after 14
「ねぇ、あなた」
いつになくウキウキとした表情の妻に、ハリーは顔を上げた。
空腹だったので食事の手を止めたくはなかったのだが、会話中に飲食をすると、妻が不機嫌になってしまうのだ。
仕方がない。
ハリーは気付かれない程度に、ため息をついて、握っていたフォークを一旦置いた。
「子爵がご結婚なさると伺ったのだけれど、本当なの?」
「ああ」とハリーは鷹揚に頷いた。
その様子から、妻は既にハリーが結婚について知っていたことを悟ったらしい。
「もう」と少しだけむくれてみせた。
「知ってたなら、教えてくれても良かったじゃない」
「この手の話がいかに繊細なものか、わかっているだろう?いくら君だって、おいそれと話せる訳がない」
「それもそうね」と言って、妻はすんなりと引いた。
こういう後を引かない彼女の性格を、ハリーは大変好ましく思っていた。
とはいえ、話題が話題なだけに、妻の興味は尽きない様子だった。
「子爵は、奥様を亡くされてからずっと独り身でご苦労されたのだから、必ず幸せになって欲しいわ。あなたもそう思うでしょう?」
「ああ、もちろんだ」
ハリーは力強く頷いた。
と、同時に、チラリと妻の表情を伺った。
人望があって、大貴族であるところのダレンが幸せになることに異議を唱えるような人間はほとんどいないだろう。
しかし、ハリーが気にしているのは、ダレンではなく、その結婚相手の方だった。
数日前、ダレンとリリーの婚約が正式に発表された。
ダレンからリリーを紹介されて、数週間後のことだった。
本当は、もう少し待ってから発表するつもりだったそうなのだが、お互いに結婚話がひっきりなしに舞い込んでくる為、予定を早めたらしかった。
まあ、賢明な判断だろうと、ハリーは思った。
次期公爵の結婚ともなれば、反響も大きい。
それを見越しての、早めの告知だろうと思われた。
実際、ダレン達の婚約話は瞬く間に広がっていった。
千里を走るのは何も悪い噂だけではないということなのだろう。
同じく、皆の反応についても、光の速度でハリーには伝わっていた。
中には、次期公爵であるダレンが再婚してしまうことに意気消沈する者もいたが、大変めでたい話なので、多くの貴族達はこぞって祝福している様子だった。
ハリーの心配をよそに、である。
ーーもっと反発があるかもしれないと思ったが、意外と大丈夫だったな。
反発の原因は、言わずもがな、お相手のリリーである。
昔のリリーは、とにかく評判が悪かった。
それは周囲の人々の勝手な憶測によって作り出されたものであったが、一度ついてしまった評価はそうそう覆ることはない。
女性に対する世間の目は厳しいのだ。
特に、リリーは初婚ではないし、年齢的にも年若い女性とは言えなかった。
次期公爵夫人として、文句なく相応しいかと問われれば、多くの者が首を横に振るだろう。
可哀想だが、それが今の世の大勢でもあった。
だからこそ、ハリーはずっとヤキモキしていた。
ダレンの幸せを願う身とすれば当然の反応だったが、結局のところ、リリーの件はそれほど問題にはならず、ハリーは何だか肩透かしをくらったような気分だった。
ーーいや、違うな。彼女が頑張ったからこそ、受け入れられたんだ。
リリーはハリーに言った通り、周囲に認めて貰えるように、物凄く努力を重ねた。
社交の場に顔を出し、交流を深め、人脈を広げていった。
その中で、リリーの人となりを知ってもらおうというのは、中々に骨が入ったとは思うが、彼女は大変粘り強かった。
元々、悪い噂だけが先行していただけで、リリー自体は淑女の鑑のような女性だったので、仲良くなってしまえば、案外誤解が解けるのも早かったようだ。
それに彼女には周囲のサポートもあった。
リリー自身がどこまで気付いているのかはわからないが、ハリーが見る限り、かなりの有力者達を味方につけているようだった。
