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第十五話

え〜っと…僕は何でここにいるんだろう?



僕はロウファとセインと一緒に川までお水を汲みに行って、それからエルオーネの知ってるおじさんに会って…

僕は邪魔しちゃいけないと思ったから、先にお家に帰ろうとして…

えっと、それから、それから―――


あ…

覚えてないや。


よし、ひとまず現状把握からだ!


周りを見回してみると木の箱とかある。

ちょっと薄暗いけど、森の中をよく散歩してる僕はこれくらいの暗さは平気。

もうちょっとよく目を凝らしてみよう…


あれって、お、檻?

なんだか奥の方に白くてもこもこしたものがもぞもぞしてる。

もしかしてロウファかな?


そう思ってロウファって名前を呼ぼうとしたら、口がごわごわ?してた。



「う〜!うーーうう、う〜!!」



あ、これさるぐつわっていうやつだ!

エルオーネやオーマがよくゼロムの口につけてたのだ!!

声が出せないようにするんだよね。地味にヒドイいじめだと思うよ僕は。


次に手足を動かそうとしたんだ。でも手が痛いかった。

えっと、なんか背中で腕が縛られてるみたい。っと…足も縛られてるし。



「ううううっうー!」



う…なんだか、ギチギチと締まっていく感じがする。

あんまり動かないほうがいいのかな?

でもずっとこのままっていうのはダメだよね。さっきの檻の中身も気になるし。




ガタンッ



「むぎゅ?!」



檻の傍まで転がっていこうか考えていたら、突然建物が揺れた。


え…この揺れは建物とかじゃない?


縛られている両足で軽く床を叩く。ぱこぱこと音が返ってきた。

うん。これってもしかして地面とくっついてない。

しかもずっと揺れたままだしカタコトと動いている音も聞こえたまま、馬車かな?

おじいちゃんの使ってる馬車よりも大きくて、広くて、じめっとしててヤな感じがする。


んーと。ゆっくりと転がってけば、あの檻のところまでいけるかな?


僕がうつ伏せに寝転がった時、シャッと音がして、あたりが白くなった。



「うっ?!」



め、目が痛い…急に光がはいってきたんだ。目の奥がひりひりする。

でも人が寄ってくる気配がするから、ここは意地でも目をあけておくべきだよね。

どんな人か気になるし。もし『悪いヒト』ならすぐに逃げなきゃ。

ただの『悪い人』ならオーマやリセがすぐに見つけてくれるけど、『悪いヒト』だったら食べられちゃうって言ってた。



「おー。起きたか坊主。なら丁度いい」


「?」


「しっかし、こんな平平凡凡な顔の坊主がなぁ」


「?―――う?」


「ま、いいか。暴れるなよ。脱がすのが面倒だからな」


「…?」



脱がすって、なに?

うっすらと目をあけて光の中の人を見上げる。

黒い髪で…顔は影になってて見えないけど、きっと、瞳も黒いんじゃないかな―――。



「いや〜。そうやって不思議そうに見られると、なけなしの良心が痛むんだけど」


「…???」



え、何でこの人近寄ってくるの?

何で両手をワキワキ動かしてるの?

あ、顔が見えた―――うん。普通の人だ。珍しい髪と目の色の普通の人だ。



「ははは。オレ様の美貌に言葉もないか?」


「ううん」



黒髪の人の言葉に、僕は首を横に振る。

だって、ねぇ。美貌ってほどの美貌なの?

エルオーネの方がキレイだ。ゼロムの方が印象に残るし。オーマは可愛い。リセの方がカッコいい。



「…まっこうから否定されたのは初めてだぜ、坊主」



なんだか悲しげに呟いてたけど、なんだろう?


僕は首を傾げて男の人を見上げた…ちょっと首が痛いかも。

反転して、あおむけになる。

うん。こっちの方が楽に男の人を見れるね。



「おいおい。ずいぶんと余裕だなぁ。つーかよ、背中痛くねぇのか?」



背中よりも首が痛くなってるんだけどなぁ…

さるぐつわをしているから唸ることしかできないけど。


もぞもぞと動いてみた。お腹に力を入れて勢いよく体を起してみよう!

