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虎の威を借りる吸血鬼  作者: トカウロア
故郷脱出編
16/46

第十六話、一緒に逃げないか?②

投稿スピードをあげたい……と思いつつも結局別のことをやっていることが多い……すまない……


「―――返答は決まったか?」


入ってきた扉を閉め、部屋の中にいるフレリアちゃんへと問いを投げかける。薄い朝日が窓から降り注ぐ室内はピンク色を基調とした実に可愛らしい部屋。もこもことした羊や山羊の人形がフリルのついた枕の隣に置かれ、窓の近くには黄色い花(あいにくなんの花かは知識が無くて分からない、そもそも前世にあったものかも不明)が瓶に刺さって咲いている。


 そう!私は今!女の子の部屋にいるのだ!!前世から考えてもこれはとてもとても大きな一歩ではなかろうか。前世だとこういう経験はなかったからなぁ。別に会話できないとかそういう訳ではないが、仲良くなるきっかけもなかったし、そもそも正直女の子が好きなんであって別に誰でもよか―――げふんげふん。ともかく恋人いない歴=享年の私にとってこの状況はかなり嬉しいことなのだ。えっ、今世だと私も女の子だろう?いやまあそれはそうなんだが、それはこう、なんというか別ではないだろうか?


 それにしてもピンク色の基調、か。正直なところ意外だ。あれだけ剣を振り回し強かった彼女がこのように可愛らしい部屋に住んでいるとは。でもそういうギャップ、とてもいいと思う。ベタと言われればベタだけど私は良いと思う。うん。あ、でも元々スカートを履いていたんだし、おかしくないと言えばおかしくないのだろうか?


「……悪いけど断るわ、あんただけで逃げて頂戴。」


 部屋の中央、ベッドの上に腰かけたフレリアちゃんが私に返答を返してくる。その表情は少し眠そうで、けれどそれ以上に焦りというものを感じさせる。いつもはしっかりと前を向いている活発な印象を受ける彼女だが、今日は儚げだ。これが血なのだとしたらお父様が引っかかった理由もよく分かる。その後の対応は駄目だったと思うが。


 とはいえ彼女の私の質問に対する解答は否、このままでは連れていくことは叶わない。まあそういうことならそれは残念だ、と言ってもう出かけてもいいんだが……今は少し不味いか?おそらくお父様が私に失敗したと言わなかった以上はここで少しは説得しろということだろう。従わなかったら報酬はなし、と言われかねない可能性がある。いや報酬そのものは許可するだろうがすぐにそれだけやって出て行かないと何か言われてしまう可能性がある。


 ということで交渉したけど無理だった、くらいの言い訳が立つように少しアプローチ。それにフレリアちゃんが一緒に着いてきてくれたら私も嬉しいしな!……それがメインだろとか言うなよ?違うからな?割と私諦めてたし、うん。でもほら、もしかしたらワンチャンあるかもしれないし、な?


「本気か?負け戦だぞ?」

「本気よ。……というかそっちこそ本気?この局面で逃げる、だなんて。」


 おっとむしろこっちに言ってくるか。非難するような眼でこちらを見つめるフレリアちゃん。私は別にマゾヒストでないから興奮はしないが……それはそれとして美少女のジト目って可愛いよな、ということを思い出させてくれる表情だ。


「ふむ、私が逃げようというのは意外か?」

「あんた、この街の跡継ぎでしょ。それに吸血鬼(ヴァンパイア)の誇りはどうしたのよ。」

「誇り、ねぇ。」


 そういえば昔他の吸血鬼(ヴァンパイア)やらと話す時にそういう話をしていたこともあったな。それにそういうことを言うのが主流派であるというのもそう、だ。おそらくフレリアちゃんは嫌味や陰口としてそういう言葉を聞くことも多かったんだろう。だからこそそれの跡継ぎである私が逃げようというのに違和感、というか憤りがあるのかもしれない。


「建前と本音、どっちが聞きたい?」

「何よ、それ。この期に及んで建前で話すつもりだったの?」

「いや、これでもお父様にな、フレリアちゃんのことを説得するように頼まれていてな?それで建前と本音どちらの方が話を聞いてもらえるか分からなくてなぁ。」


 いやまあどう考えても建前で話した方が受けはよかったんだが、そうすると逃げる間もその建前でいないといけなくなるからな。ぶっちゃけそれはめんどくさい、というか旅なんてストレスがかかりそうな途中にそんなことまでするのとか正直ごめんである。ということでなるべ~く軟着陸させつつ本音を話して仲良くできないかな、と。


 まあ出来なかったら多分フレリアちゃんも死ぬんだろうが、そこまでは私の責任じゃないしな、うん。えっ、薄情?いや一緒に助かろうって誘っても駄目だった場合はしょうがないだろう?美少女は世界の宝というのかもしれないが宝はあくまで自分で愛でるから意味があるのだ。財宝目当てに命を失うなんて本末転倒だ。それに今世では私も美少女なり美女なりの類、つまり私も世界の宝だしな!