一番は、やはりダレンの両親だろう。
あの二人が認めたという、もうその一点だけで、難癖をつけてくる強者はほとんどいなくなる。
特に、ダレンの母親である公爵夫人は、相当リリーのことを高く買っているようで、公爵家の催し物には必ず彼女を招待し、親しい人にリリーを紹介して回ったという。
つまり、社交界一の淑女として有名な夫人のお墨付きをもらった形だった。
中年層以上の貴族は、もうこれだけで認める他ない。
男性貴族に関しては、あのダレンが選んだ女性ということで、大半の者が受け入れてしまった。
ダレンの人望もここまで来ると、もはや神の領域である。
問題は若年層、特に年若い女性達であったが、ここはリリーの友人達が協力したようだった。
彼女の友人関係はかなりバリエーションに富んでおり、保守派の名家出身であるレディー・モリーをはじめ、新興貴族ながら大金持ちのシルビアとアリソン姉妹、絶世の美女としてその名を社交界に轟かせているノートン伯爵夫人が、こぞってリリーの人となりを褒めちぎったのだ。
美しいファッションや慈善事業に取り組む姿勢、心優しく品行方正な態度等、友人達の称賛の方向性は様々だったけれど、若い人同士、何が心に刺さるのか熟知しているようで、結局のところ、この若い層の取り込みが一番早かった。
今やリリーは、本人が少し戸惑うほどに、若い女性達から支持され、男性達にとっての憧れの的と化している。
ーー極め付けは、あの本だったな。
数ヶ月前に完結したばかりの"薄幸の未亡人"という物語は、いわゆる悲恋ものであった。
健気な未亡人の奮闘に皆、心奪われたように涙し、最終的に愛した人と結ばれなかったことで、更にその涙を誘った。
これは偶然かもしれないが、この主人公はリリーの置かれた境遇と酷似していた。
話のモデルなのではないかと囁かれていたが、リリー自身はとんでもないと否定していた。
とはいえ、この本を読んだ人間の多くは考えさせられたようだった。
傷付けられても人を恨まずに生きていく強さ、苦難に直面しても立ち向かっていく勇気、人を信じ愛を注ぐひたむきさ、それはまさにリリーの人となりそのものでもあった。
結ばれなかった主人公の代わりに、リリーには幸せになってもらいたいと考えたお人よしは、決して少なくはなかっただろう。
それだけの熱量を持った作品だったのだ。
ーーこうなってくると、彼女にとって出来過ぎていると言っても過言じゃないな。
今の状況がリリーの幸せに繋がるよう、全て道筋をつけられているように感じる。
でも、それだって結局のところ、リリーの努力あってこそだ。
ハリーは決してこの状況を棚から牡丹餅のような偶然で片付けたくないと思った。
ーーそうだ、彼女は素晴らしい人だ。幸せになるべき人だ。
ようやく、ハリーもそう素直に思えるようになった。
だからこそ、妻の反応が気になってしまった。
多くの人間が反発しないからといって、それが全て本心からそうしている訳でないことを、ハリーは知っていた。
彼らとて、損得を考えているのだ。
今から、次期公爵家の人間を敵に回したくはないという打算があるのだと。
でも、せめて妻には純粋に二人の結婚を祝って欲しいと思った。
妻にとっても、ダレンは友人の一人だった。
「実際のところ、君は相手の女性のことをどう思う?」
ハリーはどうしても聞かずにはいられなかった。
長年一緒にいるのだ。
ハリーなら妻の表情の機微から、全てがわかる。
妻の本心を知りたかった。
「相手って、レディー・リリーのこと?そうねぇ、とても心根の優しい女性よね。私は彼女なら子爵の相手に相応しいと思うわ。って、何よ、その変な顔は。もしかして、あなた、彼女のことが不満なの?」
「い、いや、別にそういう訳じゃないんだが、君の言い方がまるで……」
