光
ピピピピピピピ
アラームが鳴る。いつ寝たか覚えていないが、睡眠時間が短いことはなんとなく分かる。ふと、手首を見ると、昨日と変わっていなかった。なんだか嬉しかった。自分をコントロール出来たのかもしれないと思うと、すごく嬉しくなった。こんなこと、普通のことのはずなのに。こんなことで喜んでる自分は、イカれてる、そう思ったが、やはり顔がほころぶ。階段を降りて、朝御飯を食べ、塾の準備をした。今日はいつもとは違う気がする。すごく小さな変化だ。それが、すごく嬉しかった。
「おはようございます!」
「あ!おはよぉ」
紗由理がもう教室にいた。
「あれ?早くない?」
「いつも通りですぅ!なんか文句あるんですかぁぁ」
何気ないいつもの会話。なんだか、いつもより楽しい。
「なぁにニヤニヤしてんのぉ?早く勉強すっぞぉぉ」
紗由理に言われてはっとした。勉強しなきゃ、そう思い急いで席について、テキストを開いた。難しい問題は紗由理と一緒に考えて、授業までの時間、勉強した。
塾での勉強を終え、帰宅した。携帯を開くとメッセージが届いていた。見てみると、紗由理からのメッセージだった。
「今日、なんか良いことでもあった?まさか彼氏でもできた?」
紗由理にはバレていたみたいだ。少し微笑むと佳名は
「彼氏はできてませぇん笑」
と、返した。久しぶりに感じた光。なんだこれ、佳名はそう思った。明日も塾だ。予習を済ませ、寝る準備をした。
次の日、佳名は塾に行くと塾長の柊蓮に呼び止められた。
「佳名ちゃん、ちょっと良い?」
「はい?」
佳名は蓮について面談室に入った。なんだか胸騒ぎがした。
「佳名ちゃん、高校どうする?決まった?夏休み中にほとんど決めておくのも良いかなと思って聞いてみたんだけど…」
なんだ。その事か。佳名はほっとして
「決まってます!公立のH高校に行きたいです」
H高校は英語に力を入れている。英語が得意な佳名にはぴったりの高校だ。
「おぉ!頑張ってね!佳名ちゃんなら行けるかな」
良かった、そう思った。もしかしたら、変えなさいと言われるかと思っていたからだ。ほっとしていると蓮が
「もう1つ良いかな?変な意味じゃないんだけど、腕見せてくれない…かな?」
佳名はどきっとした。
「え?なんで…ですか?どうしたんですか、いきなり」
佳名は作り笑顔をしながら必死にどうすれば良いか考えた。そして佳名は利き手を蓮の前に出した。
(こっちの腕は傷なんて無いから、きっと大丈夫。)
「あ、そっちじゃ…なくて。反対の方なんだけど…」