表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編・詩 恋愛

優しく触れて。

作者: 些稚 絃羽

目を瞑り、息を吐く。



 真っ暗な闇の中にたった一人のような。そんな気がしていたんだ。ずっと。

 誰かが笑う度、泣く度、怒る度。

 すぐ近くで起こっている事なのに、自分には全て関係ない事と思った。

 まるで自分だけ透明なカプセルに入っていて。

 声も、体温も、存在さえも。何も伝わってこなくて。

 誰にも伝わらないように感じていたんだ。



そっと目を開けて、息を吸う。



 カプセルの向こうから声がして。こっちへおいでよ、って言うから。

 行けないよ、って言ったんだ。怖いんだ、って。

 そうしたら、白く細い腕がカプセルの中に入ってきて。

 君がそこにいると寂しいよ、って言って。そっと腕に触れたんだ。

 冷たいような、暖かいような、不思議な感じがした。

 そっと引っ張られて一歩前に進んだら。

 カプセルがパチンと弾けて消えたんだ。



体に誰かの影が落ちる。肩に感触。



 太陽があって、子供の声がして、花の匂いがした。

 君は暖かいね、って言うから。君も暖かいよ、って言ったら。

 君が温めてくれたのよ、って笑った。右の頬にえくぼが見えた。

 握った手のひらから何かが伝わる気がした。



「またここにいたの?」

「あぁ。」

「本当に好きね。」

「だって君が最初に触れてくれた場所だから。」



いつまでも。

肌に、心に、優しく触れて。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