「知り合いみたいって?そういえば、あなたに話すのは初めてだったかもしれないわね」
「え、もしかして本当に顔見知りだったのか?!」
ハリーは焦った。
以前のリリーへの言動については、既に謝罪済みではあるのだが、こうなってくると、妻にも謝らなければならない。
そう考えたが、妻は「違うわ」と首を振った。
「彼女は、私のことは知らないと思う。でも、下の妹と同年代だから、私、彼女がまだ社交界デビューして間もない頃に、夜会で見かけたことがあるのよ。可哀想に、ずっと壁際で立っていたけれど」
「そ、それで?」
「妹は当時流行っていた、裾が長いハイウエストのドレスを着ていたの。リボンで裾の調整ができるタイプのドレスよ。でも、ここで問題が起きたわけ。途中で裾がずり落ちてきて、どうしても上手くたくし上げることができなくなってしまったのよ」
「それの何が問題なんだ?」
「何がって、ダンス中に転んだらどうするのよ!一生の笑い草になるんだからね!女性にとっては死活問題なのよ!全く、これだから野暮な男性は困るわ!」
「ご、ごめん」
ハリーは平身低頭、謝った。
それが功を奏したのか、妻は案外すぐに機嫌を取り戻してくれた。
仕方がない人ねと言わんばかりの表情ではあるが。
「まぁ、いいわ。とにかく妹は、そんな状態では踊れないから、もうその日は帰る他なかったの。一人でもダンスの予定を断ってしまったら、他の人に角が立たないよう、ダンスは全てキャンセルするのが通例だしね。でも、あの子ったら、意中の殿方がいたみたいで、どうしてもその人と踊りたいって言って泣いたらしいのよ」
「そういえば、そんな話を君の妹から聞いたことがあるな。確か、その意中の人が今の旦那さんだろう?なんだ、結局、踊れたんじゃないか」
「レディー・リリーのおかげでね」
「そうなのか?」
「ええ、彼女も妹と同じ、ハイウエストのドレスを着ていたのよ。泣いている妹を見かねて、自分のドレスからリボンを外して、妹のドレスの裾を調節してあげたの。自分はもう気になる人と踊ってしまったから気にしないでって言って」
ハリーは思わず、微笑した。
妻が言ったように、リリーはずっと壁の花だったのだろうが、それでも妻の妹が気兼ねしないように、もう自分のダンスは終わったのだと嘘を付いて、手を差し伸べてくれたのだろう。
そういった自然な心遣いができる所が、優しいリリーらしいなと思った。
「でもね、その後、レディー・リリーをダンスに誘う男性がいたの。彼女、上手い断り方を思いつかなかったのね。二人はフロアで踊り出したの」
「もしかして……彼女は転んだのか?」
「そうなのよ。可哀想に、相手の男性は助けようともしなかった。彼女と同じように嘲笑の的になるのを嫌がったのね。情けないけれど、妹も見ているだけで、どうすることもできなかった。後日、その話を妹から聞いて、慌てて母がレディー・リリーの家に謝りに行ったんだけど、彼女のお母様は何も知らなかったみたい。娘からは緊張して転倒しただけだとしか聞いていなかったって」
「そうか、彼女は君の妹を庇って、黙っていてくれたんだね」
「そうなのよ!しかも、妹が無事に踊れたことを喜んでくれて、転んだのは自分にダンスの才能がなかっただけだから気にしないで欲しいって、私の母に言ったみたい。本当に優しい方よね」
その時のリリーの様子は、ハリーでもゆうに想像ができた。
人を思いやることができる何とも彼女らしいエピソードだ。
とはいえ、そのせいで笑いものにされ、彼女の体面に傷をつけてしまったのだと思うと、悲しくなった。
「でも、この話には続きがあるの。レディー・リリーは転倒後、自分で立ち上がったんだけど、こんな醜態を晒した以上、もう彼女をダンスに誘う人はいないだろうと、誰もが思ったの。その矢先よ、彼女に手を差し伸べた人がいたの!」
