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ダンジョンの管理人さん  作者: 鱶山ぱかお
初心者用ダンジョン編
6/7

【6】適性診断

其処は迷宮ダンジョンの最奥に位置する、岩肌に囲まれ、凸部に宝箱が配置された空洞。


迷宮ダンジョン最終到着地点ゴールを意味する其処は、あの、スライムが、血肉を削り、冒険者達と死闘を繰り広げる戦地である。


その戦地で管理人と従業員モンスター達は適性診断をしていた。


無論、女子高生の適性診断である。


具体的には、筋力、持続力、瞬発力、柔軟性、心肺機能、反射神経等の身体的基礎能力を始め、魔力量の測定、六属性の得意性、耐性等を診断すると言うもの。


現時点、ここまで女子高生の数値は、魔物モンスターの中でも、否、あのスライムと比較しても、劣等と言わぜるを得ない。


エルは思う。これではまるで”人間”である。


黒色の履歴書に抱いた淡い期待は脆くも砕け、悩みの種が芽を出す。一階層三フロアの迷宮ダンジョンで、どう配置するか。


何時いつまでこの戯れ事を続けるつもりじゃ。妾は暗黒界の王、最奥に君臨し、闇に受け継がれし禁忌魔法”大髑髏ブラック吐息アウト”にて、有象無象を一網打尽にしてくれようぞ」


岩肌に減り込む程に重い、それは重い溜め息を吐き捨てる。魔力量が無に等しい事は測定済みである。


その大層な魔法も、もはや言霊。ただの言葉である。


そしてエルが最終診断の模擬戦に差し掛かろうとした時だった。突然通信魔法がエルに干渉し、冒険者の出現を報せる。


「各自配置に着いてくれ」


エルはそれだけを言うと無詠唱の空間転移魔法で管理人室に移る。


古い地図マップを酒樽に広げ、従業員モンスターが持ち場に居る事を確認する…───が、最奥のフロアにてまだ女子高生が留まっていた。


耳たぶに指を添え、通信魔法を展開する。


「女子高生、これは模擬戦じゃない、実戦だ。適性診断の結果、君にはまだ荷が重い」


「二度も言わすな。一網打尽にしてくれるわ」


「いいから戻…────」


エルの言葉を拒絶するかの様に、通信魔法が干渉破棄される。


可笑しい。魔力が無に等しい魔物モンスターが、いや、仮に膨大量の魔力を備えていたとて、此の様な高等技術をこうも容易く扱えるものだろうか。


”黒色の履歴書は前列がない”…───。


エルは唇を紡ぎ、再び地図マップに視線を落とす。


《Sword》《Magician》の所在がインクで記された古紙。二つの点は凸凹の外線の間を進み、やがてゴブリンAと遭遇する。が、見せ場も無く撃退される。


「僕から離れないで、ゴブリン・ビアンカ」


「あなたから離れないわ、ゴブリン・カール」


未だ暗号名コードネームに反旗を翻すゴブリンBとCは、語感の良さを模索中の様だ。


程なくして、呆気無く撃退されるビアンカとカール。


あとは迷宮ダンジョンの最奥、スライムと女子高生が待ち構える最終到着地点ゴールを残すのみである。


そして《Sword》《Magician》の二人は、ついにそこに辿り着く。


岩肌の空洞。松明たいまつが揺らぐ其処に、宝箱に鎮座する者一人。


その者は艶のある黒髪を背中まで垂らし、直線的な前髪から覗く勝気な瞳が二人を捉えている。


足元には、凹状のスライム。


「に、人間…?」


思わず漏れた言葉に、それは嗤う。


「妾が人間とな。片腹痛いわ。妾は暗黒界の王、ライヴ・アルドメドゥーラ・キラⅨ世」


「暗黒界の王…!」


「ふふふ、畏れるがよい」


「聞いた事もない…!」


無礼に剥くれる女子高生が指を一本立てる。


それが号令と成りスライムが突進するも、剣士の一振りによりその軟体は一刀両断される。


「プギュッ」と声は消える。眼前の刃、眼前の敗北、眼前の死。


「まあ、いいや。魔物モンスター魔物モンスターだし、あんたも斬るか」


血の気が引いてゆくのを感じる。


突如、女子高生は蹲り、右の眼帯アイパッチを押さえた。


「ぐ…っ、疼きよるわい…、右目に宿う邪竜が…、不本意じゃが、ここは一旦…───」


女子高生の額に汗が滲む。刹那、剣士は一瞬にして距離を詰め、剣が地面を裂いた。


避けたのではない。腰を抜かす、言わば運。


「ねえ、今”引こう”としたよね。駄目じゃない。魔物モンスターなんだから、宝箱を守らないとさ」

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