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  作者: 朝霧柳
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未来に繋がる今

最近、自傷行為をしている人の数はかなり多いと聞きました。それで、このことをテーマに書いてみました。話全体が重くなってしまいますが、読んでいただけると嬉しいです。

「おはようございます!」

午前10時、足立佳名は元気に挨拶をして塾に入った。教室を見るとまだ誰も居ない。佳名は自習しに来た。だから、まだ先生以外は誰も居ない。佳名は席に着くとテキストを広げた。その時、窓から差し込む光に腕が照らされた。そこに浮かび上がったのは複数の傷。これは佳名自身が付けた傷だ。カッターナイフ、剃刀、鋏を使った。なんでこんなことをしたのか佳名にも分からない。もう消えることのない、癒えない傷だ。佳名はこの傷を隠すのに必死だ。夏場はとても暑いのにパーカーや長袖を着ている。隠すしか無いからだ。見つかってしまったら終わり。

「佳名?おーい!おはよぉ!おーい!起きてる?」

佳名ははっとして顔をあげた。すると、そこには佳名の友達の荒川紗由理が立っていた。

「はぁぁぁびっくりしたぁ、すごいぼーっとしてたよ?」

「えへへぇ実はまだちょっと眠くて」

紗由理は佳名の親友とも言える仲の良い友達だ。だが、佳名は何が親友かなんて分からないため紗由理が親友なのかどうか分からない。

佳名はいつから自傷行為をしているか自分自身でもはっきり覚えていない。腕を切っている時の記憶はあるのに、覚えていない。自分の事のはずなのに分からない…そんな自分が情けなくて大嫌いだった。自傷行為はいけない事だという事は分かっているつもりだったのに気付いたら腕や手首、脚に傷がある。もう何も分からなかった。自分でも気になって調べてもみた。二重人格や、精神疾患など調べたがやはりよく分からなかった。精神科に行って診察してもらおうかとも思ったが、精神科に行くには保護者の付き添いが必要だと知り、絶対に行けないと思った。だから、佳名は全てを隠していた。

しばらくすると、授業が始まった。数学、英語、国語、社会…授業を受け終えた頃にはくたくただった。

「ありがとうございましたー!」

佳名はそう挨拶をして塾を後にした。携帯を見ると午後4時になっていた。佳名は家に向かって歩き始めた。

「ただいまー!」

家に着いた佳名は、リビングのソファに倒れ込んだ。しばらくするとキッチンから母の

「ご飯だよー!」

という声が聞こえてきた。もうすぐ1日が終わる。そして夜が明ければ、また1日が始まる。その繰り返し。嫌という訳では無い。飽きた訳でも無い。ただ、自分で生きる意味を見出だせなくなっただけだ。きっとそれが自傷行為をしている理由だと、佳名は自分に言い聞かせていた。そうでもしなくては、気が狂いそうだった。

「佳名ー!ちょっと手伝ってー!」

「はぁぁい。」

面倒だと思いながらも佳名はキッチンに向かった。夕食の準備を手伝い、家族と夕食を食べ、お風呂に入り、明日の塾の予習を済ませた。そろそろ寝ようと思い、自分の部屋に入った。机の引き出しにはカッターナイフ。枕の下には剃刀。枕元にはティッシュがある。最近は出来るだけ切らないでおこうと思っているのだが、今日は疲れてしまったので切らないで寝られるか分からない。夜になると、気持ちが落ち込みすぐに切ってしまう。死にたいと言うよりは、生きていたくないという気持ちになる。なんとも言えないが、自分の存在自体が、邪魔臭くて、消えたくなる。けど、もしも、自分が死んだら後処理があるから迷惑でしかない。そう思うと、死ねない。

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