「本音で話しなさいよ。というか建前だって分かってて話されてもしょうがないわよ。」

「あはは、まあそれはそうだな。……思えばフレリアちゃんとしっかり話す機会なんて今までなかった。どうだ、最後になるかもしれないんだ。お互い胸を開いて話そうじゃないか。」


 彼女に微笑みかけながらその隣に座る。美少女の部屋のベッドで隣に座るとか特等席である。しかもこの状況なら多少嫌でも否とは言えまい。はーはっはっは。……とあんまり心の中までふざけているとバレそうなので少し真面目な話でもしてみようか。


「で、吸血鬼(ヴァンパイア)の誇り、だったか?そうだな、それを口にする者は多い。元より吸血鬼(ヴァンパイア)は強力な種族。幾人もの英傑だって生み出してきた。魔王と呼ばれる者すらいた。それに自信を持つのは分からない話ではない。」

「分からない話ではない、ね。あんたは違うってこと?」

「いやいやそうではないさ、自分に自信を持つ材料としても、自分を褒める材料としても吸血鬼(ヴァンパイア)であるということは大きいと思っている。キャラ属性としても美味しいし、かっこいいからな。だが……」

「だが……?」

「それはあくまで自己肯定の材料の一つであって、そのために何かをするというものではない。私にとってはな。そうだな、これが正しい表現かは分からないが……プライドはあるが、誇りはない、というニュアンスかな?」

「……よくあんたそんなこと真顔で言えるわね、恥ずかしくないのかしら?」

「あははっ、ひどいな。本音で語り合おうという話だから話したというのに。」

「そうね、本音で話そうって話だったから本音で貶したわ。」


 ひどい言い草だ。たった一人の姉を敬おうという気持ちはないのだろうか?この美しい容姿だ、お姉様と慕ってきてもおかしくはないはずなのだ。それなら私も「おや、リボンが曲がっているぞ。少し待て、直してやろう。」みたいなベタなイベントを行うこともやぶさかではなかったというのに。ああ、なんて悲しい。よよよ。


 ……割と楽しいなこの会話。もう少し前からこうして話してもよかったかもしれない。いやぁ、私も色々考えてはいたんだが、めんどくさ――立場とかしなければならないことを考慮して先送りにしていたのである。余談だが私は夏休みの宿題は最終日付近に友人に写させてもらうタイプだった。


「義理、は?」

「義理?何の事だ?」

「お父様もお母様もあんたの母親も、それだけじゃないこの街で住む他の連中も、死ぬかもしれないのよ?故郷のこの街だって滅ぶかもしれない。それに、それに何も思わないの?助けたいって、そうは思わないの?」


 咎めるような、それでいてどこか縋るような表情で彼女は私を見つめる。遠近法により大きく感じるその表情はやはり―――どこに出しても恥ずかしくない美少女だった。このままでは童貞的に少し照れが出てしまうかもしれないと立ち上がり、彼女の疑問に答えを返す。それにしても意外だ。ここで態々それを私に聞くということは彼女は―――


「なるほど、フレリアちゃんは助けたいのか。」

「っ―――――!」

「正直なところ意外だ。君の扱いははっきり言って良いものとは到底言えなかった。私が君だったら恨んでいたかもしれないところだ。君の母親のことは分からないが、我々のお父様だって―――君に優しかったのかもしれないが、しかし()の行動が事態を悪化させたことは明白だ。それでも助けたいと?逃げるのに母親を連れて行ってくれ、ではなく?」

「……そう、ね。あんたの言う通り、確かにここの連中は嫌いよ。陰口言うし、意地悪してくるし。この街には嫌な思い出はいっぱいあるわ。」

「だとしたら何故?」

「でも、でも()()()()()()()()のよ。私にだって優しくしてくれた人だっていなかったわけじゃない。お母様は病気がちだけどいつも優しく微笑んで私を励ましてくれた。お父様は、確かに確かに駄目な所はある、いっぱいある。だけどいつも私たちのことを心配してくれたり、良いところだってちゃんとちゃんとあるのよ。」

