6 イベントリバッグ? いいえ クッキーポケットです。
ガタン ガタン カタ カタ シャー!シャー!
ダタン ダタン カタ カタ シャー!シャー!
ガタン ガタン カタ カタ シャー!シャー!
同じ感覚でリズムよく機織の音が室内で聞こえる。
普通の機織であるなら糸繊維がそこで織りこまれていくのだが、その機織で織り込まれているのは眼に見えない糸である。その糸はとても細く丈夫で完成した布はキラキラと光り、うっすらと向こう側が透けている。
魔蟲「シャーカイコ」という蟲が作り出した糸で作成した布、それが今黄金髪の少女の手によって機織りの音とともに完成されていく。ガタン カタン カタ カタ 一定の音が小さな部屋で鳴る。
その音で織られている布の糸材料の「シャーカイコ」はダンジョンの奥深くに生息し、臆病であまり冒険者の前に立ち向かってこず、逃げられてしまうのだ。さらに糸を出すのはシャーカイコの巣つくりをするときと、敵から身を守るときだけなのだ。
シャーカイコの糸は希少品で値段がとても高いのだが、それだけが理由ではなく、魔法具イベントリバッグの主要材料になる為さらに高値がついているのである。
魔法具「イベントリバッグ」とは大量に物資を持ち運べる道具。
高値く貴重品、大貴族や大冒険家が持っていることが多く、基本一般に出回ることはほとんどない、
たまに粗悪品で、あまり持ち運べないバッグを騙されて買う貴族もいる。
「ああ~ 肩がちょっと張ったわね・・・」
う~ん と、間の抜けた台詞をいいながら背伸びし、近くに置いてあったカップから水を飲みながら少女は糸の束を手にする。
最後の一束を手に持ち機織り機にセットしてゆく、
「最後の糸ね、まだまだ足りないわね。」
その数日後 黄金色の髪を編みこみして、後ろで一つに結った少女がある魔洞窟入り口に背中に背負った籠の中に一杯の葉っぱを入れて手にはランタンを持ち、洞窟に迷いを一切持たずに入っていった。
少女は洞窟の一番奥まで到達した後、気配抹消して背に背負っていた大量の葉っぱを洞窟の一番奥の部屋にゆっくりと撒いていった、撒いていく足元には 「シャーカイコ」がムシャムシャと葉を食べている。
葉を全部巻き終わると、壁のほうへ近づき「シャーカイコ」の繭で 幼虫が生長して脱皮した繭を回収しだした、そう「シャーカイコ」は、繭の中で成長したあと、少し大きな「シャーカイコ」に生長していき何度も何度も繭へ入って、10年ぐらいかけて成蟲になるのだ、成蟲の名前は「シャーカイコ」ではなく、「シャーバタフライ」と言う。
少女は繭の中で開いて中身のない繭だけを空っぽになった籠の中に入れていく、20個ほど回収した後
部屋の中を見回し、
「よし。開いたのは全部回収したね、掃除して 帰りましょう。」
言うやいな「シャーカイコ」の部屋の糞など、汚れたホコリなどを 魔法の風を起こし部屋から出していく。
「きれいになったわね、帰りましょう。」
少女は、ただある目的のために「シャーカイコ」を半年懸けて少しづつ苦労しながら捕まえ、育成のために「シャーカイコ」が過ごし易く、エサとして好きな小さな魔物たちがいて風とおりが良く他に天敵がいない洞窟を探し、「シャーカイコ」が、オヤツ感覚で食べている葉をたまに持ち込み、ストレス発散に勤め、さらにきれいな繭を回収するために洞窟の掃除を行い「シャーカイコ」が作った繭を気配を消して回収している。
彼女がココまでする理由とは。
「カイル!お誕生日おめでとう!おねえちゃまからのプレゼントは コレよ!さあ!あけてみて!」
健康優良児カイルは満面の笑みで包み袋をあけた!
「おねえちゃま ありがとう! これ? ぼくんちのランズベルク家の旗?の?布?」
カイルはうちのランズベルク家の旗の入った四角い布を手に取って首をかしげた。
かわいいわね カイル 園児が首かしげるって・・・・
鼻血ものだって誰かがいってたけど、たしかにそうだわ!