いつもゼロムがやってるしね。きっと、多分、おそらく、僕にもできるはずだし。



「うっ!………っぇ」


「あ〜…今起してやるからな。そんな泣きそうな顔すんなよ。

 たまにはこう言う時もあるって。ああ、ほら。ついでに口のもとってやっから、な。泣くなよ」


「うぅぅ。どうして僕のお腹はぷにぷになんだろう。皆はお腹がぽこぽこ割れてるのに…」


「―――それはアレだアレ。お子様だから仕方ない。にしても、筋肉隆々な御仁達なんだな坊主の知り合いは」


「リセもオーマも筋肉なんてついてないよ。でも力を入れると聖剣くらい折れるって言ってた。

 ゼロムは簡単に刺さっちゃうから、刺さる前に叩き折るって言ってたなぁ。

 あ、そう言えばゼロムは筋肉ある方なのかなぁ?力持ちだし、グレイトウォーラー切り倒してたし」


「…あっれぇ?岩の大樹(グレイトウォーラー)って魔術でも切り倒せない木だよな?

 それともオレ様の聞き間違いか?今、なんか、たった一人が切り倒したように聞こえたんだけどよぉ」


「うん?そうだよ。リセのストレスが溜まって力が暴走しちゃったせいで、お家が半分壊れたから

 オーマがゼロムにグレイトウォーラーを持ってくるようにって言ってたよ。

 またリセがストレスためて暴れても、ちょっとやそっとじゃ壊れないようにしようねって。

 それから皆でお家を改築して、お部屋を増やしたんだ。ポリメシアに来たらすぐに分るよ!

 でも、お兄さんは何で僕を縛ってこんな馬車…でいいのかな、ここに乗せてるの?あと何で僕が服を脱ぐの?」



とんとんと会話が弾んでいく。

うん。

このお兄さんは『悪いヒト』じゃないね。でも『悪い人』だとは思う。

もしもいい人だったら僕のことを縛ったりしないはずだしね。



「さすが有翼人が住んでいた村だけあるな。そんな化け物までいたのか…」


「むっ。化け物なんてポリメシアにはいないよ!皆ちょっと力持ちだったり

 頭が良かったり、手先が器用だったり、珍しいのかな。でも、それだけだよ!」


「…なぁ、坊主。オレ様って珍しくね?」


「うん。僕、目が黒い人初めて見た」


「あんな、オレ様は実は魔族との混血児なんだよー。

 だからオレ様の髪も眼も闇色なんだぜぇ。どうよ、すごくね」


「へぇー。魔族って人より強くて何でも食べれちゃうヒト達だよね。

 でも黒い色がすごいのかはよく分からないなぁ。だってリセも黒い髪の毛だし」




あれ…そうするとリセも混血児ってことになるのかな?

だってリセの目の色は真赤―――鉄を焼いた時の色みたいな目だったけど、どうなんだろう?


う〜ん。でもリセは僕達と一緒に暮らす前はお城にいたんだし。

偉い人の子供だったんだよね…



「マジで…?」




お兄さんがびっくりしてる。



「何でおどろいてるの?」


「いや、だってなぁ…あー。どうして坊主がこんなに余裕なのか分かった気がした」


「?」




「魔族が近くにいたからオレ様のことを怖がってないんだろう。

 でもなぁ有翼人の坊主、よく聞け。オレ様はジュードだ。

 『漆黒の爪牙』って呼ばれてる、半人半獣の盗賊ジュードだ―――」





えーっと…僕はただの農民なんだけどなぁ。


間違ってるよね。絶対に勘違いしてるよね、この人。

有翼人ってエルオーネのことだよね。

じゃぁ、この人は僕とエルオーネを間違えて、僕をここに連れてきたのかな?


ああ、だからさっき服を脱がそうとしたんだ。背中に羽があるかどうか、確かめたかたんだね。

僕とエルオーネは全然似てないのに。





「盗賊の人なんだね、うん。ジュードさんでいいの?」





そういったら、なんでかジュードさんはぽかんと口を開いてた。


なんで?

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