おせっかいでロマンチスト 2
葉桜の堤防歩道を千香良はプラプラと歩いている。
天気が良いので少し遠回りして帰りたい。
昼食は1人でコンビニのお握りだった。
自動車学校で三上と遭遇したときは、また、ラーメンに誘ってもらえるものだと期待した。
けれども三上は男友達とラーメンを食べに行ったらしい。
当てが外れた訳だ。
帰りにバスで会ったのも偶然で約束などしていない。
(ラインの交換も、お姉さんの事を頼みたかった、だけかも……)
以前の千香良なら単純に浮かれて終わり。
けれども最近の千香良は大人だ。
考えは多種多様、思いは種々雑多。
思慮深くなっている。
三上は鷹揚で差別意識もない。
けれども世間は違う。
三上は友人としても千香良には分不相応の相手に見えるだろう。
原田に出会った時も考えた。
若者の卑屈な考えは知らぬ間に世間が植え付ける。
千香良は三上との理想の関係を思い浮かべた。
友達未満恋人以下。
付かず離れず。
けれども恋人よりも大切。
カッコイイ関係だと思う。
そして、こんな時に同世代の友達が欲しいと思う。
『蘭々』の娘とのラインのやり取りは左官見習いの進捗限定。
亜紀は千香良の恋話なんて真面目に聞かない。
10代の恋愛は異性と性に対する好奇心のみ、と言いきる人だ。
この町を流れているのは木曽川に合流する支川。
河面には鴨や青鷺、亀もいる。
千香良は犬を散歩させるお爺さんと擦れ違う。
そして河川敷に併設された公園に中学生と思しきカップル。
制服を着ているので一目瞭然、千香良の後輩にあたる。
千香良は脚を止めてカップルを観察。
ブランコに女子が座った。
男子が向かい合わせで、ブランコを強く押す……
はしゃぐ女子。
そして戻ってきたブランコを今度は止めて……
すると「チコン」とラインの着信。
『どこにいるの』
母からだ。
【アルバイトって募集している】
千香良は、三上の頼みを思いだし、忘れないうちに母に聞く。
母の質問から返事がズレルのはいつものことだ。
【しているわよ】
【社員は】
【バイトだけ、それより、今どこ】
千香良は葉桜の写メを送った。
相葉家は家族総出で自動車屋に来ていた。
前もって候補を挙げておいたので、決まるのは早い。
手続きをしている父を覗いて、皆、手持ち無沙汰だ。
「三上はバイリンガルか」
珍しく兄か感心している。
「自立するってアパートでも借りるのか、俺の先輩が英語を話せる人物、探しているけど」
兄は観光地の名前を言う。
春の山王、秋の八幡、山車には絡繰り人形。
外国人観光客が多い。
【アルバイト募集しているよ】
千香良は早々、三上にラインを送る。
【明日、面接してもらえるか、だって】
「明日、面接出来る」
母が視線で父に伺う。
「PM2時~3時の間で来てもらって」
千香良は言われたままをラインする。
「お兄ちゃん同級生だったんでしょ、どんな娘」
「勉強よりも自分の顔を弄るのに夢中って感じで、兎に角、目立っていた。でも、明るくてハキハキしていたな」
「接客は向いていそうね。オーストラリアでは何していたのかしら」
「日本食のレストラン。4つ星レストランの中にあるんだって」
「お兄ちゃん、お嫁さんにしたら」
母が如何にもおばさん発言をぶちかます。
「三上は俺には無理。本人に絶対言うなよ」
兄に顔が真剣で面白い。
女子高生の千香良は毎日、同じような日々を送っていた。
けれども今は、毎日、何かしら起こる。
千香良は気持ちの休む暇が無い。
そして、本日の極めつけ。
三上との遣り取りの最中に別口のライン。
開くなら、夜、部屋で……
それにしても、今更、何の用だろう。