「だから助けたい、と。」

「えぇ、そうよ。助けたいの、好きな人たちを、もしかしたら好きになれるかもしれない人たちを。それに、それに私だって半分は吸血鬼(ヴァンパイア)で、()()()()()なのよ。なのに私が、私だけが逃げるわけにはいかないでしょうが。」


 握り拳を固めるフレリアちゃん。立ち上がりこちらを見つめてくるその視線はとても熱い。錯覚ではあるのだろうが、その熱量が私に熱さを感じさせる。私は余り立ち入らなかったが、フレリアちゃんにはフレリアちゃんのこれまでの人生があり、それが決意を起こさせたのだろう。()()()()()()()()()が、しかしその本気度は理解した。到底説得することはできないだろう。どころかこれが私に関係ないことなら手放しで応援していたであろうほどだ。ハッピとうちわも購入していたかもしれない。


「それで、あんたは?()()()はそういうの、ないの?」

「――――――。」


 私は彼女の強い視線を見つめ返す。口元に弧を描き、できる限り柔らかい表情を作り、諭すように言葉を発した。











「―――悪いが全くない。頭の片隅にもよぎらなかった。」

「っ!あんた―――」

「いや()()()()()()()()に多少の親切をしてやろう、くらいの気持ちはあるぞ?だが命や人生を掛けた選択においてそれらの価値の羽毛の様に軽い。」


 前世の言葉風に言うのであれば「残念!好感度が足りない!!」というところだろうか?いやまあ足りてても私は見捨てるような気がしないでもないが。とはいえそういう存在が居たのならこういう事態になる前にもう少しは動いたかもしれない。結局私はこの街にそこまでの想いはなかったのだ。だから崩壊の傾向が見えたとしても先延ばしにし続けた。―――いざとなれば捨てればいい、そう考えて。


「不満そうな表情だな。あるいは軽蔑か?仮にも姉という続柄だというのに悲しいことだ。だが本音で語るという場面だからなもう少し補足しようか。なぁ、フレリアちゃん。―――フレリアちゃんは何のために生きている?」

「何のために?」

「私の目的は楽しく、幸せに暮らすことだ。()()()()私はそのために生きている。だからこそ私は私を甘やかすし、私は私を肯定する。あるいは、もしかしたらここで残って戦えばもしかしたら勝つことはできるのかもしれない。けれどそれは私の幸せじゃない。危険で絶望的な戦いに身を落として死力を尽くす、というのは私の幸せではないのだ。……すでにこの街に私の幸せはなくなった。それが私が街を離れる理由だよ。」


 それに勝ったとしたら将来的には私がこの街の長になるのだろう。本音を言えば何が悲しくて、だ。そういうのは精々ストラテジーゲーム程度で十分なのだ。街のことを考えて、それを発展させるために様々な調整をし、多くの時間を仕事に費やす。お父様の仕事を(お小遣い欲しさに)時々手伝っていたからこそ分かる。こんなものは罰ゲームだ。権力と権威は手に入るのかもしれないが、個人の幸せは遠ざかっていく。私はそんな人生はごめんである。


「……あんたは無責任よ。」

「そうだな、そうだと思う。何故なら責任というものは自分を縛る鎖だからだ。そんなものは極力減らすに限る。そうしたとして全てを捨てきることはできないだろうがな。」

「自分勝手ね。」

「自分で自分を肯定してやらなければいったい誰が肯定すると言うんだ?」

「……あんたとは分かり合えそうにないわね。もうちょっとまともな奴だと思ってたんだけど。」

「あははっ、悲しいな。私は今回のことでフレリアちゃんのことがようやく分かってこれたというところなんだがなぁ。」


 大げさに手を広げて悲しみを表現しながら扉へと手を掛ける。彼女がこの街を捨てて逃げることもないし、私がこの街のために残ることもない。ゆえにこれ以上話してもしょうがない。時間があるんだったらお酒でも飲みながら隣でじっくりと話すのも楽しかったとは思うけれど、この先のタスクを考えるとそろそろ行かないと逃げ遅れてしまう可能性が出てくる。ああ、でも一応最後に一言くらいは言っておくべきだろうか。せっかくの妹なんだしな。


「ではな、フレリアちゃん。武運を祈ってる。またいつか逢える日を楽しみにしているよ。」

「……また逢えたらそん時は思いっきりぶん殴ってやるわ。」


 おっとそれは怖い。私はひらひらと後ろに手を振りながら部屋を後にした。フレリアちゃんと話せるのはこれが最後になるだろうと、そう思いながら……。

とりあえず今回は主人公のスタンスを描写できたはず……

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