3.ピヨッ
ひよこかぁ。
つまり鶏。
・・なんでやねん。
どうしてこうなった。
誰か説明ぷりーず。
・・はぁ。
とりあえず、だ。
夢にしてはリアル過ぎる。
現実なのだと受け入れてみよう。
その上でまず思いつくのが転生の可能性という辺り、俺も末期な気がする。
だけどなー。
他に思いつかないしなー。
まぁ、暫定的に転生したことにしておこう。
そうすると、だ。
俺、死んだってこと?
後悔しかないんですけど。
白井嘉章26歳。
二流私立大卒、暗黒と言って差し支えのない生産設備メーカーに就職。
就職後一年で彼女に捨てられ、以降は社畜として修羅場という名の日常生活に身を投じる。
それで終わりですか?
・・そう考えると猛然と腹が立ってきたな。
おい、神!
ちょっと出てこいや!
普通転生する時は出てきて説明とか謝罪とかあるんじゃねーのか!?
あん?
転生モノの読み過ぎ?
ほっとけ!
・・まぁ出てくる訳ないよね。
いいよ、そんなご都合展開は期待してなかったし。
しかし、鶏ですか。
働かなくていいと考えると、まぁ幸せなのかね?
何年くらい生きるんだろ?10年くらい?
まぁのんびりしますかね。
そういえば。
ここって日本?異世界?
どうなんだい?マイマザー。
マイマザーだよね?
ダメだ。首傾げながら真顔で見つめてるよ。
コミュニケーションは出来なさそうだ。
とりあえず小屋があるんだから人型の生物はいるんだろう。
農具らしきモノに金属も使われている。
最低でも中世ヨーロッパ程度の文明はあるとみていいんじゃないかな?
まだ現代日本の可能性も残していいかな。
ぶっちゃけ小屋の中で判断できるような知識は持ち合わせていない。
つか明るくなってきたのと、周囲を見回してみて気づいたんだが。マイマザーの向こうにいるのはマイファザーではなかろうか。
よろしくっ「ピヨッ」
よろしくと言ったつもりがピヨっと発音してしまった。
ちょっと恥ずかしい。
早くこの感覚に慣れねば。
両親は揃って真顔でコッコッと呟いている。
やはりコミュニケーションは諦めよう。
つーか目が合うとちょっと怖い。
改めて考察に戻ろう。
足元の土の粒、巣であろう藁?、両親、小屋や道具の大きさ。
比較するに記憶にある普通の大きさなのだと思う。
ひよこ視点なので色々と怪しいが。
ぶっちゃけ全部巨大にしか見えん。
うん、日本か外国か異世界かは判断つかないが、人間or人間に近い種族に飼われていることは間違いなさそうだ。
お?
パパンが立ち上がってウロつき始めたぞ?
ママンもなんかモゾモゾしてる。
あ!
ママンの下に卵が見えた気がする!
マイブラザーなのか!?
マイブラザーなんだな!?
おおお、前世は一人っ子だったからなぁ。
夢が膨らむなぁ。
何しようか。
孵ったら刷り込みさせてー。
後をついてくるひよこをー。
ん?
刷り込み?
俺は?
してるの?
うーん。
多分・・ママンだろうな。
超びびった割に感じた妙な安心感・・あれが刷り込みだったのかな?
そんな気もする。
まぁ、なんでもいいか。
色々考えてるうちに結構明るくなってきたな。
飼主?が農家的な生活をしていればそろそろ起きていてもおかしくないかな?
日本であれば、だけど。
あ!
そういえば照明っぽいものがない!
うわー現代の確率は低そうだなー。
ん?
鶏にとっちゃ文明度なんかどうでもいいか。
飼主が乱暴かどうかとかの方が大事な問題な気がする。
どんな飼主なんでしょうねー。
ちょっと緊張してきたかな?
お?
噂をすれば・・これ、人の足音じゃないの?