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ガテン系の女 愛より、恋より、修業中  作者: うらら桜子(旧 咲良ヤヨイ)
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努力家で欲が無い

 



 相葉家は年に4度、家族の誕生日は『赤煉瓦』で夕食を頂く。

 店を商っている都合上、日常的に家族で食卓を囲めない。

 子供達も小さい頃には寂しがった。

 そして作った慣例が今も続いている。


 相葉家が平和な証拠だ。


「千香良、誕生日おめでとう」 


 ワイングラスを片手に母がお祝いの言葉。


 父と兄もワイングラスを掲げる。

 そして未成年の千香良はコーリンググラス。

 ノンアルコールモヒートをフレッシュライムで作ってもらった。


 ガラスの角皿に前菜が5品。

 カクテルグラスに入った海老と彩り野菜のアボガドムースは真ん中に鎮座。

 その周りを左上からビーツラペ、ジャガイモボール、タコと分担のカルパッチョ、春ニンジンの春巻き。

 

 全てが絶妙なバランスで少しずつ盛ってある。

 

 そしてカブのスープにスナップエンドウと菜の花のサラダ。

 メインはアマゴの香草焼と飛騨牛のステーキ。

 

 今日は父ではなく兄が腕を振るったらしい。

 

 会食中に話しを始めるのは大体抵母だ。

 父は無口だし兄は皮肉屋、千香良は自分からは話さない。

 母は自分の勤めだと思っている。


 けれども千香良は今日に限って阻止したい。

 十中八九、誕生日デートの話題を出すだろう。


 ソムリエの資格を持つ母はワインを口にすると暫し堪能。

 けれども家族相手に能書きは述べない。


「今日、自動車学校で中学の同級生に会ったよ」 

 

 千香良はコーリンググラスを置くと間髪入れずに話し出した。


「そう、誰、お母さんも知っている子?」


「どうだろう……背が伸びていて、初め分からなかった」


「どうして千香良は聞かれた事の答えないんだ。母さんは知っている子か聞いているんだぞ」


 兄は大体こんな感じなのでスルーする。

 千香良は、会話は雰囲気で流れて行くものだと思っている。

 現場では通常そう。

 思いがけない方向に話が飛躍していくのが面白いのだ。


「三上君」


 千香良は取り敢えず名前を教える。

 兄がこれ以上絡んで来ると面倒くさい。


「三上って三上整形の息子か?俺、姉貴と中学同級で、確か……三上乙葵(いつき)。3年の時、同じクラスだったぞ。医者の娘なのにギャルさ、成績も悪くて高校行かなかったんじゃないか」


「知らない」


 千香良は本当に知らない。

 

 それよりも兄が創った料理がどれも美味しそうで迷い箸をしてしまう。


「千香良、俺の料理はもう少しスマートに食え」 


 すると、兄が行儀の悪さを指摘してきた。


 千香良は、わざとジャガイモボールを箸で突き刺す。

 行儀の悪さも、家族だけのディナーならご愛敬だ。


 兄も千香良の悪態に諦めよう。

 鼻で笑った。

 

「そうなの?この辺りに三上医院って在ったかしら」


 母が話の接ぎ穂をしてくれる。

 

「否、家はこの辺りだけど病院は少し離れているかな……けど、俺も詳しくは知らないな」


 兄は首を少し傾けている。

 ワイングラスに口を付けながら考えているようだ。


 けれども、皆、会話よりも料理が美味しく箸を動かす手が忙しい。


「そうだ、自分の家が医者だって隠していたみたいだったな。けど……中学の時は、たまたま、そいつの従兄弟も同じ学年にいてさ、それで、その従兄弟の家は内科で、三上の家が整形外科……それで、その従兄弟が自慢していたんだよ。自分の家は両親とも医者で優秀だけど、アッチは母親が馬鹿だから、乙葵もギャルで馬鹿だって……今思うと従兄弟、嫌な奴だな」


 兄はワインを飲み干すと、思いだしたエピソードを語った。

 そして話し終わるとカルパッチョのタコを箸で摘まんで口に放る。


「じゃあ、その三上君は医者になるのね」


 母は言いながらも、カクテルグラスに手を伸す。


「美味いぞ」


 すると父が一言。

 話には加わろうとしない。


「馬鹿なら無理だろ」


 兄が端的に言う。 

 タコが柔らかいのか嚥下が早い。


「三上君はクラスで一番だったよ」


 事実だ。


「じゃあ、お前とは住む世界が違うな」


 珍しく、千香良の考えと兄の意見と一致した。


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