表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガテン系の女 愛より、恋より、修業中  作者: うらら桜子(旧 咲良ヤヨイ)
44/140

努力家で欲が無い 4

 



 三上整形外科の外観は石張り調のサイディンの壁に、明り取りのガラスブロックパネル。

 よく見掛ける病院という感じだ。


 千香良は先ず受付で保険証が無いことを告げた。

 すると受付の女性が、今日は自費診療になるが、保健証の提示で後日戻るから心配ない、と丁寧に教えてくれた。

 

 千香良は整形外科には初めて来たが、内科や歯医者よりも混んでいるように思う。


「待ちますか?」

 

 率直な不安を口にする。


「大丈夫ですよ、人は多いですけどリハビリの方が殆どですから」


 千香良は受付の女性の言葉に改めて院内を見渡してみる。

 確かに名前を呼ばれた人達は皆、リハビリ室に入って行く。

 

「相葉さん」


 20分程は待たされて、漸く(ようやく)名前を呼ばれた。


「こんにちは、屈伸しすぎて膝が痛い……」


 ゴマ塩の頭の医師が問診票を読み上げながらデスクトップのキーを叩いている。 

 年齢は父と同じぐらいだろう。


「ズボン……捲れないな……」

  

 ドクターチェアーを回転させた医師が溢す。

 視線は千香良の膝元にある。


 千香良は一瞬、ズボンを脱ぐのか、と内心狼狽える。

 しかし、それよりも面を上げた医師の顔に驚いた。

 凜々しい眉に視線が張り付く。


(三上君と同じ顔だ……)


 龍太のスマホで病院名を見たときに可能性は考えた。

 それでも、まさかの展開だ。

 

「じゃあ、しようがないか……」


 医師の言葉に看護師が頷いた。


「こちらに横になって下さい」


 千香良は偶然に騒ぐ心を抑えながら診察台に横になる。


「これ痛い?」


 医師は千香良の脚を手に取ると膝を曲げ伸ばしする。


「少し」


 そして次は膝を押す。


「痛い」


「痛いけど……」


「そうだね、多分、打ち身だけだと思うけど念の為にレントゲン撮るから……レントゲン室で短パンに着替えてもらって」


 着替えが用意されている整形は珍しい。

 

「着替えあるんですか……」


「ええ、先生が困るんで……」


「すいません……」


 千香良は看護師に言葉に頭を下げる。 

 

 問診、触診、レントゲン。

 整形外科ではお決まりに手順だ。



 レントゲンが現像されるまで千香良は待合室でスマホを弄って(いじって)いた。

 医師が三上に父親と思うと口元が綻ぶ。

 偶然としては出来すぎていて運命を感じてしまう。

 女子が恋に落ちる要因の一つだ。


 するとラインが届いた。

 亜紀からだ。


【龍太と何かあった?千香良の男は誰だ、って聞かれたけど】


 千香良は長文と断り一昨日からの経緯を送った。


【それって、何よりもヤバイ展開だよ】


 ラインでの行間は読める。

 本当にヤバそうだ。


【どうして】

 

 千香良は当然、気になる。


【ごめん。理由は言えない。でも、現場に出ていたら、その内、耳名入るから】


 千香良は、顔面が半分暗いペンギンのスタンプ、を送信。

 背後に「ガーン」と文字が入っている。


 益々、気になる情報だろう。

 

【亜紀さんは高城さん知っている?】


【龍太の従兄弟でしょ】


【高城さんなら教えてくれるかな……】 


「相葉さん」


 名前が呼ばれる。

 千香良はラインを一旦諦めると、再び診察室に入って行った。

 医師の顔を見れば、また気持ちが移ろいでいく。

 

 千香良は未だ、未だ切実を知らない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