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 本当だったらサヤには毎日働いてもらいたいけど、学校に行かせている関係もあり、金曜の夜から日曜までで暇な時に来てもらっている。ただ、平日でも時間を見て来てくれるので助かっていた。

 だが、私には懸念があった。

 愛情度のくだりだ。

 数々の美男子をおとしていき、最終的にはホニャララして篭絡する天然悪女のサヤだ。いままでミレディルートが無かったとしても、一人歩きした世界の中ではそんなもの関係なくなっているはずだ。乙女ゲーの中には百合ルートが存在するものもある。

 間違いない……狙われている……。

 待て待て……ガチ百合だけではなくて、女の子同士の友情ルートもあるはずだ。そっちだと願いたい……。

「ミレディさまっ! 新しいデザインできました」

 サヤが紙に描いた絵を見せてきて、私の反応を花が咲く前の期待感のある笑顔で待っていた。

 て、て、天使が現れたー!

「良いデザインね。さっそくアルスに見せてくるわ」

「ミレディさまに喜んでいただけて嬉しいです」

 太陽のように笑顔が輝いた。

 眩しくて直視が出来ない!

 私の汚れた心に染み渡る……く、くそっ……眼が、眼がー!

「いつもありがとうね。サヤ」

 また、笑っている。



 あー、ちょーかわいいー。

 妹に欲しかったー。



 アルスの仕事場に行くと、あらたにかき集めた人材がいた。ただし、アルスの独断と偏見で集めたので偏りがあった。

 全員、女奴隷でウェアキャットだった。

 アルスは執事服、雌猫たちはメイド服、それぞれ仕事着の上にエプロンをつけて作業をしている。一応服屋兼貴族なのでメイド服には気を使った。ゲームでは再現されていないので、現実にあった習慣を再現した。まず午前と午後で服を替え、午前中は赤薔薇の模様の入ったコットンのドレス、午後からは蒼ざめたドレスとした。キャップはレースを主体とした飾りとして、普通ならキャップで階級の差をつけるのだろうけど、そこには眼をつむって同一のものとした。

 雌猫たちを雇って、しばらくして周囲の家から反響があった。メイド服が可愛いと注文が殺到したため、最近やっとお金にも余裕が出て来ていた。結果オーライと言いたいけど、私の採用方針は「ただしイケメンに限る」だったんだけどなー。問題は雌猫たちが意外と可愛いという事だ。私もたまに喉を撫でてゴロゴロさせて癒されているけど、どう考えてもアルスの趣味で集めたよね? と言う感じだ。

「はい、新しいデザイン」

「ほー、相変わらず美しい模様ですね」

 アルスの執事服は燕尾服で黒ネクタイだった。紳士とした雰囲気の銀色の美少年だけど、採用基準は欲にまみれたものだった。

「ところで、あの計画はどうしますか?」

 あの計画というのはロココのことだ。服のデザインにも女性的な装飾を施しているけど、ロココの特徴は家の内装にもあった。そう、内装だ。

 ここに金目のものが何もない館が存在する。

 私の計画は館の一部分をロココ化して、館を一般に開放することでいろんな人に見てもらおうと言う計画だった。庶民は貴族の暮らしぶりを知らないだろうし、新興の服屋がどのように仕事をしているか見てみたいだろう。そう言うのを見てきたついでに、今まで見たことの無い内装を見ることになる。

 あーカッコイー、お母さん、欲しいよー欲しいよー作戦だ。

 ただロココの特徴として高価な鏡が多用されているので、まだ館の一部分しか内装は完成していなかった。もう少し儲けて内装を整えてから公開しようと思っていた。

「そうですか。となると、しばらくはこのまま仕事を続けていればいいですか?」

「うーん、そうね。ただ、週末に行きたいところがあるのよね」



 その週末がやってきた。

「君の瞳に乾杯」

 ……キルヒアイスの野郎が、何故ここにいる?

 私はアルスとサヤを連れて館の外へ出ると、久し振りの登場のキルヒアイスがいた。元婚約者前で、ワインを片手にサヤに向って口説いていた。色々と言いたいことはあるが、まずは映画カサブランカの名言をパクっているのに腹が立った。お前のような軟弱者にあの台詞を語る資格は無い、あの言葉を言っていいのはおとこの中のおとこだけだ。

「こ、困ります。ここまで来られては」

「何を言うか。俺の愛は止まることを知らない」

 元婚約者の前でも止まれないのか、恥を知らない男キルヒアイスよ。

「せっかくの休みなのだから、俺と一緒にテニスを」

 ちなみにスポーツとしてテニスがあります。

「嫌です! 私はミレディ様と行くの! 離して!」

 見たか、愛情度10よ。これが80の実力だ。

「俺は黄薔薇の貴族だ。将来的には君も貴族に……」

「そんなの嘘です。騙されません」

 キルヒアイスルートは中途半端にクリアすると愛人ルートになるから的を射ていた。中世では結婚していても愛人をつくることは暗黙で認められていた。それはそれで幸せかもしれないけど、現代で生きる我々女の子は結婚に真実の愛を見出したいので、却下。

「なぜ信じてくれないんだ?」

 それは、愛情度が10だからだよ、キルヒアイス。

「離れてください!」

「嫌だ。この手を離さないぞ!」

 ……芝居がかってうざいな……。

「面倒だから行こうか、アルス」

「そうですね。お嬢様」

 私とアルスは早足になった。

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