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虎の威を借りる吸血鬼  作者: トカウロア
交易都市への道程編
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第四十六話、喉元過ぎれば熱さを忘れ……いやまだ過ぎ去ってないな!?

なんかこう小説だけに限らずいろんなことのやる気が最近落ちてきました(汗)

夏バテでしょうか……?




「お~、これはいいな。とても楽ちんだ。」



 照りしきる陽射しを『血液操作』(ブラッドウェポン)で作った傘で防ぎながら、顔に少しかかる風の感触を楽しむ。私を運ぶその存在の表面は確かにざらざらとしているが、調節可能であるのか、こうして乗っている分には左程気になるようなものでもない。


 横を見れば私と同じように鮫に乗った落ち着いていればゆるふわ系な美少女――ルーニャちゃんが髪をくすぐる風に目を細めていた。


 無論それだけではない。視線を前に向ければ何処か緊張した面持ちで前方を見つめる凛々しい子犬族(コボルド)の男性、ルエドくんが――なんか彼が鮫に跨がっているのはとてもミスマッチな気がして思わずクスっときてしまう。もちろん表情に出すなんてポカはやらかさないが――後ろに向ければサメを操る美少女、名をシャモレーヌというその子が同じように鮫に跨がり宙を移動していた。







 結局我々の交渉は、私の提案を飲む形で終決した。私とルーニャちゃんは二人に監視されながら鮫に乗って移動することになり、ルーニベくんは今頃のボロボロになった移動者たちの中で針の筵で過ごしているのだろう。


 聞いた話によると死者が出たらしいので、ちゃんと人質を保護しておいてくれるのかが今更ながら心配になってきたが、しかしまあさすがにそんな軽挙妄動はしないと信じたい。普通に最低でも1人は道連れだろうしな。というか魔力さえ回復すれば怪我しているのに勝ってしまいそうだ。


 で、こちら側はどうか、というと……まあ大人しくしているしかないな。正直このまま敵の陣地内に連れていかれるというのはやっぱりとても不安なんだが、だからと言って逃げられるかというと難しいだろう。


 せめて前にいるのがルエドくんではなくシャモレーヌちゃん……シャモちゃんであれば不意打ち必殺『死神の鎌』(デスサイズ)と『光輝の剣閃』(シャイニングブレード)で仕留めて二対一に持ち込んでそのまま勝てるんだが、シャモレちゃんが後ろにいる、つまりこちらを監視してるので不意打ちを決めるのはかなり難しそうなのだ。


 かと言ってルエドくんを倒してシャモちゃんとの二対一に持ち込んだとして勝てるかというと正直どうだろう。お互いが完全に回復したとして、私は彼女の即死攻撃を耐えれるのは多くて3回分というところ。正直リスクが高すぎる。


 では戦うのではなく逃げるのなら、とも考えたのだが、少なくとも私にこの辺りの土地勘はないし、空を飛べば目立ってしまう。ルーニャちゃんなら知っているのかもしれないが、どの程度知っているかをバレずに聞く方法がない。


 それに上手く距離を取れたとしても、そこから先は追い駆けっこ兼隠れんぼになるのだが、鮫を動員できるあちらの機動力や探索力を考えると確実逃げれるとは到底言えないだろう。


 というか鮫から急いで逃げるとかなんかもうそれだけでフラグ臭いと思うんだが。私金髪美人だしな。嫌だぞ、せっかく生き残ったのにそんなB級以下のノリで死ぬのは。いやきちんとした場面で感動的な流れなら死んでいいかって言ったらそりゃ違うけれども。


 ではこのまま逃げれなかったとして、そこからどうなるか。当然このままあちらの仲間と合流することになる。ここで一番怖いのが仲間と合流した瞬間、あるいは少し経ってから人質なんて知らねぇ、と襲われることだ。正直私なら十分検討するくらいにありな方策ではある。


 ただしあちらは都市攻めなんて真似をしようとしているみたいであるし、その前に不必要な損耗を避けたいというのもあるだろう。けれど我々を見張らなくてはいけないとなるとその分戦力が減ることは避けられない。だからこのまま何もせずというのも十分あるとは思うのだが、あちらの戦力がどれくらいか、そしてメルマークの戦力がどれくらいか、という部分が大きく現段階では判別ができない。


 つまり今考えても仕方がないということだ。とはいえ何も考えずにいるとやはり不安になるし色々心細い。なら今できることで何か意味がありそうなことはあるだろうか、と考える。しかし特に良い案が浮かばない。浮かばないので、情報収集でも兼ねて雑談でもしてみようか。



「ところでメルマークってどんなところなんだ?交易都市なのは知っているんだが、行ったことないんだよ。」

「どう、と言われても困りますが大きい都市ですよ。港があって海にも川にも船を出しています。漁業と商業が活発で税金は比較的安いですかね。でも畜産や農作はそこまで多くなかったと思いますよ。」

