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ガテン系の女 愛より、恋より、修業中  作者: うらら桜子(旧 咲良ヤヨイ)
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柔らかくて強い

 



 昼休憩は現場事務所で手持ちの弁当を食べた。


 千香良の弁当箱はギンガムチェックで細長の二段式。

 下の段には丸いおにぎりが2つ。

 それに兎のリンゴとカットバナナ。

 おにぎりには、それぞれ、ゆかり、と高菜がまぶしてある。

 そして上の段のおかず、は卵焼きにミニハンバーグ、彩りにアスパラとプチトマトとカラフルだ。

 

「お母さんが作ってくれたか?」


 向かいの席から龍太が話し掛けてきた。

 普段は車で食べる龍太も、今日は一緒に行動してくれている。 


 千香良ははにかみながら頷く。

 

 チラリと見た、隆太の弁当は茶色と白飯のツートンカラー。

 曲げわっぱの弁当箱だ。

 流石におかずの種類までは凝視出来ない。


「美味そうだな」


 龍太は明らかに気を使ってくれている。 

 それでも千香良は浮上できない。


 千香良は自分でも何が、そんなにショックなのか分からないのだ。

 けれども、食欲だけはあるようで箸は進む。


「飯は食えそうだな」

 

 頷いた千香良に龍太も取り敢えず安心する。

 

 隆太は元ヤン男と連れ立って戻った事を後悔しているようだ。

 

 今日は午後から新設するピットのコンクリート打ちがある。

 元ヤン男は土間家だ。

 よく顔を合せるので話をするが実は名前も知らない。


「そうだ、履歴書、見たぞ」


 龍太は思いだした事を口にしてみる。


 千香良は箸を止めて顔を上げる。 

 封筒に入れて持参した履歴書は預かっておくと言われて、その場では開けられていない。

 千香良は履歴書を見た相手の反応を知りたかったので、少し残念だった。


「パラパラ漫画、書くんだって……」


 千香良の顔が歪んだと思ったら、涙が滂沱と溢れ出す。


 龍太の優しさに箍が外れた。

 千香良は自主退学の勧告を受けてから一度も泣いていない。

 悔しかった。

 17歳の少女が弁明も出来ずに、その身に降りかかった不幸を甘んじて受けた。

 当然だろう。


 卒業して、短大生にいくはずだったのに……

 千香良だって色々、考えていた。

 短大の学部は生活学科だ。

 料理は苦手だけど食品の栄養やカロリーには少し興味があった。

 

 先行きも不安だ。

 放任主義は時には厳しい。

 何事も自分で決まる。


 兄は辛辣な意見ばかりで相談も出来ない。


 他人の圭子は感心されて、千香良は諭される。

 勉強も運動も苦手だけど生活態度は真面目だった。


 言わずと我慢していた諸々が涙となってこぼれ落ちてゆく。

 それでも千香良は箸を口に運ぶのを止めない。


 龍太は飯を載せた箸を上げたまま呆然と凝固。

 目の前で女の子が泣きながら飯を食っているのだ。

 尋常じゃない。


「お前、女の子泣かせて、馬鹿か」


 すると「パシッ」と小気味よい音が響く。

 

 背後から小柄な女性が龍太の頭を叩いたのだ。


「亜紀さん、驚かせない…………」 


 龍太は首を捻り、相手を確認すると、箸から零れた飯粒を拾っては口に入れている。


 驚いた弾みで千香良の涙を止まっていた。

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