第一話
辺境にある小さな村、ポリメシアに僕達は暮らしてた。
僕には家族がいっぱい居る。
父さんと母さんは僕がうんと小さい時に病気になって
「遠いところに行ったんだよ」って、おじいちゃんに言われた。
だから血の繋がった家族はおじいちゃんとおばあちゃんだけだった。
でも他にも家族は居るんだ。血は繋がっていないけれどね。
僕が小さい時に皆を拾ってきたんだって。
拾ってきたってなんか変な話だよね。
こげ茶色の髪と目の、すっごく綺麗な女の子みたいな男の子のオーマ。
両親が居なくなって僕が村はずれで一人でいた時、遊んでくれた子なんだ。
オーマも両親が居なくて僕と一緒だったから
おじいちゃん達にお願いして、一緒に暮らせるようになったんだ。
オーマは凄いんだよ。何でも一人で出来るし、寒い冬にはお家をあったかくしてくれる。
魔法が使えるんだって!すっごいよね!!
あ、でもこれは秘密にしろって言われたっけ…?
二人目はリセ。
散歩してる時にリセと会ったんだ。初めて真っ黒な髪と赤銅色の眸を見たよ!
グズグズ泣いていたから、きっと迷子になってたんだね。大人の人でも独りぼっちは寂しいもんね。
僕も迷子になった時はオーマが迎えに来てくれるまで泣いてるし。
お家に連れ帰ったらオーマはすっごく怒ったけど、でもやっぱり優しいしから
リセが家出してきた理由を聞いて、一緒にリセがお家で暮らせるように、おじいちゃんにお願いしてくれたんだ。
リセはオロオロしてたけど、のんびりな生活は好きみたい。時々だけど
「はーはっはっは!ざまぁみろ!我がいなくなって存分に苦しむがいい!
いかに我が雑務に忙殺され何度自殺しようとした事かっ!貴様らも味わえ!!」
とか、すっごく遠い目をして空に向って叫ん出るんだよね。その時のリセには誰も近づかないよ。
三人目はエルオーネ。
銀色と青が混じったような色の髪と水色の眸をしてるんだ。
でもすっごいのは背中に小さな羽根が付いてるの!
これも髪の毛と同じ色なんだ!初めて見たときは女の人だと思ったけれど、男の人だった。
怖いおじさん達がエルオーネの服を破いちゃったから…
でも僕が「やめて」ってお願いしたら、怖いおじさん達は何処かへ消えちゃった。
顔は怖かったけど、案外いい人達だったのかな?
怪我の手当てをするためにお家に連れ帰ったら、おじいちゃん達がびっくりしてた。
オーマやリセは僕の頭を撫でてくれたけど…ま、怒られなくてよかった。
あとね、エルオーネって薬師さんなんだって。村の皆からも歓迎されてた。
四人目はゼロム。
うん。すっごくボロボロだったよ。しかも明るいところがダメみたいで
コケとか生えてた岩の間に挟まってた。お腹とかぱっくり割れて、びっくりしたし…
僕の散歩コースじゃなかったら死んじゃってたかもしれないよ、まったく。
急いでエルオーネを連れてきて、応急処置をした後、お家に連れ帰ったの。
人を助けたのに、オーマやリセは「ノスフェラート!?」とか叫んで怒ってた。
ヒドイよね、エルオーネの時は怒らなかったのに、コレって差別じゃない?
あ、ゼロムは二日くらい死んだように動かなかったけど、三日目にはちゃんと起きてきたよ。
五人目はヨルン。
大きな剣を背負ってたんだ。なんでも旅の途中で道に迷ってたらしくて…
僕が村まで案内したんだ。そしたらお礼に今までのたびのお話をしてくれたよ。
すっごく楽しかった!僕ポリメシア以外を知らないかさ。
オーマとリセはムスッとしてたけど、エルオーネは引き攣った顔してヨルンの相手をしてた。
ヨルンはエルオーネが好きみたい。「マイハニー!!」とか叫んで飛び掛ってた。
ゼロムは相変わらず昼間は部屋の隅っこで死んだように動かなかったけど
夜には活き活きしだして、ヨルンとお酒飲んでたっけ。
意気投合を果たしてから数ヶ月単位でポリメシアに遊びに来てくれる。
僕にとっては歳の離れたお兄ちゃんみたいな人なんだ。
毎年毎年家族が増えて、今もすっごく楽しいよ。
今年もきっと楽しい出逢いがあると思うんだよね。
だから今日も僕は散歩に出かける。勿論一人で。だって僕はもう10歳なんだから!
さぁ、緑の山々の中を風人のように翔けよう美しい水守が歌う湖を眺めに!