「……サーモンのパイが名物。」

「海船を維持できるのか、それは凄いな。」



 さて、以前も話したと思うがこの世界にはモンスターと呼ばれる魔法を行使する強力な野生生物が存在する。彼らは街には中々近づかないし、近づいた場合は待機している警備兵たちで対処しているのだが、街の外へ移動するとなればそうはいかない。


 ゆえにこの世界による移動は訓練を積んだ者たち少数による移動か、あるいはある程度強いモンスターと遭遇しても対処できるだけの護衛を引き連れた大人数のものとなる。そしてそのように工夫を凝らしていても年に数人は死んでしまったり大怪我を負ってしまったりするらしい。


 というのが陸路での移動の場合だ。では翻って海路はどうか。当然水辺にもモンスターは出現する。ならば条件は同じではないか、と思うかもしれないが実は違う。何故なら水辺にいるモンスターというのは基本的に水中を泳いでいるか空を飛んでいるからだ。そのどちらが相手だったとしても船の上という身動きがままならない環境で水中や空中のモンスターと相対するというのは地上の何倍も難しいのである。


 無論この世界には色々な種族がいるので水中で行動するのを得意とする者たちもいる。だがそれでも船は良い的であり、護り抜くのは簡単ではないだろう。水の中で自在に動けることと浮かんだ船を守り抜くことは違うのだから。


 ではそういった世界の状況で海船を商業として行えるということはどういうことか。それはつまりそのような難行を行えるだけの戦力を保有している……だけではない。商業として行えるということはつまり採算が取れるということだ。


 船の大きさは恐らく川のものより海のものの方が大きく、出現するモンスターもやはり海の方が大きいだろう。そうでなくとも前世でさえ海の船は時折トラブルによって沈むものだった。航海の危険度がより大きく、造船技術も前世よりは低いだろうこの世界では言わずもがな、である。


 そして船というものは大きければ大きいほどたくさんの積み荷によって利益が得られるが沈んでしまえば全てパー、残念無念大赤字という代物だ。保険という選択肢もあるかもしれないが、それだって保険会社が採算を取れなければ成り立たない


 つまりメルマークは大型の船を海路で運用し、利益を上げられるほどの技術や戦力を保有しているということになる。これは軍事的にも商業的にも大きな力を持っているということを示す。正しく大都市、この辺り一帯の中心地と呼ばれるだけのことはあるのだろう。



「……というかそんな場所を攻める気なのか?流石に無謀なように思えるが。」

「ん、私たちだけじゃない。別ルートでいっぱい来てる。それで勝てるかは分からない、けど。でもリインは勝てるって言ってた。」

「リイン?」

「うん、私たちのリ―――」

「おい、あまり詳しく話すのは不味くないか?」

「…………ん。そうかも、ごめん。」



 そして何やら重要人物そうな奴の話が聞ける、と思ったのだが、そこでルエドくんにインターセプトされてしまった。とはいえ「リ」までは聞き取れたのでそこから考えるに……普通に考えればリーダー、だろうか?まさかリトマス試験紙とか言うはずもないし。


 で、とりあえず情報を整理するとシャモちゃんが勝てるかどうかわからない、逆説勝負にはなると判断する程度の戦力がメルマークに集まろうとしている、と。


 いや待ってくれ。えっ、私今そんなところ向かっているのか?いやまあ、話の流れ的に予想は出来ていたけども、でもこう情報を整理するとヤバさの実感とか恐怖とかそういうのがどんどんと……。


 首筋を流れる汗。どうにかできないかと普段読ませないようにしている瞳がぐるぐると周囲を探し始める。あっ、ルーニャちゃんと目が合った。えっ、難しい?そっかー……。



「あー、ちなみに到着したら私たちの扱いはどうするつもりだ?流石に戦いに参加しろと言われるとちょっと困るんだが。」

「ですねぇ。それから別れるのもちょっと。」

「ん。拠点の中で待っていてもらおうと思う。……それでいいよね?」

「ああ、皆に確認を取る必要はあるとは思うが他に居させられる場所もないし、その方向性になると思う。」



 ふむ、どうやら拠点は用意されているらしい。となるとやはり前々から準備していた行動だったんだろうな。そんなところに戦える戦力が現れたから無視できなかった、と。しかし拠点か、大丈夫か?もし彼らが負けたらそれはそれで厄介な立場になってしまう気がする。むむむ、人質になったのは失敗だったか? とはいえもはやできることもないし、大人しくしているしかないか。大人しく、大人しく―――



