おせっかいでロマンチスト 3
千香良はラインのトーク画面と睨めっこ。
口をひん曲げて難しい顔をしている。
夕食後の千香良はリビングで過去問題を1枚。
けれどもマークシートを塗り潰している間も、夕方に届いていたラインに気も漫ろ。
75点と最悪だった。
ラインの送信者は榊美々。
元クラスメートの1人でライングループにも入っている。
読んだからには何らかのリアクションは返そうと思う。
既読スルーはしたくない。
自分がされて嫌だった事はしたら駄目なのだ。
そして千香良は……
待てよ……と思う。
口は正常な位置に戻った。
最近は本当に頭が良い。
陸上部員だった美々は夏休み前までは毎日、運動場を果てしなく走っていた。
帰宅部の千香良とは違う女子高生活だ。
千香良は美々と外で遊んだことは一度もない。
最期に行ったカラオケにも来てなかった。
グループラインのメンバーは7人。
親密さも千差万別。
3人、3人、1人で構成されていた。
その1人が美々だ。
もしかしたら、美々には仲良しグループという感覚自体、無かったのでは……?
ラインでも既読スルーが通常。
たまにスタンプが返って来るが、基本、会話に入って来ない。
千香良は思い切って美々のアイコンをタップ。
【久しぶり。左官続けていますか?私は家庭の事情で進路変更しました。家で事務員しています】
座布団に座ったポインターがお辞儀するスタンプ。
そして名刺の写メ。
【榊工務店 榊 輪】
【兄です。千香良のことみたことあるって】
「誰?」
千香良は思わず突っ込みを入れた。
そして今度は唇を尖らせて白い天井を見上げる。
家庭の事情……
ラインでも行間は読める。
重い言葉なのにフラット?
【左官は続けているよ。家庭の事情って大変そう】
千香良はやんわりと聞いてみる。
【榊工務店知っていますか】
そして、龍太にもラインを入れた。
明日、明後日は仕事が休み。
千香良は何だか、じっと、していられない。
【建具や】
【高校の友達の家だった】
龍太からのリアクションは期待できない。
疑問文にしないと駄目だった……
既読にはなっているが、美々からの返信も来ない。
時計を見るとPM11時を過ぎていた。
千香良は不服を抱えたまま布団を被る。
けれども瞼をきつく閉じても眠れそうもない。
自室は相変わらずスヌーピーの壁紙。
当面の目標は自分で漆喰に塗りかえること。
けれども色々起こり過ぎて忘れてしまいそうになる。
魂が成長すると交友関係が代わるらしい。
スピリチュアルは難しくて千香良は解らない。
けれども感じることは無きにしも非だ。
先ずは、早く一人前の職人に成るという目標が出来た。
そして、楽しいと思うことが以前とは違ってきている。
仕事を覚えるのが楽しい。
千香良は友達と連でいて何が楽しかったのか思い出せない。
すると「ピコン」
千香良は枕元のスマホに飛びつく。
意外にも龍太からだ。
【年明けにお袋さん亡くしたばかりだから無神経な言葉を吐くなよ】
(美々……お母さんを亡くしたんだ……)
千香良はピンとこない。
龍太は胸騒ぎでもしたのか……
伝えたのは老婆心からだろう。
【解りました】
千香良は言葉だけを返した。
流石にスタンプなんかは返えせない。
明日は三上の姉が面接の来る予定だ。
美々からのラインも来るだろう。
千香良は暫く取り留めも無く悶々としていた。
それでも知らないうちに眠りにつくのだろう。




