正直で狡い 4
自分の誕生日を知っている男子がいるなんて……
「ヤンデレ」なんて言葉がある。
千香良は喜ぶべきか警戒すべきか悩むところで固まってしまう。
「違う、違う……変な意味じゃないから……」
三上は千香良の懸念を察したらしく、頭を振った。
千香良は黙って一口水を飲む。
なんだか決まりが悪い。
「さっき、俺が女の店員を見ていたら相葉が少し冷やかしただろ。だから思いだしたんだ。俺の誕生日は4月なんだけどさ、中学の時に、相葉と同じ日だって、女子に、からかわれたことがあるんだ。どうして女子って直ぐに恋愛に結びつけるんだ」
三上の言う通りだ。
千香良は恥ずかしさに穴が在ったら入りたい。
原田の一件で男子に対して自意識過剰になっている。
「ごめん……」
千香良は俯き加減で誤りの言葉を呟く。
「否……俺も悪い。相葉が学校を辞めさせられた経緯を知っているのに……他人の感情に過敏になるよな」
千香良は素直に頷いた。
けれども本当は少し違う。
千香良は遅ればせながら性に目覚めている。
歳の近い男子を見ると先ず恋愛対象に考えてしまう。
それは脊髄反射に近い。
原田で痛い目に遭っているのに自分でも嫌になる。
「確かに、あの人よりも相葉の方が綺麗なんて誤解を招くような事を言った俺も悪いけど。可愛い人に目が行ったり、女性の容姿を褒めたりするのと恋愛感情は別だよ。寧ろ好きに相手には簡単に口説けないよ」
千香良は三上の話を聞きながら何度も頷いた。
一般的に同じ年齢なら女子に方が恋愛経験値は高くなる。
それなのに千香良は三上の理論に脱帽だ。
同じ歳とは思えない。
尊敬の念に瞳孔が開いてしまう。
三上は千香良の眼差しにそつなく微笑む。
そして箸入れから箸を取り出して千香良に渡してくれた。
近づいてくる店員に気が付いていたようだ。
「お待たせしました。ニボシ麺は……」
「僕です」
例の可愛い店員だ。
よく見ると結構、年を食っている。
三上の前に ‘ニボシ麺’ が置かれると‘‘塩ニボシ麺’ は千香良の前に。
定員は二の腕も太い。
そしてテーブルの上の伝票を置いて踵を返す。
後ろ姿のお尻がデカイ。
三上がほくそ笑む。
千香良は分かった気がした。
「な、ケツデカ星人だろ……」
「そんなこと言ったら駄目だよ」
ラーメンを啜りだした三上に返事はないが肩が揺れた。
可笑しいみたいだ。
千香良も可笑しい。
そして先ずはスープを一口。
あっさりしていてコクがある。
それと魚介類の旨味。
「美味しい」
「だろ……」
千香良は今度こそ本当にボーイフレンドが出来たと思った。




