豪胆で気丈
今日の自動車学校は午前中と午後の2限。
待ち時間が2時間もあったので昼食はAM11時に食べた。
千香良は午後からの授業で残された学科も終了。
これで仮免試験が受けられる。
けれども雨降りは眠くていけない。
教官の話を子守歌に船を漕いでいた。
そして千香良は自動車学校の送迎バスの中。
これから村岡左官に報告に行く。
バスに乗り込む前に村岡に電話を入れてある。
車窓から歩道を見下ろすと、卒業式を終えた制服姿をちょくちょく見かける。
雨粒が傘を打ち付けているのに……
足取りは晴れやかだ。
それに引き換え千香良は少し仏頂面。
自分でも理由は解らない。
あれからグループラインは閉鎖されたまま。
どこか苦々しいのだろう。
するとラインに着信。
龍太からだ。
【駅まで迎えに行く】
雨で休みになったに違いない。
千香良の頬が幾分か緩む。
そして20分程で、送迎バスは駅前に到着。
けれども龍太のKバスは見当たらない。
降車場付近にはツートンカラーの高級車が止まっているだけだ。
千香良でも知っている黒と琥珀のニューモデル。
降水量は1ミリ程度だろう。
それでも千香良は傘を広げた。
「千香ちゃん」
すると運転席の窓が下がり、名前が呼ばれた。
「高城さん?」
振り向くと知った顔が微笑んだ。
「濡れるかよ、早く乗って。龍太は現場でトラブルが発生で、来られないから」
千香良は躊躇う。
すると雨脚が急に強くなってきた。
最早、考える予知もない。
千香良が慌てて後部座席に乗り込んだ。
「心配しなくてもいいから。龍太と俺は従兄弟同士だから」
高城は点滅していたハザードライトを右折ウインカーに代える。
緩やかに走り出しは流石に高級車だ。
千香良は従兄弟と聞いて、意外に思うも妙に納得もした。
しかし、それよりも、傘の雫が申し訳なく落ち着かない。
「気にしなくていい、濡れても必ず乾くから」
ミラー越しに気配を感じたらしい。
軽やかな口調で看過してくれた。
「千香ちゃん、本当に左官見習いになったたんだ。どう……続けられそう?」
「はい」
微かに香るのはムスク。
流れる音楽はジャズだろか……
千香良は知らない。
『蘭々』で初めて会った高城の第一印象は色男。
しかし、その正体は見た目に似合わず三枚目。
いつも昼間からビールを飲んでは代行を呼んでいる。
そして決まって「今度は飲まない」と言う。
千香良は1度「バスか電車で来たら、どうですか……」と進言したことがある。
駄目な大人だ。
けれども今日は違う。
初見の印象道理の色男だ。
体が火照ってしょうがない。
千香良は後部座席で唯々小さくなっていた……




