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第十二話

魔術師がポリメシアに訪れ、そして去ってからまた月日が流れた。


僕がツラッティに襲われて大泣きしたのも、もう昔になりつつある。

うん。今思えばすごく恥ずかしいよ。

僕が大泣きして眠ってから暫くはリセと会わなかった。

何だか落ち込んでるみたいで、エルオーネやゼロムに聞いても「放置しろ」って言われた。

珍しくオーマとミルギスも頷きあってたし。何があったんだろう?


まぁ、兎も角。ツラッティはリセたちが退治して被害は出なかったんだ。



ミルギスは一人でお座りができて、はいはいして行動範囲を広げていく。

最近は悪戯も覚えてきて、その被害はゼロムが中心になっている。

うん。

ゼロムが家の屋根の上まで、ミルギスに吹っ飛ばされた時は僕も驚いたよ。

ミルギスは、はいはいだけじゃなくて、ふよふよと自分でも空中に浮く事が出来るみたい。

初めて見たときは、おばあちゃんと一緒に驚いて必死に下そうとしたんだよ。

ほら、落ちたら大変だからさ…でもリセに問題ないって言われてからほっといてる。

むしろどんどん力を使わせておかないと、暴走するからなんだって。


オーマは相変わらずミルギスの面倒は見ないで、村の子供達に勉強を教えてたりする。

僕もオーマに勉強を見てもらっている一人だ。勉強の内容は様々。

文字とか、旅をする際に気をつけるべき魔獣や魔物についてとか…

本当にオーマは色んな事を知っている。

同い年には見えないよ…

オーマが教えるのは勉強だけじゃない。

壊れたものを修理したり、その修理の仕方を村の大人達に教えたり。

土木作業に従事したり…おおよそ外見とは似合わない事をしてるってエルオーネが言ってた。


うん。オーマは女の子みたいな顔で、体格もスラっとしてるしね。

…僕も人の事はいえないけど、でもちゃんと僕もオーマも男の子だから!


そして最近すっごいことがあった。

なんとリセが騎獣を何処からか連れてきたの!

騎獣って言うのは馬よりも早くて、牛よりも力があって…兎も角!

農作業や放牧を主体とする村にはいないんだ。

大きな街や主要都市のお金持ちの人が飼ってるらしいよ。オーマが言ってた。


そういえば、リセは昔お城に住んでたっていってたよね。

周りの事も召使がやってたらしいし…わざわざ実家に帰って連れてきたのかなぁ?


因みに騎獣は全部で七匹いるんだ。

三匹は馬と似てる。でも毛皮じゃなくて、全身が鱗で覆われてるの。

えーと。スケィル・ヒップスって言われる種族なんだって。

本当なら馬が四匹で引いていく大きな荷馬車を、たった一匹で引いていく事ができるんだよ!

額には真っ赤な石が埋まってて、すごくキレイ。紅玉って言うんだって。


あと三匹は、犬っぽいの。アヌビスっていう種族なんだって。

茶色のサラサラの毛皮で、体は牛くらい大きいよ。

初めて見た時は食べられそうで怖かったけど、すごく温厚なんだって!

でも、もっと凄いのは歩けるの!二足歩行が可能だってオーマが言ってた!!

大きな体の割りに細かい作業も出来るんだ。木にも登れるし、見た目ほど重いわけじゃないんだよ!

僕も一度抱っこしてもらった。

ふふふ。ゼロムよりも大きくなれたよ!


最後の一匹は犬っぽいの。セイリオスって言う種族なんだって。

アヌビスとは違う真っ黒でふっわふわの毛、もふもふしてて肌触りがいいの。

すごく珍しい種族で、空も飛べるんだって!

一度空を飛んでるところを見せてもらったよ。

普段は翼なんて無いのに、空を飛ぶときだけ、ミシミシと翼が出てくるの!

背中に鞍をつけたら、人を乗っけて飛べるんだって!


ゼロムは驚いてたし、エルオーネはセイリオスを見て「ロウファと同じだ」って言ってた。

あ、ロウファって言うのはエルオーネの二番目の相棒で、ふっわふわでもふもふの毛が特徴の大きな犬だよ。


オーマは驚くよりも呆れてたかも…

珍しい騎獣ばかりで、大丈夫なのかってリセに言ってた。

オーマは何が不安なのかな?



