするけど来ない】
ゴールデンウィークに入る前日に三上からラインが届いた。
【ごめんなさい。店の手伝いなんだ】
千香良は少し迷って断った。
何だか気が乗らない。
千香良は大勢の集まりが苦手だ。
人見知りなのでどうしても輪の中に入れない。
しかも三上に友人は成績が良い連中ときている。
話が合うとも思えない。
そのぐらいの見当は千香良でも付く。
それでも男子は良い。
問題は女子だ。
女子は必ずマウント争いをする。
運転免許試験場で会った娘が来ていたら絶対に負けてしまう。
【残念。それじゃ、姉ちゃんと仕事するの?】
少し斜めな質問が返ってきた。
【乙葵さんの休みの日に入る予定】
実際には千香良の手伝いは必要ない。
けれども、万が一、忙しくなると困る。
特に乙葵が休みだと少し心配かも……
その程度だ。
【姉さんの休みを代えるのは、どう?】
千香良は、仕舞った、と思う。
けれども断りの本当の理由は言いたくない。
【駄目だよ、これでも娘だから、私に都合でパートさんの休みを代えるなんて出来ません】
千香良は少し強めのメッセージを送ってみた。
『蘭々』で良く聞いた台詞の引用だ。
【そうだよな、やっぱり相葉さんは社会人だけ会って考えが大人だ。俺、反省するわ】
千香良は自分で自分が嫌になる。
現場で大人に混じって4ヶ月。
もう方便も容易い。
亜紀の口癖も方便。
可愛く強か。
男社会で女が上手く立ち回るには必要不可欠らしい。
「また、誘ってね」
今度は社交辞令。
三上が医大に入ってから2週間程、連絡が途絶えた。
18歳には長い。
恋人ではないが友人として都合良く扱われるのも嫌だ。
もう三上との距離感が分からない。
中学の同級生。
同じ自動車学校。
姉が働く洋食屋の娘。
何1つ意味を持たない。
千香良も忙しくしていた。
用事も無いのに三上には、ラインを送らない。
お互い様なのに、行く道の違いが無意識に距離を取らせる。
それよりも千香良は美々の来る日が待ち遠しい。
友人が『赤煉瓦』に来るのは初めてだ。
【2日のPM7時に予約を入れたって、何がお勧め】
美々からのラインは昼間に読んだ。
本当に浮かれているのが伝わってきた。
きっと母親を亡くしてから出掛けることなど無かったに違いない。
母に確認済みだ。
『お兄様も一緒なのね……どうしましょう』
母の過剰な反応はさて置、兄も待ち遠しいようだ。
しかし、それは飽くまでも榊とのドール談義であって美々ではない、と言い張る。
自分が長年慈しんできたドールと同じ名前の少女。
興味が無いなんて嘘だと思う。
けれども千香良は美々には、その事実を伝えていない。
愛玩人形と同じ名前とは……
微妙に言いにくい。
そして極めつけは龍太からのライン。
千香良は連日、くたびれて龍太と碌に話していない。
【明日からツーリングで九州に行く、土産、待っていろ】
龍太がバイクの乗ることは聞いていた。
龍太は千香良の抱くイメージを裏切らない。
【待っていま~ス。安全運転で楽しんできて下さい】
千香良はチラリと机の上を見た。
ゴールデンウィーク中は勉強も出来る。
愛より、恋より、修業中だ。




