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彼との出会い
織姫と彦星が逢瀬を楽しむ星が美しい夜。私は彼とすれ違った。
私がアルコールの喉を灼く味わいに眉をしかめていると、背後から「相席構いませんか」と声を掛けられた。
私が無言で荷物をどけてやると彼はお礼を言って隣に座った。
ナンパかしら。モテる女は辛いわね。なんて考えていると、彼は「どこかでお会いしませんでしたっけ?」なんて声を掛けてきた。
あれ?本当に口説かれてる?
自分には無縁だと考えていた出来事に、私の胸は高鳴った。
半ばアルコールに支配されていた思考はクリアになり、改めて彼の顔に目が行く。
彼は懐かしむように私の顔を見つめていて、自然と頬が熱くなってきた。
私の視線に気付くと彼は微笑みながら、「気のせいかな」なんて囁きかけてきた。
私は内心の動揺を隠しながら「き、き、気のせいです!」と言い返すと、近くにあった水のコップを掴んだ。
彼が日本酒がどうだとか慌てた様子で声を掛けてくるが、私はそれらを無視して一気に『水』を飲み干した。




