豪胆で気丈 3
本性?
否。
多分、魔が差した……
右の掌に擦り傷。
少し血が滲む。
ストッキングが破れた両膝も赤い。
直に紫に染まるだろう。
交通量の少ない道路で本当に助かった。
原田の車は大型のワゴン。
千香良は助手席のロックを解錠して道路に飛び降りたのだ。
「大丈夫……勘弁してよ……」
運転席から降りてきた原田は煩わしそうに言葉を吐いた。
界隈はファッションホテルが連立している。
立ち上がった千香良は原田を無視して歩き出す。
自分が居る場所はスマホで検索すれば分るはずだ。
「チッツ」
原田の舌打ちは千香良に聞かせるためだろう。
かなりわざとらしい。
ドライブデートの待ち合せも前回と同じく駅だった。
時間は早くAM7時。
千香良の衣装はブルーのマルチストライプのシャツにタップリとしたVネックのカーディガン。
それにタックの入りのショートパンツ。
カーディガンとショートパンツはクリーム系の同系色で揃えて、生足は少し寒いので珍しくストッキングを履いた。
それでも白のスニーカーには紺の靴下。
10代の少女然としている。
鞄はいつもより大きいキャンパス地のトートバック。
ウエットティッシュにビニール袋、そして飴とガム。水筒にはお茶……
ドライブデートの必需品が入っている。
そして原田は水色のポロシャツにチノパン。
色こそ変わるが定番のスタイルだ。
天気もいい。
BJMは原田がチョイスしたアニソン。
千香良も知っている曲ばかりで嬉しかった。
行き先は港。
高速に乗ってトリトンを渡った。
橋を渡りながら見る海は、また違う。
大きなクレーン。
大きな倉庫。
港には膨大な数の輸入車。
ゴージジャスな遊覧船も止まっていた。
原田は物知りで会話も尽きない。
運転も上手く千香良は快適だ。
そして高速を降りてランチタイム。
ピザのバイキングをチョイスした。
原田も千香良も食欲旺盛で十分、元が取れただろう。
スイーツも充実していて大満足だった。
けれども楽しかったのはそこまで……
千香良が「遅くなれない」と告げてから原田の様子が変わった。
明らかに落ち着きがなくなり。
早々に店を出ようと千香良をせかした。
『これからの予定は?ショッピングモールも近くにあるよ』
尋ねる千香良に原田は無言で行く先も告げない。
すると、車インター付近を走行。
運転する原田の息遣いが荒く、千香良は怖い。
『千香ちゃんも類友なんでしょう』
『……?』
原田の問いかけは千香良には意味不明で答えられない。
『『蘭々』の娘さんが話しているのを聞いたんだ……身持ちが軽いって……どう考えても千香ちゃんの友達の床屋さんのことだよね』
千香良の眉間に皺が深く刻まれる。
18歳がしてはいけない顔だろう。
「千香ちゃんも見かけによらない……勿体付けなくてもいいよ」
憶測が突飛でついて行けない。
千香良は原田がホテルのゲートを潜る前に腹を括った……