「カイル、その布はね、説明するよりも、使ってみたほうがいいわね。今きている上着のポケットの上につけてみなさい。」
カイルがポケットの上に布を当てたら、ポケットにピタ!っと布がくっついた。
「そこでね、 そのポケットを一回 たたいてみて 軽くでいいのよ。」
ポン! っと カイルが ポケットをたたいた
「前のポケットと 布が一帯化してるから 今そのポケットは 魔法ポケットになってるから、中から出してみて」
カイルが 「?」 って頭の上に出しながら ポケットの中に手を入れてみて、中から ポケットと同じ大きさの紙袋を出した。
「おねえちゃま? これなあに?」
「うふふ、あけてごらんなさい」
カイルが紙袋を開けるとそこには
「え! クッキーだ! これ クッキーだ!」
小さな紙袋に一枚クッキー!
「カイル また ポケットを一回 ポン!って たたいてごらんなさい!」
ポン!
「! また クッキーがある!」
「カイル、 お誕生日おめでとう、姉さまからは、クッキーの歌を プレゼントよ、
ポッケットの 中には クッキーちゃんが 一つ! ポッケットを叩くと クッキーちゃんが くるよ!」
あの歌を歌いながら カイルに説明していきますわ
「!!!!!!!! クッキー!でるの? おねえちゃま!」
カイルが瞳を輝かせます。
「そうよ カイル この布を ポケットの上につけて ポケットにしたら、
叩いたら クッキーが一枚づつ出て来るのよ、 おねえちゃまが一生懸命カイルのためにクッキー焼いたのよ、今出てるのが 白い紙袋でしょ? 茶色の紙袋が出てきたら、クッキーが後100枚、って意味だから、おねえちゃまに言うのよ?また クッキーを焼いてそのポケットに入れてあげるから。」
「すごい! クッキーのポケットだ!」
「大切にするのよ!」
「うん! おねえちゃま この紙袋 コノ前 僕に 版画で刷らせてた紙?」
「そうよ。ポケットの中に クッキーそのまま入れたら 不潔でしょ?他の友達にもプレゼントできないでしょ?紙袋に入ってたらきれいだし、紙袋に入れていなかったら そのポケットの中 クッキーのくずだらけになっちゃうもの。」
クッキーが一杯入ってるポケットって夢だよね!
あの歌を口ずさんだ時に思ったのよね!叩いたらクッキーが出てくるポケットを作ってカイルに誕生日プレゼントしたら絶対気に入るって!
ただし、作成するまで本当に苦労したけどね。
そのポケットつくるのには
まずは、主材料になる「シャーカイコ」の糸もタイヘンでしたが、その後の「シャーカイコ」の糸で編んだ布に「風の精霊シャシャール」による風の息吹の風を布に当ててもらわないと布に大量収納の魔力が編み込まれないのです。
シャシャールに布を持って会いに行き、何をしたら息吹をしてもらえるか地面に頭をつけてお願いしてみたところ、「何をその中にいれたいのか」と、聞くので 弟の誕生日プレゼントでクッキーが出てくるポケットをプレゼントしたいと申したら、クッキーもってこいっていうので、100枚ぐらい焼いてもっていったら、息吹を布にかけてくれた、うんうん、よかったよかった。
ただ、少し問題なのは、シャシャールが クッキー食べたいっていって、たまにコッチにやってくることかしらね。
しょっちゅうこっちに来てたべるし、忙しい時でも何度もやってくるので、うちの屋敷の料理長の3番目の息子にクッキーの作成方法を伝授して、頑固爺のところの卵の使用して、うちの領地で「クッキー屋さん」第一号店を開業してもらうことにしたの、そしてシャシャールには一週間に一度店のクッキー詰め合わせ箱詰めセットを渡すことにした、毎週お店に現れて料理長の三男に「クッキー」の味が まだ あたしの域に達していないと小言をいって帰っているらしい、
最近そのクッキー屋さんが、うちの領地のお土産屋さんで定番になりつつあり、人が足りないというので、うちの屋敷の侍女長の末っ子が店に売り子ででることになった。
そして料理長の三男と侍女長の末っ子が結婚することになったらしい。
二人で激甘ラブラブクッキーをこれから作成してくれたまえ。
いつのまにやら他の領地でもウチのクッキー屋さんが有名になったようで、よく買い付け業者がやってくるようになりました。
夢ですよね、叩いたらでてくる クッキー・・・・
お腹すきました。