表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/31

第九話

僕はシャシャイの刈り取った毛を軽く火で炙る。

シャシャイの毛は火に当てると、ふわんと膨らんで倍の大きさになる。

ささっと炙ってから、シュルシュルと一本ずつ毛を抜いていく。


シャシャイの毛は温かくなると、毛と毛の間に空気が入って軽くなるんだ。

だから糸を紡ぐ前はこうして毛を取りやすくしなくちゃいけない。

でも火は熱いから、火傷をしないように気をつけなくちゃいけないんだ。



「ゼロム、こっち終った!」


「こっちも終っとるぞ。しあし今年は質がいいな」


「あ、やっぱり?何か手触りがいいんだよね。今年の。さ、おばあちゃんの所に持っていこう」


「ああ。しかし、シャシャイには別に変った事などしとらんのにな」


「そういえば、リセが何回かお世話してたかも。珍しかったなぁ」


「…原因それっぽいな」



リセは殆どおじいちゃんの手伝いで畑を耕したり、チーズやミルクを隣の村に運んだりしている。

隣の村と言っても、早馬で4日はかかるから、そういった体力仕事は本当は若い人がやるんだ。

でも僕はまだ子供過ぎるからおじいちゃんの手伝いは出来ない。代わりにリセが手伝ってくれている。

長旅は疲れちゃうのに今年は何回か、僕と一緒にシャシャイの世話を手伝ってくれた。

あれかな?

僕がリセに、シャシャイの世話が上手くできないっていったからかな?

そういえば、リセってばシャシャイのご飯に何か混ぜてたなぁ…

まぁ栄養剤とかかな。エルオーネが協力してくれたからかも。


僕とゼロムは一緒におばあちゃんが糸を紡いでいる工房にシャシャイの毛を運んだ。

ゼロムは何かを考えているみたいだったけど…どうしたんだろう?

まぁいいか。



おばあちゃんにシャシャイの毛を届け終わって、僕とゼロムは家に帰る途中オーマに会った。

オーマも丁度終ったのかな。

よし。コレでお昼を作ってくれる人をゲットだ!


あのね、ボクもご飯作れるけど。オーマやゼロムのお料理はすっごく美味しいんだ。

おばあちゃんもすっごく二人を褒めてた。

リセは微妙かな…なんか昔はお城に住んでて、周りの事は全て召使がやってたらしいからね。

エルオーネのはおいしいって言うか、草っぽい味がするんだよね。

食べれないわけじゃないけど…うん。ともかく、二人のご飯は美味しいんだよ。



「あ、おチビちゃん」


「オーマ!噴水造りは終ったの?」


「うん。ボクの手にかかればあんなの簡単だよ。ほら」


「オーマ…あれはやり過ぎではないか―――天辺に一角獣のオブジェとは」



村の真ん中に円い容の噴水が出来上がっていた。

三段重ねになってるみたいで、噴水の腰掛ける部分には花のオブジェが作られていた。

二段目は木の実と鳥のオブジェが、三段目はゼロムが言っていた一角獣があった。

相変わらずオーマはすごいなぁ。一日で作っちゃうんだもの。


一角獣…えっと、「けがれなき清らかな乙女」の所に現れる神様の獣だっけ?

へー。馬とあんまり変らないんだ。頭に角が生えてるけど、あれって邪魔にならないのかな。

ま、神様の獣だから何とでもなるのかも。



「別にいいでしょ。迷惑かけている訳じゃないんだから。

 ところで、さっき他の人達が騒いでたけど、いったい何があったの?」


「ああ、捨て置けあんなの」


「珍しい―――ゼロムが邪険にするなんて」


「魔術師って人が来てるんだよ」


「はぁ?魔術師ぃ?こんな辺境の村に?わざわざ何の為に?」


「えっと、ツラッティが凶暴化してて、しかも魔術じゃないと退治できないって…」


「ツラッティって…魔術師が失敗して放置した出来損ないの使い魔のこと?

 出来損ないでも、製作者の魔術師以上の力の持ち主じゃなきゃ殺せないヤツだね。

 でも、どのみちポリメシアにツラッティが出たって、ボクやリセいるし問題ないよ」


「ふ〜ん。でもウラド市って所で大暴れして大変だったんだって。

 だからこっちにも被害が出ないように魔術師の人が一応来たんじゃないかな?」


「被害が出ないようにねぇ…ゼロムはどう思う?」


「―――大方、ウラド市を塒にしとる魔術師が使い魔作りに失敗したんだろう。

 市街で暴れた挙句、捕獲できずに此処まで野放しにしてきた。

 魔術師が己の使い魔、しかも出来損ないに逃げられたとあっては面目丸潰れだ。

 あわよくば、ウラド市から離れた辺境の村で始末がてら隠蔽工作でもしにきたんじゃないか?」


「ポリメシアはうってつけだものねぇ。近くに森の彼方の国(エルデーエルヴェ)あるし」


「ふ、二人とも、どうしたの。そんないんぺいって?」


「「君(お前)は気にしなくていい」」



な、なんかオーマは目が笑ってないよ。

ゼロムも眉間にしわ寄せてるし…ど、どうなっちゃうんだろう?


そんな僕を見て、二人は頷きあった。

なんか、僕だけのけ者にされてる気がする…



「オーマも魔術師がキライなの?」


「ボクは―――割と好きかも。我欲の亡者(まじゅつし)はいい味だすし」


「???」


「オーマ…この村で問題起こすでないぞ」


「判ってるさ。でも久々にああいうの食べたいんだよねぇ」


「オーマはお腹すいてるの?じゃぁ、早くお家帰ろうよ!」



久しぶりだなぁオーマがお腹すいたって言うの。

あんまり珍しかったし、オーマのお願いもあって僕達の話はそこでお終い。

三人でお家に戻ってお昼の準備をした。

それと同じ頃に、エルオーネとミルギスも戻って来てから丁度いいね!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