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ガテン系の女 愛より、恋より、修業中  作者: うらら桜子(旧 咲良ヤヨイ)
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おせっかいでロマンチスト 4

 

 


 千香良は久々に日差しに起こされた。

 3月も後半。

 AM9時なら然もあらん。


 千香良は今日も自動車学校に行く。

 時間が許す限り過去問題をする予定だ。

 スマホでも出来るが、やはり本番に添いたい。

 

 それには先ずは腹拵え。


 千香良は寝癖の付いた髪のままでキッチンに向かう。

 

 すると、ダイニングテーブルにラップが掛けられた皿がポツンと。

 ラップを捲ると大好物の海老とアボガドのサンドイッチ。

 コンロに乗った鍋にはジャガイモのポタージュ。

 新ジャガの季節だ。

 火を付け暖める。


 父は勿論だが今朝は母もいつもよりも早く出たらしい。


 後は冷蔵庫に稀釈したマスカットビネガーが入っているはず。

 今朝も、美味しく朝食を頂いた。


 そして、自動車学校の送迎バスの中で千香良は美々からのラインを読んでいる。

 ラインにはあるまじき長文だ。

 

【おはよう。ラインの返信ありがとう。年明けには母がなくなりました。暗い出来事なので知らせるのを遠慮していました。実は千香良に謝らなくてはと思っています】


【長文です。皆が千香良からのラインを既読スルーしたのは私のせいです。昼休みに母が事故に遭ったと知らせが入りました。千香良からのラインは、その直ぐ後だったのです。動揺していた私は、酷い、と千香良を罵ってしまいました。皆は私に同情したのです。ごめんなさい】


【その後も千香良の冤罪が噂になったり……進学組と就職組で揉めたりで、グループライン自体が立ち消えに成りました。知らせるのが遅くなって本当にごめんなさい】

 

 美々からのラインは3回に分けて送られてきた。

 本当に長文だ。


 読み終わった千香良は何の感慨もない。

「ふ~ん」って感じで終わり。


 女子高生はその場の雰囲気が何よりも重要だ。

 母親が事故だなんて同情するに決まっている。

 

 それに美々だって自分の事で精一杯が当たり前。

 とばっちりだと、攻める気にもない。

 

 それよりも、もっと、何か騒動的な展開があったのでは……と考えていたので拍子抜けだ。

 三上から聞いた話の方が衝撃的だった。

 なにより三上の妹には情がある。


 千香良は大人がよく言う、他人事は所詮、他人事を実感する。

 新しい環境に馴染みだした、今となっては美々や他の友達はどうでもいい。

 何だか嫌な感じだ。

 薄情な自分に気持ちが塞ぐ。

 

 千香良は自動車学校に着くまで窓から外を眺めていた。

 返信の文句を考えても思い浮かばない。

 

 そして今、塞いだ気持ちのまま自習室でマークシートを塗りつぶす。

 その結果、返って集中出来たのか98点、96点、98点と全てが及第点だった。

 千香良は少しだけ気分が上昇中。

 後、もう一押し。

 三上にでも会えれば上がる。


 けれども、来ていないのか、路上に出ているのか、どちらにして三上には会えそうもない。


(そうだ……)


 千香急に急に顔を輝かす。


 PM2時~3時の間に三上の姉が面接に来るのを思いだしたのだ。

 まだ間に合う。

 千香良は帰国子女の三上の姉を見てみたい。

 それに兄に反応も面白そうだ。

 序でに賄いを食べさして貰おう、と思う。

 朝が遅かったので昼をまだ食べていない。

 

 千香良はトートバックに筆記用具を仕舞うと『赤煉瓦』に向かった。




「相葉千登世~久しぶり」


 店の厨房で賄いを食べていた千香良は思わず吹き出した。


 兄を呼び捨てにする人は初めてだ。

 それに兄の背中をバチバチ叩いている。


「初めまして三上乙葵です」


 そして、次に改まった挨拶。

 豪快さが嘘のように楚々(そそ)としている。


 強烈な人だ。


 千香良は配膳カウンターから顔を覗かせ様子を伺う。


 遠目で見ても言葉を失うほどの美人だ。

 ストレートの髪を高い位置で結んでいる。


 凜々しい眉毛は時前だろうか…… 

 額が広くて目が大きい。

 鼻筋も真っ直ぐ通っている。

 

 そして、背丈は千香良と同じぐらい。

 しかもスタイルはボン、キュ、ボン。

 ジャケットを羽織っていても分かる。

 

 兄の顔が、にやけているのは気のせいだろうか……


 三上に聞いた話では何店か面接を受けたらしいが不採用だったらしい。


 理由は何となく分かる気がする。

 容姿は完璧過ぎると駄目なのだ。


(忘れていた)


 千香良は美々のラインを思い出す。

 突然、頭に浮かんできたのだ。


【気にしてないよ。その内、会おうね】


 少しに時間で気持ちは変わる。

 ラインの返事なんて考えるまでもない。


 千香良は社交辞令を覚えた気がした。




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