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黒布団

作者: kiazuka

ピンポ〜ン


いやぁこの魔法の布団が有れば、すべてのストレスが無くなります。

快適な睡眠で活力が養われ、あなたの念願の夢もたちどころに実現できるのです!


でも俺、上京したてでまだバイトも決まったばっかりだし・・・。

だったら尚更オススメです。ただいま若者応援キャンペーン中ですので。はい。


・・・でも25万円って高くないですか?

そう思うでしょ。試してみると判ります。もうほかの布団とは全ッ然違うんですから。はい。

もし使ってみてちょっと・・・となれば、クーリングオフ期間は返却できますから安心ですよ。


手に握った契約書の控えと判子。

はい、そしてこれが取り扱いのDVDとなります。

俺まだテレビも買ってないんすよ。紙の説明書はないんですか。

大丈夫です!大丈夫です!布団ですから寝てみればすぐ違いが判りますから。あはは。

はい、こっちはおまけのバクの貯金箱です。毎度有難う御座いました。良い夢を!


狭く散らかった室内にデンと居座る上質な真っ白の羽毛布団。

と、その前に立ちつくす俺。

はぁ〜どうしよう。家電もろくに揃えてないのに・・・。

オプション品のチラシとニコニコローンの明細書が足元に散らばる。


でも布団自体は上質な・・・。いかんいかんセールストークのまんまじゃないか。

まあ8日以内に返却すれば、お金返してくれるらしいから、ちょっと試したらすぐ返そう。

そんな俺の考えを見透かしたようにこちらを見ているバクの貯金箱。

なんで、おまけがバクの貯金箱。バクって悪い夢を食べてくれるっていうあのバクだろ。

悪夢の貯金でもするのかよ!


数分後。

布団に潜ったまま天井を見つめる俺。

うん、まあ良い感じではある。

いやいやいかんいかん。25万だろ。ありえないよ。布団ってそんなに高いんだっけ。

高級な布団ってそれくらいが当たり前なのか・・・?


うとうと。

はっ!寝てしまってた。

あれ?なんか足のあたりでカサカサするぞ?

ゴソゴソ。

布団の中からお札が1枚。

2枚、3枚、4枚、・・・12、13、14・・・、22、23、24、25。

25枚もあるぞ。

25万円じゃん!どういうこと!?どうゆうこと?


待てよ・・・。

丁度25万円って事は、この布団タダで手に入れたと同じだな。

ほほ〜、まあタダならいいか。

本当はベッド買う予定だったけど、タダなら布団のままでいいかもな。

いやいや、それとも返品したなら25万丸儲けかっ!


取り扱いDVDを手にとって見る。

布団の取り扱い。

・・・が、なんでDVD。

テレビとプレーヤ買わなきゃ見れないよ。生活弱者のこと考えろっつーの。

まあ生活弱者は、25万円の羽毛布団は買わないだろうけど。はぁ。


思えば孤独な上京生活。テレビ欲しいなぁ。

映画も観たいしDVDプレーヤも欲しいなぁ、録画機能付きで。


うとうと。

ん・・・?

いつの間にかまた寝てしまってたようだ。

なんか足元がゴツゴツするぞ・・・。

ん?

お、重いし硬いしデッカイ、なんじゃこれ?こわっ!

勇気を振り絞り、勢い良く布団をめくる。

絶句。

これはテレビとブルーレイデッキじゃないか!しかも録画機能付き。


なんで?!意味がわからない。

俺は布団の上に乗っかったドデカい液晶テレビとブルーレイデッキの周りをグルグルと何周もして

観察したり考えてみたりしたが、何度見てもそれは50インチの液晶テレビとブルーレイデッキだった。


どっからやってきたんだ。この液晶テレビとブルーレイデッキ。

特にテレビ。デカ過ぎてむしろ迷惑だよ・・・。

驚くばかりの俺をあざ笑うかのようにこちらを見ているバク。の貯金箱。

サンタクロース・・・の時期でもないし。

百歩譲ってサンタクロースの存在を認めたとしても二十歳超えた俺のとこにゃ来ないだろ。


まてよ・・・。

閃いたぞ。

やっぱりそうだ!


俺が寝る前に欲しいって考えてたものが、この布団の中から湧き出てくるんだ!

そうに違いない。最初は25万円、次は液晶テレビとブルーレイデッキ。


ふふ〜ん。魔法の布団。ってそういう意味なのね。

ホントのホントに魔法の布団だったとはねぇ。

何でこんな凄いものがうちに?えへへへへ。

じゃ次、何出そうっかなