健気で圧巻 2
小学校の駐車場に着くと、龍太はあっさりと運転席から降りた。
「じゃあ……明日、現場は分かっているな。気をつけて帰れよ」
(それだけ……)
千香良は少し物足りない。
けれども何を期待する?
帰る方向は同じでも走行スピードが違う。
併走などは端から無理だ。
そして軽自動車の運転席。
千香良はバイクに跨がる龍太を見送っていた。
バイクもフルフェイスの龍太も頗るカッコイイ。
すると後ろ向きの龍太がピースサイン。
千香良は途端、ときめきが駄々漏れる。
(龍兄がツンデレ?)
素が出ているのだろう。
案外、お茶目だ。
今日一日で龍太との距離が縮まった。
本性をさらけ出す時期は人それぞれ。
程式は存在しない。
千香良の場合は最初に大泣きしてしまった。
本性を隠す間もない。
1日で我慢を溜め込む癖が露見している。
けれども龍太は千香良に対して半年を要した。
理由などはない。
それこそ、時期が来た。
それだけだ。
千香良は龍太とのあれこれを思い出す。
(初対面で肩を抱かれたてドキドキした……ハンドクリームを塗られたときは驚いたけど、今では当たり前。材料の練り方、Pコン詰め、下塗りを教えてもらった。あの時は、龍太がお金を貸してくれた。原田の存在は思い出したくもないが、時々、圭子ちゃんと一緒に歩いているのを見掛ける。元ヤン男曰く、セフレらしい……)
「チコン、チコン、チコン」
そこでラインの着信音。
しかも連続。
千香良は一旦、気持ちが削がれたが、今は龍太との歴史を辿りたい。
(免許許取り立ての千香良の軽自動車に最初に乗ってくれたのも龍太だ。そして最近は日焼け止めに五月蠅い……)
「チコン、チコン、チコン」
すると、またもや連続のライン。
三上からだ。
本来なら喜ぶはずのラインだがタイミングが悪い。
三上への思いは猫の目。
その時のシチュエーションで大きくなったり小さくなったり。
けれども三上はオーストラリアに旅行中。
オペラハウスにエアーズロック……グレートバリアリーフ、アップル島……
それに甥っ子も気になる。
乙葵の子供なら天使のように可愛いはずだ。
そして千香良はラインを開く。
「マジ天使……」
やはり送られてきたのは甥っ子の写真。
【シドニーは冬だよ。それなりに寒い】
【甥っ子の(たつくに)龍乙です。可愛いだろ】
「龍乙?」
名前の字面に千香良の全身に鳥肌が立った。




