豪胆で気丈 4
千香良は不案内な場所をひたすら歩いていた。
(トートバックからウエットティッシュを取り出して……)
原田に対する腹立たしさよりも、右に掌と両膝の汚れが気になる。
けれども脚は先へ先へと焦って止まれない。
200メートルぐらい歩いただろうか……
車の走行音引っ切り無しに聞こえてきた。
交通量の多い通りはすぐそこみたいだ。
チェーン店の焼き肉屋らしき看板も見える。
多分、コンビニもあるはずだ。
千香良もやっと傷口を拭けると安堵した。
そして漸く辿り着いたコンビニのトイレ。
千香良は改めて衣装に破れや汚れがないか確認している。
問題無い。
不幸中の幸いだ。
それでも変色した膝は見るからに痛々しい。
しかしながらトイレに長居は迷惑。
身繕いが済んだ千香良は早々退出。
暖かいミルクティーを買いイートインスペースで少し休むことにした。
「ふぅ~」
ミルクティーの甘い香りが鼻孔を擽る。
思わず声が漏れる。
原田の行動はショックだった。
けれども未遂で済んだし、自分も悪い。
憤慨、喪失、軽蔑……
これといってマイナスな感情も沸いてこない。
同じような話を学校でも良く聞いた。
学校にはギャル達も少なからずいたし、クラスメートの中に大人びた娘も……
体験談は事欠かない。
『大学生はあわよくば……だから……』
クラスメートの誰かが言っていたのを思い出す。
自業自得だ。
千香良は顎杖を付いて外を眺める。
コンビニも時計はPM2時半。
行き交う人は少ない。
(後はどうやって家に帰るかだけど……)
先程の事件よりも切実。
千香良は現在位置が分っても正しく地図が読めない。
そこで、徐にスマホを取り出す。
地図アプリをタップ。
現在位置を表示。
そして首を傾げる。
最近、同じ住所を見た。
高城の名刺だ。
千香良は確認のために財布から名刺を取り出す。
やはりそうだ。
番地こそ違うが同じ町の名前が記されている。
千香良はいつも気が付かない。
自分が傷ついていることに……
どこかで慰めを必要としている。
千香良は迷った挙げ句に名刺の番号をタップした。