「あ、そういえば海があるなら海水浴場はあったりするのか?」

「カーフィヨークジョー……?」

「いやそんな人名みたいのではなく海水浴場……あー、海に入って泳いだりして遊ぶ場所、はあるのか?」

「海……陸の種族が入るの、危険。」

「ですね、モンスターが出ることもありますし。……もしかして海で泳ぎたかったんですか?」

「それもあるが皆の水着とか見たかったんだ。照りしきる太陽の光にそれを反射する水しぶき、滑らかな肌色、安っぽいが不思議な満足感のある食事の数々。私は確かにインドア派であるが、しかしそれでもかわいい子と海へ行くというのはこう、浪漫があるんだよ。だというのに、せっかく海があるというのに、水着イベントがないというのはどうかと思うんだよ、私は。なぁ、今からでも侵攻をやめて海で遊ぶのはどうだ?」

「「「さすがに無理 (だ)(だと思います)。」」」



 私の折角の提案に響き渡る否定の三重奏。何故だ。戦いなんかするより可愛い子の水着姿見てる方が何倍も有意義だと思うんだが。というかあれだよな、そもそも自分で戦ってる時点で損というか。痛いし、疲れるし、色々損害出るし。やっぱり高みの見物を決め込みながら煽りつつなんか売ったりするのがいいと思うよ、私は。


 ん?そう考えるのなら今は悪くないのか?当然だが、我々に表立って戦えと言われるようなことはないだろう。であるならば約束の不履行やら突発的なアクシデントに注意する必要はあるだろうが、高みの見物そのものは出来ている。


 であるならば足りないのは何だ?やはり利益だろう。そりゃ高見の見物もそれだけでも娯楽としては悪くないが、おそらく見物そのものはできないだろうしな。となると……ギャンブルの胴元にでもなるか?あるいは持ってきた保存食を売る?いや後者は難しいか。とはいえせっかくの戦場だ。何か、何かいい感じに利益を得られないだろうか。




「……見えてきた。いや、だが、あれは―――?」

「どうしました?何かトラブル……で……も…………?」



 なんて風に目を閉じて考え込んでいたらどうやら街が見える場所に着いたらしい。大きな街らしいのでまだ移動距離はあるんだろうが、とはいえ目的地までの距離が分かるのは良いことだ。目標までの道程が見えるかどうかで人のやる気というのは大きく変わるからな。


 えっ、お前は今鮫に乗っているだけだろう?いやまあ、それはそうなんだが、でもほら、それだって結構大変なんだ、きっと。私が楽をしていると言うのならまず鮫に乗ってみてから言ってほしい。無論、鮫に乗ったことがある奴なんて早々いないのは理解している。


 というか普通にレジャー的な旅も悪くはないとは言ったがこう旅続きだと面倒になってくるというか。そろそろどこかでのんびりぐーたら、揚げた芋を薄くスライスして塩を振りかけたものでも摘まみながらぼーっとしたいというか。何度も言うが私はそもそもインドア派なんだよ、吸血鬼(ヴァンパイア)だし。……まあそれはあんまり関係ないか。








「あ~、一応聞くが、これは、そちらの想定とは別、というのことでいいんだよな?あれがメルマークの普通、だとか言わないよな?」




 私は現実逃避をやめてため息混じりの声を出す。眼前に広がっているのは下の方に見える大きな港町。海に接している部分以外を高い壁で囲まれた大都市だ。


 幾つもの海辺に並んでいる大きな船。大きく目立つ中央の立派な領主邸らしき場所。時刻を告げる時計塔。おそらく市場であろう長い道に、いくつもの集合住宅らしき建造物。この世界を考えるのであれば十分と言っていいほど背の高い建物たちが、ずらりと並んだ大きな――それこそ前世の世界のどこかの街だと言われても一瞬信じてしまいそうな――町が広がっていた。


 ああ、しかし。だがしかしだ。今見るべきは残念ながらそこではない。まず目に入るのは大量の機械の軍勢、おそらくは私たちが戦う羽目になったのと同じ奴だろう。それがずらーっと並んで街の前に展開している。その数は確かに街一つだろうと落とせるだろうと思わずにはいられない。まるでSF映画の敵側だ。


 ……けれど、それは、それはまだよかった。数に圧倒されたし、恐怖を感じはしたけれど。なんでもう隠れずに展開しているんだとか、そもそもその数どうやって隠すつもりだったんだとかあるけれど、しかしまだいいのだ。何故なら機械兵が大量に居るであろうことは予測できていたからだ。


 私が真に冷や汗を流す原因となったのは機械兵の反対側、街を挟んだ向かいの方向に見える()()()()()()()。誇らしげに掲げられた旗の数々。中でも最も目立つ人一倍大きな旗は見覚えがあった。あれは確かアヴラパヴァン、というか吸血鬼(ヴァンパイア)と敵対している人間(ノーマル)たちの宗教のもの。



 ――――そう、恐ろしいことにメルマークの街は二つの勢力に攻められようとしていたのである。



「なぁ、やっぱり帰っちゃ駄目か?」



ひとまず第二章はこれで終了となります。

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[一言] トカウロワさんのやる気がでるように応援します!  フレー、フレー、がんばれ、がんばれ!
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