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第三話 無意識の世界①

気がつけばその場所にいた。周りに何もない真っ白い世界。

しかしドイに戸惑いは無かった。

何故なら、どこかで見たことがあるような懐かしい気配を感じ取ったからである。


そこにはただ一つ扉があった。

その扉は、屈強そうな男が三人係で壊しにかかろうとも、びくともしそうに無い程、頑丈そうな鉄製の扉である。


扉に引き込まれるかのように迷いなく歩みを進めると、突然その扉は開いた。


すると何故か森の中にいた。

振り返るとついさっき背後にあったはずの扉がない。

自分はなぜここにいるのか。意思を持って扉を開けたのか、それすらも思い出すことができなくなった。


この場所がどこかを知るために森の奥へと歩みを進めて行くと、小さなほこらがあった。

祠を見ると、まるで嘘のような記憶が蘇ってくる。

そういえば、自分は神としてこの世界を一度救ったのだった……。何故か祠を見るとぼんやりとそれを思い出した。


意識が途切れたあの時、自分の作った異空間で、この世界のことを高みの見物をしてるかのように

眺めていた。

その時は自分の意思で出入り口を決めることができたが、今はそれができない。



他に意識が途切れる前の記憶の手掛かりがないかと、辺りを探すと、一箱の古びた木箱と共に、使い古されたと思われる本が何冊も積み上げられていた。像の前にそれが捧げられていた。

その像は神々しい雰囲気を出しているけれども、どこかで見たことがあるような...…そんな気がした。



石の土台の上で、左手に本を開き、右手で杖状の剣を天へと掲げ、何かを叫んでいるようなそんな

表情をして(そび)え立つ石膏でできた人型の像。


どこか既視感が感じられる見た目をしているが、ふと、何かが自分を呼ぶようなそんな気配を感じ取り意識がそっちに向けられた。

体から噴き出る魔力マナを操作し、声の主の場所へと転移する方法と感覚を、迷いなく思い浮かべ、転移する。



転移した場所は、陽の光を一切受け付けないほどの深い森だった。


自分の目の前を白色の何かが一瞬で横切った。

それに続いて黒い影が三つ通り過ぎる。


一瞬だったが、その三つのうちの一つが自分の事を調べたような気がした。


「おい、待て!」


杖で脚力を上げる増強魔法を発動し、自分に掛かる重力を半減した後すぐに自分もその後を追いかける。


三方向から迫っている影から放たれる目に見えない剣先を、白のローブを着てフードで顔を隠している人物は華麗なステップで躱しながら逃げ回っていた。


だが、次の一歩を踏み出そうと左足に力を入れるが、その足に向かって黒影から放たれた空気弾が

背中に着弾し、バランスを崩してしまった。


そこを逃さないよう影が剣を突き出した。


「けど、それをじっと見てる俺じゃないんだよ」


地面から上方向に衝撃魔法を放ち、三人を上へ吹き飛ばす。

気絶した状態で地に打ち付けられる。意識を取り戻した時に襲ってこないよう、蔦を使って三人を拘束した。


それを見ていた、白のローブを着た人物は

「信じられない」というような表情をしながら、被っていたフードを外した。




◆ ◆ ◆視点


「うそ.......」


目の前で起きた光景が信じられなくて、思わず言葉がこぼれてしまった。

逃げる途中で見かけた男が、脚力増強の『剛脚』を使っていた私に追いついた上に、一体一体が『使徒録しとろく』並みの力を持っている三体を一瞬のうちに気絶させた。


追っ手から助けてくれたとはいえ、この男が敵ではないと言う確証はどこにもない。

感づかれないよう、座った体勢のまま護身用に足に着けていた、小型投げナイフに指を通す。


「追われていましたが、お怪我はありませんか?」


拘束した三人を横目で確認した後に、男が近づいてくる。

魔力の流れは...何も仕掛けようとはしていない。


「...…ええ、なんとか。お気遣いありがとうございます」


「よかった。でも何かあったら言ってください。治しますので」


「いえいえ大丈夫ですよ。.......それで『使徒録』という言葉に聞き覚えはありませんか?」


「しとろく....?何ですかそれ」


...反応無しか。敵ではないなら完全に善意でやってくれたという事になるし。なら少しは敬意を持って接するとしよう。


「いえ、知らないならいいんです。この度は命を救って頂きありがとうございました。

もしこのまま追いかけられていたと思うと...本当にありがとうございます」


そう言って住まいを正した後、深くお辞儀する。


「そんなに深く礼をしなくても、あまり手間は掛からなかったですし」


「そ、そうですか」


手間がかからなかったと彼は言った。王朝近衛禁兵ミセスズの私が苦戦した相手ですよ!?

つい頬の筋肉がひくついてしまう。意識はしてないがため息があふれた。


そうだ、あの魔法制御ならば自分につけられたアレ(・・)も消去できるかもしれない。


「不躾な願いなのですが、頼みを聞いてくれますか?」


「頼みですか。いいですよ、できるかどうか分かりませんが」


⭐︎ ⭐︎ ⭐︎


すると彼女はいきなりローブを脱ぎ出し、細く入る木漏れ日の元に上半身を曝け出した。


「い、いきなり何をやっているんですか!」


「...あまりうるさくしないと嬉しいです。私も我慢しているので...」


水色の短く切り揃えられた髪から覗くその頬が赤く染まり、恥ずかしそうに自分を隠す彼女。


「じゃあなぜ?」


その言葉とともに自分は背けた体を恐る恐る戻した。


そしてその姿を見て愕然とする。


絹のように滑らかな体に浮かぶ、首に付けた鉄のチョーカーから伸び、紫色の鎖状に広がったその模様。それが躍動して体を蝕んでいるように見えた。



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