「良かった、流石に一人くらいはその場に紳士がいたわけだな」
「ええ。しかも、その紳士はまだ年若いけれど大変なハンサムでね、二人が踊る様はまるでおとぎ話に出てくる挿絵みたいにロマンチックだったの。まさに運命の出会いね」
それは流石に美化し過ぎではないかと思ったが、ハリーがそう思ったのを、妻はすぐに察知したようで「まあ、聞いてよ」と、どこか得意げに続けた。
「その二人は後に結婚することになるの。助けてくれた紳士はね、後に彼女と結婚する二人目の旦那さんだったわけ」
「え、二人目ってことは、もしかしてサイラス・マクファーレンか?」
「そうなのよ!二人は醜聞になるのを嫌って結婚したというのが、もっぱらの噂だったけれど、私は違うと思うの。だって、二人はそれよりもずっと前にロマンチックな出会いを果たしていたんですもの。二人が結婚するのは運命だったのよ」
妻はそう言って、どこか夢見るように目を瞑った。
ハリーは妻ほどエモーショナルには考えなかったが、それでもリリーとサイラスが何の因果か再会し、その後、絆を深めていったのは事実だろうと思った。
でなければ、サイラスは身を挺してリリーを守ろうとはしなかったはずだ。
サイラスがいたからこそ、今現在リリーは生きている。
そう考えると、二人目の夫がサイラスだったことは、妻が言うように、ある意味、運命だったのかもしれなかった。
「彼女のことを身持ちが悪い女性だなんて言う意地悪な人もいるけど、私はそうは思わないわ。そもそも、そのイメージがついたのだって、一人目の旦那さんが原因でしょう?」
「ジェイソン・キャトリーだな。確かに、彼は好色家だったが……」
「違うわよ。そういう意味じゃなくて、彼ほどの遊び人でさえ虜にしちゃうくらいの魅力がレディー・リリーにはあったから、周囲に悪女だって誤解されちゃったってことよ」
それは反対なのではないかと、ハリーは思った。
確かにリリーは素敵な女性だが、それでも最初の結婚当時は、彼女の方がジェイソンの魅力にまいってしまったというのが、一般的な見方だったように思う。
そもそもジェイソンは、誰か一人の女性を想うようなタイプではなかった。
むしろ、女性を手玉に取る人種であり、可哀想に、リリーはまんまとその毒牙にかかってしまったのではなかろうか。
「まあ、世間では彼がレディー・リリーを選んだのは財産目当てだって考える人も多かったようだけれど、私は知っているのよ。彼にも意外と可愛いところがあった、というと失礼だけれど、少なくとも奥さんのことは愛してたはずだってね」
「ジェイソン・キャトリーと知り合いだったのか?」
「親同士が親しかったのよ。私の母と彼の実のお母様は幼馴染だった。その縁で、私たちも顔を合わせれば近況を報告する程度には親しかったわ」
「も、もしかして君は彼と……」
「やめてよ、邪推するのは。私たちは、あなたが思うような関係じゃなかったわ。お母様が亡くなってから、彼は変わってしまった。どんどん軽薄になっていって……まぁ、それも家庭環境のせいだから、彼が全て悪い訳じゃないけれど、少なくとも遊び歩くようになってからは、私は彼とは会わなくなったわ。遊び人は嫌いなの。でも結婚してから、彼、変わったのよ。相変わらず、遊び呆けてはいるようだったけれど、昔のような自堕落さはなくて……上手く言えないんだけど、とにかく変わったなって思ったの」
「あのジェイソン・キャトリーに限って、改心するようなことはないと思うが」
