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旧教室棟にて

作者: 葵枝燕
掲載日:2016/04/18

 こんにちは、葵枝燕です。

 この作品は、本日、二〇一六年四月十八日(月)に体験したことを、小説風に書いてみたいと思っただけの作品です。エッセイみたいなものかもしれませんが、書き方とかよくわからなかったので小説みたいにしてみました。

 それでは、どうぞご覧くださいませ。

 薄暗い建物内には、至るところに木片やら金具やらが転がっている。

「すっごい」

 ()()は、思わずそう呟いていた。

 ここは、とある大学のとある教室棟。もっとも、今日から取り壊し作業が始まっている場所である。新しい教室棟が出来たため、古いこの建物は解体されることになったのだ。二年間、様々な講義で使ったことを考えると、紗由は少し寂しい気持ちになった。

(確か、推薦入試の面接会場って、この建物だったかも。(おぼ)えてないけど)

 昨日のことさえ満足に思い出せない紗由に、三年も前のことが思い出せるわけがなかった。それでも、確かにこの建物のどこかで、推薦入試の面接を受けたのだ。

 そんな建物が、七月になる頃には跡形もなく消えているのかと思うと、やはり寂しい気持ちになる。

(それにしても……)

 紗由は、天井を見上げた。蛍光灯は外されている。ここに来るまで、時折頭上を見てみたが、蛍光灯はほぼ全てが外されていた。取り付けられたままの物もあったが、明かりは点いていなかった。

(廃墟みたいだ)

 日は落ちかけ、その上外は曇り空だった。僅かな日光が窓から射し込むだけの空間。先週まで、講義で使ったり、別の教室棟に行くために通り抜けたり――そんなことのために使っていたなんて信じられないと、紗由は感じた。

(ここに入るのも、きっと今日が最後だよね)

 鞄から、携帯電話を取り出す。電源ボタンの上にある、カメラの絵が描かれたボタンを押した。

 薄暗い室内では、満足いく写真なんて撮れないとわかっていた。それ以上に、画質が良いとはいえない機種だった。

 それでも、紗由はこの場所を撮りたかった。

 目に入った教室は、一度も使ったことのない教室だった。紗由はその教室内に、カメラを向けた。

(もう二度と)

 入学する前から今まで、幾度となく足を踏み入れた旧教室棟。それはもう、学生の、教職員の、音を響かせることはないだろう。

 紗由は画面を覗き込んだ。薄暗い室内に、雑に置かれた机や椅子、それに、木屑や綿(わた)(ぼこり)が散乱している。

 紗由はそっと、その風景を切り取った。

 『旧教室棟にて』、読んでいただきありがとうございました。

 前書きでも書きましたが、本日ある講義の一環で、解体工事の始まった旧教室棟に入ってきました。考えてみたら、入試面接の会場だったり、資格科目のオリエンテーションの会場だったり、就職活動のセミナー会場だったり――講義以外でもお世話になった場所でした。印刷室やATMもこの教室棟にありましたし、別の教室棟が出来たとはいえ寂しくなります。そんな気持ちを、忘れたくなかったのかもしれません。

 思い付きで書いた本作ですが、何かが伝わればと思っています。

 読んでいただき、本当にありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「そこにあったもの」がなくなってしまうと物寂しい気持ちになりますよね。 幸いにして私の学び舎は今でも存在していますが、たとえば、仲のいい友達と一緒に遊んだ公園や、下校途中に眺めた馬の放牧場…
2019/02/06 12:13 退会済み
管理
[一言] もう解散してしまいましたが、大好きなバンドの歌詞を思い出しました。 条件的にも機能的にも保存目的とは言えない撮影…… それでもシャッターを押したのは記録ではなく記憶に残すための儀式だったので…
2017/05/28 01:16 退会済み
管理
[一言] 自分の勘違いからホラー系物でも始まるのかとビクビクしながら読ませていただきました。(笑) 昔は新館だった建物も時が経ち旧館となり取り壊されるそんな日々の移り変わり、旧館も取り壊されるその日…
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