表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガテン系の女 愛より、恋より、修業中  作者: うらら桜子(旧 咲良ヤヨイ)
62/140

可愛くて強か 2

 

 


 確かに母の心配も分かる。

 名前を付けて人形を抱く息子は痛い。

 

 そして母は常々、若いお婆ちゃんに成りたいと言っている。


「今は結婚なんてしなくても時代だ」


 兄がそっぽ向いて開き直る。

 千香良は意外だ。

 けれども幾つに成っても子供は子供。


「それでも人間の彼女ぐらい連れてきて欲しいわ」


 母は相場家で唯一、口で兄に勝てる存在だ。

 

 そして父は黙って聞いているだけ。

 千香良も同じく、口を挟まない。

 それよりも風呂に入って、ご飯が食べたい、と思っている。


「俺の彼女になりたい女は多いよ。でもドールを理解出来ないなら無理だな」


「そんな()はいないわよ。お兄ちゃんは結局、モテない男なのよ」


 売り言葉に買い言葉。

 舌戦に拍車が掛かる。

 

 千香良のお腹から「グルグル」と音が鳴る。

 すると父が力に頷く。

 察してくれたらしい。

 

 千香良は静かに部屋から出て行った。


 そして風呂から上がるとニンニクの良い匂い。

 

 ダイニングテーブルには餃子。

 兄が無人販売所で手土産に買ってきた。

 それに冷凍してあった春巻き。

 サラダはキッウリとトマトを酢と胡麻油で和えた中華風。

 箸休めにはザーサイとメンマ。

 都合良く冷蔵庫に入っていた。


「お兄ちゃんが餃子を焼いてくれたのよ」

 

 母が嬉しそうに話す。

 ひとまず休戦できだようだ。

 皆で餃子に箸を伸ばす。

 

 相場家の力関係は決まっている。

 父は力に甘、甘で千香良は兄を苦手とし、兄は母に敵わない。

 そして母は父に従順となる。

 

 問題が生じると、父が一言苦言を呈する。

 それで終了がいつものパターンだ。

 

「ところで千香良はどうしてリリアンの写真を持っていたんだ」 


 兄は餃子でビールの合間に聞いてきた。

 

「友達のお兄さんのだよ。お兄ちゃんこそ何で名前を知っているの」


 リリアンは榊のドールの名前だ。

 美々曰く、1番のお気に入りらしい。


「ヘンリーの店で紹介してもらったんだ。リリアンのオーナーの妹と友達か、凄いな。でも……リリアンは少し排他的で色気がありすぎるよな……」


「榊さんも知っているよ」

 

 やはり榊が行きつけの店で見掛けたのは兄だったのだ。

 

「そうか……榊さんのリリアンは抽選だったんだ。俺がお迎えしたかったな~」


 それでも兄はドールに話を持っていく。

 

「でも、お母さんを事故で亡くしたばかりだから……榊さんが当選で正解だよ」 


「そうか……知らなかったな……」


 兄が気の毒そうに呟いた。


「それはご苦労ね……」


 当然、母も聞いていた。

 そして話に合いの手を入れてくれる。


「うん……美々も進学を諦めて工務店の事務をしている」


 千香良は美々の事情とドールの写真に至るまでの経緯を聞いてもらった。


「美々が理解しているのに、私がお兄ちゃんをキモがるなんて出来ないじゃん」


 本当は千香良も少し引いている。

 けれどもドール自体は可愛いと思う。


「その子は可愛いの?性格は良さそうね」


 母か食いついた。


「うん、陸上部だったから颯爽とした感じで……」


 千香良はふと兄のドールを思い出す。


「ところでお兄ちゃんのお人形さんには名前は有るのか?」


 珍しく父が話に加わってきた。


「……美々だよ」


 兄は口籠もるように答えるが……

 千香良は全身に鳥肌がたった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