無邪気で屈託がない 5
昨晩は冷蔵庫から保冷剤を拝借して、少し冷やしてから寝た。
捻った痛みなら湿疹を貼るが、打ち身はそのまま放置でいいようだ。
しかし今朝になって、腫れが酷く屈伸運動が辛い。
千香良は今日が日曜で本当に良かったと思う。
それにしても自分の誕生日を忘れていたなんて、思いの外、ショックが大きかったようだ。
(原田さんは昨日が私の誕生日と知っていかな……)
千香良に深い考えは無い。
ただ頭に浮かんだ。
『ボーイフレンドとのデートは楽しかった』
昨日、帰宅と同時に母から聞かれて思いだした。
誕生日にボーイフレンドとデート。
母が様子を知りたがるのは当然だ。
けれども本当のことは言えない。
かといって楽しかったは嘘になる。
『うん。まぁ、普通かな』
千香良一瞬、返事に困ったが、適当に答えておいた。
それで母は安心したようだ。
寧ろ18歳らしい態度だったのだろう。
原田との関係はジエンド。
多分、記憶から消え去り、思い出にもならない。
実際、昨日の帰りも原田の事を考えなかった。
高城兄妹と過ごしたお陰だ。
地下鉄乗車中に思い浮かんだのは高城家の設えばかり。
千香良のもう一度、高城家に行きたいと思いを巡らす。
すると高城の声が聞こえてきたような……
『男は狼だから……』
高城に限ってそれは無い……
千香良は一人の部屋でチロリと舌を出していた。
カーテンを引いていても部屋はもう明るい。
スマホで時刻を確認するとAM7時。
良い天気なりそうだ。
そして今日は家族で千香良の誕生日をお祝いしてくれる。
家族の誕生日は『赤煉瓦』の夜営業は休み。
父が腕をふるう。
楽しみで落ちつかない。
そこで千香良は朝食を済ましたら自動車学校に行こうと思う。
筆記試験に備えるための過去問題を出来るだけやっておきたいのだ。
自動車学校には作業着で行くことが多い。
今日は特別お洒落して出かけようと思う。
けれども膝が出せないとなるとミニスカートは履けない。
千香良は考えた挙げ句、敢えて黒のアンサンブルニットに黒のスキニー。
シンプルコーデで決めてみた。
後は母にネックレスを借りれば出来上がりだ。
日曜日の朝食はフレンチトースト。
昨日から冷蔵庫で卵と牛乳浸されていた。
メープルシロップとホイップ。
そして苺。
千香良は予定道理、朝食を食べ終えると自動車学校へ出かけた。