「ふふん、聞いて驚かないでね?ある夜会での出来事なんだけれど、ある人が奥さんのご機嫌取りの為のプレゼントについて悩んでいたの。で、私が女性なら宝石を贈れば間違いないってアドバイスしたら、ジェイソンが珍しく話に興味を持ってね、宝石を喜ばない女性もいるだろうって言うの。その時はすぐに別の話題になったから、それ以上話さなかったんだけれど、数日後に街中でバッタリ会った時に、珍しく彼の方から話しかけてきてね、プレゼントについてアドバイスを求められたのよ。先日言ったように、宝石を喜ばない女性には何を贈ればいいのかって」
「君は何て答えたんだい?」
「そんな女性はほとんどいないけれど、宝石が嫌ならドレスにしたらって言ったわ。そしたら彼、表情がどんどん曇って……私、彼のそんな顔、初めて見たから、誰へのプレゼントなのか気になって聞いてみたの。彼は奥さんに贈るんだって答えたわ。正直、彼が妻にプレゼントを贈るような殊勝なタイプじゃないことはわかっていたから、多分、別の女性に贈るんだろうと思って、私、あなたからのプレゼントなら女性は何でも喜ぶわよって意地悪を言ったの」
「彼の反応は?」
「微苦笑を浮かべてたわ。何でも喜んでくれるからこそ、一番喜ぶ物を贈りたいんだって言ってた。奥さんからはいつも沢山のものを貰っているから、少しでもお礼の気持ちを返したいんだって」
リリーがジェイソンにそんなに高額なものを貢いでいたとは思えない。
つまり、彼が貰っていたのは"物"ではないのだ。
愛や安らぎ、そういった形はなくてもかけがえのないもの、それらを惜しみなく与えてくれたからこそ、ジェイソンはリリーが本当に喜ぶものをあげたいと思ったのかもしれない。
「だから、私ね、今度はもっと真剣に考えてアドバイスしたの。あなたにとって奥さんがどういう存在か、それを表している物をあげたらどうかって。彼、少し驚いて、でも、すぐに良いアイディアだって喜んでたわ。結局、彼が何を贈ったのかはわからずじまいだったけれど、私、彼は結婚して良い方に変わったんだなって思ったの。それはレディー・リリーが彼を籠絡したからじゃなくて、誠心誠意、彼を愛し、誠実に尽くしたからだわ。だから、ジェイソンもそれに応えようとしていた。そんな風にジェイソンを変えた女性が、身持ちが悪いはずがないじゃない」
「なるほど」
「だから、私、子爵との再婚には賛成よ。誠実な紳士には誠実な淑女こそ相応しいもの。誰かさんみたいに、レディー・リリーが魔性の魅力で子爵に取り入ったなんて馬鹿なこと、考えもしないわ」
非難されるように妻に睨まれ、そこでようやくハリーは気付いた。
妻にはきっと、ハリーとダレンの酒の席でのやり取りを聞かれていたのだと。
やられたなと思った。
妻は釘を刺してきたのだ。
これ以上、二人の結婚について、とやかく口を出すなと。
そして、妻の言い分は正しかった。
ハリーは申し訳なさそうに、頬をかいた。
ダレンやリリーにあんなことを言う前に、妻の意見を聞けばよかった。
そうすれば、二人に礼を失するような言動を取らなくて済んだのに。
優しい二人は、ハリーの無礼を許してくれたけれど、それではいけないと思った。
ハリーも二人の幸せの為に何かしてあげたかった。
「あなたは余計なことはしなくていいの。ただ笑って、二人の結婚を祝福してあげるだけでいいのよ」
先手を打つように言われ、ハリーは流石にまいったなと思った。
またしても、妻が言っていることは正しかった。
ハリーが何かしてあげようというのは完全に自己満足であり、そんなことをしなくとも、あの二人ならきっと実力だけで周囲に認められ、自らの手で幸せを手繰り寄せていくだろう。
本当に二人のことを想うなら、ハリーはただ二人の幸せをその傍で見守っていればいいのだ。
それが今のハリーにできることだった。
思わず、ハリーは破顔した。
これからの二人を、近くで見守れる。
それは、ダレンの親友として間違いなく幸せなことだった。
そして、できれば、今後はリリーの親友にもなりたいと、ハリーは強く思うのだった。




