真面目で不器用 5
喧嘩は両成敗と言われるが、実際は強い方が処分を受ける。
損な話だ。
それは兎も角、話を聞く限り悪いのは相手だと思う。
女の子に酷いことをしたんだ。
千香良だって殴る。
高校2年の夏休みに龍太はギャルと仲良くなった。
切掛けは毎朝、同じコンビニで遭遇したから。
龍太は土建屋のアルバイト。
ギャルは公園で仲間達とダンス。
愛称は「コッコ」
本名は分からず終。
深入りされたくない雰囲気があったらしい。
それでもラインで繋がっていれば友達認定。
関係が深まればお互いを知れる。
龍太は、コッコが好きだった、と言った。
目が大きくてスタイルも抜群。
明るくて、よく笑い、面倒見も良く、気が利いたらしい。
現場に龍太の様子を見に来ては、清涼飲料水を差し入れしてくれたそうだ。
暫くするとコッコ達グループは建築現場のアイドル的存在に定着。
そして1人の娘が鳶に誘われ、犯された。
コッコと1番仲の良い娘だ。
鳶の車はスリーポインテッド・スターのエンブレム。
簡単だったと思う。
けれども、鳶は逆ギレ。
相手のギャルが年齢を偽っていたからだ。
18歳と言っていたが、本当は15歳。
中学生と分っていたら対象外だった……
ただ不幸中の幸い。
挿入は未遂に終わる。
流石に中学生と告白されては無理。
萎えたらしい。
そんなの関係ない。
性的暴力は犯罪だ。
そして、事と次第を聞いた龍太が鳶を容赦なく殴った。
相手が吐き出した血に折れた歯が見えたそうだ。
けれども、龍太の混乱していたらしい。
コッコは高校生のグループと言っていた。
けれども嘘。
本当はコッコも中学3年生だった。
知り合ったのはSNS。
年齢詐称は中学生だと遊んでもらえないから。
ありがちな理由だと思う。
『俺、ラジオ体操、無茶苦茶上手いだろ。鑑別所仕込みだ』
最期に龍太が自嘲気味に言っていた……
「何、ボーっとしている?飯が零れるぞ」
気が付くと目の前に龍太がしやがんでいた。
「……」
千香良は無言で微笑み返す。
そして筍ご飯を咀嚼する。
「朝から嫌な話聞かせて悪かったな」
千香良は首を横に振る。
筍ご飯を頬張りすぎだ。
「俺の女難はまだ、まだ有るぞ。もっと、聞いておくか」
龍太は呵々と哄笑。
千香良は大きく頭を振った。
冗談じゃない。
人様の過去など聞くもんじゃない。
千香良は黙々と弁当を食する。
「天気が良いぞ。飯を食ったら散歩にでも行ってこい」
千香良は頷く。
住宅街は外壁の仕様が色々見られて楽しそうだ。
龍太は本当に優しい。
そして強い人だ。
千香良は兄貴と呼びたくなった。
「うん、龍兄」
「おっ、良いね、その呼び方」
千香良の心は真面目で不器用に出来ていた。




