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ガテン系の女 愛より、恋より、修業中  作者: うらら桜子(旧 咲良ヤヨイ)
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正直で狡い 2

 



 自動車学校近くには煤けたうどん屋が1軒だけ。

 

「どうする?」


 うどん屋の前で三上が千香良に聞いてきた。


「微妙……」

 

 味は美味いらしいが、若者には入りづらい店構えだ。

 

「俺、知っている店があるんだけど、此所からだと20分ぐらい歩くと思うんだ」

 

 お互いに今日の予定は自習だけだと確認済み。

 三上は千香良の返事を待たずに歩き出す。

 

 辺りにはチラホラと花も咲いている。

 過去問三昧と格闘していた。

 気分転換に散歩も悪くない。

 

 けれども今夜は洋食だ。

 被ると困る。


「何屋さん?」


「ラーメン。嫌いな奴はいないだろ」


「うん」


 ラーメンなら千香良も大好きだ。

 それに若者でも入りやすい。


「俺、路上に出ているんだけど、その店はコース上にないから知っている人も少ないと思うんだ」


 自動車学校界隈は数件、住宅が続いたと思うと、中規模の町工場に漬物屋。

 何とも雑然としていて形容しがたい地域だ。


「穴場的な?」


「どうだろ……行列とか出来ていたりして」

  

「行ったことあるんでしょ?」


「うん、姉ちゃんに連れて行ってもらった。姉ちゃんは何度か元彼と行ったらしいけど、別れて一緒に行く相手が居なくなったって。お一人様は嫌なんだってさ……」


「へーお姉さんと仲良しなんだ」


 三上とは一言二言の確認以外、中学時代に話した記憶が無い。

 それなのに今は不思議と取り留めも無く会話が進む。

 

 すると、擦れ違ったママ友らしき軍団が千香良と三上を振り返った。

 

 千香良は全身黒ずくめ。

 本人に自覚が無くても、スレンダーな肢体は否応なしに一目を引く。


 男か女か、はたまたオネイか?

 軍団から好奇の目が向けられる。


 それなのに千香良も三上も軍団の存在自体に気が付いていない。

 話しに夢中で目に入らなかったようだ。


「この坂上がった所だから」

 

 当然、お目当ての店までが早くに感じた。

 しかも辿り着いた店は黒漆喰の壁。

 千香良は思わず走り出すと、壁に近づき目を凝らす。


「やっぱり、左官屋さんで修業中って本当だったんだ」


 千香良は背後から聞こえた三上の声に踵を返す。


「うん、そうだよ。だから黒漆喰の壁に興奮しちゃった……でも……どうして知っているの?」


 千香良は不思議思うことを素直に口にした。


「……俺、妹も居るんだけど相葉と同じ女子校なんだ……」


 三上は店の入り口に脚を向けながら話し出す。

 ガラス戸越しに何組か待っているのが見える。


「……」


 千香良は言葉をなくす。

 三上は千香良が学校を辞させられた事を三上は知っているみたいだ。


「少し待ちそうだから、取り敢えず店に入って名前書いておこう」


 けれども、三上は態度を代えずにいてくれる。

 

 そして、店内に入ると順番待ちは3組。

 男ばかりで3人と女同士で2人、もう一組はカップルのようだ。

 待合に腰掛ける椅子は無いらしく、寄り添って立っているので見当が付く。


「もっと混んでいるかと思っていたけど、これくらいなら問題無いよね」


「うん、話していたら直ぐだよ」


 気遣うような千香良の言葉に三上が目を細める。


「冤罪だったんだろ……」


 三上がポソッと呟やいた言葉に千香良は俯く。

 何と言うべきか言葉が見つからない。


「見ていた生徒がいて噂が広まったらしくて妹が憤慨していてさ。お兄ちゃんから相葉先輩に教えてあげて欲しいって……」


 千香良の反応を待たずに三上が仔細を語り出そうとする。

 

 するとタイミングが良いか悪いか立て続けに会計に人が並びだした。

 狭い店内だ。

 出入り口付近の立て込み模様が如何ともしがたい。


 千香良も少し押されてしまう。

 そこで三上が抱き止める。


 「悪い、触った」

 

 漫画見たいなシチュウエーションに……

 深刻な雰囲気が霧散した。

 

 





 


 


 

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