◆    ◆    ◆


朝食の準備を手伝うためにおばあちゃんの所へ行けば、おばあちゃんは何でか困ってた。

どうしたんだろう?

ミルギスは昨日ずっとゼロムが面倒を見てたから、今日はお昼までぐっすり眠ってるはずだし。

ゼロムも疲れてるから、多分、朝食ギリギリまで起きてこないだろうし…

リセはおじいちゃんや村の人達に騎獣の世話とか好みを教えてるから今は居ないし。



「坊や。川でお水を汲んできてくれないかい。井戸の水が枯れたのか、なくなってね。

 村の真ん中に噴水があるからいざとなればその水を使うけれど…全員がいっぺんに汲みにいくとなるとね」


「え?なくなっちゃったの?!どうしてだろう?…うん。判った。

 川まで行って来るね。そうだ!オーマは…今は居ないんだっけ?」



そういえばオーマ、朝起きて、薪を取りに行った時ルストーに連れてかれちゃったんだ。

朝食ルストーのお家で食べてくるのかなぁ?

あ、ルストーは僕よりも三つ年上の男の子で、魔王を倒す剣を作るのが夢なんだって!

だからオーマから物造り…鍛冶屋になる為の修行を付けてもらってるって言ってた。

鍛冶屋って武器を作ったりお鍋作ったり、何でも出来る人のことだってゼロムが言ってたよ。

…今度、僕専用のナイフ作ってもらおうかな。

あの時のツラッティみたいに襲われないとも限らないし、お散歩する時もしもの為に…。

うん。相談してみようっと。

っと、話がズレちゃった。水といえばエルオーネだよね!


「おばあちゃん。エルオーネに井戸の事を調べてもらおうよ」


「エルオーネに?あの子は薬師だから井戸とか調べても…」


「大丈夫だよ。僕、呼んでくるね!」


エルオーネは有翼人と水の精霊のハーフなんだよ。

水に関する事柄は色々と知っているって言うし、お願いしても平気だよね!

僕は地下室への階段を一つ跳ばして駆け下りた。そして勢いよく地下室の扉を開ける。



「おはようエルオーネ!お願いがあるんだ!!」


「あ…ちっさい勇者さん。頼むから地下室の扉は静かに開けてくれ。

 一応薬草だけじゃなくて、液体の薬も置いてあるし割れ物もあるんだ」


「ご、ごめんなさい」


「それで?俺にいったい何の用かな?

 まさかカンザじいさんが発作起こして、ぽっくり逝ったとか言うなよ?」


「カンザじいちゃんはおじいちゃんと一緒にリセから騎獣のお世話についてお話してたよ」


「朝から騎獣って―――ああ。リセが連れて来たヤツか。

 確か戦馬と言う軍名のある鱗馬(スケィル・ヒップス)と比較的人間に寛容な魔獣の護猟犬(アヌビス)…」


「そう!後はセイリオス!ロウファと同じなんでしょ?」


天狼族(セイリオス)…まぁ、な。ちょっと違うけど」


「毛の色が違うだけで同じじゃないの?」


「平たく言えば天狼族(セイリオス)の白狼は防御に特化してるんだ。

 で、天狼族(セイリオス)の黒狼は攻撃に特化している。どちらも有翼人を護るためにな」


「え、護るって何から?」


「気にするな。白と黒で得意な事が違うって事でいいだろう。

 で、俺にいったい何のようだ?わざわざ朝食前に此処に来るなんて」


「あ!あのね、井戸の水がなくなっちゃったらしくて。ちょっと見てほしいんっだ!」


「井戸の水が、なくなっただと?」


「うん。オーマはルストーに連れてかれっちゃっていないし。

 僕はこれから川までお水汲みに行ってきます!朝食はそれからなの」


「判った。引き受けよう。ほら、早くしないと」


「うん。じゃぁよろしくね!」



今度はそっと扉を開けて階段を上げって行く。

ドタバタしたら、またエルオーネに怒られちゃうからね。




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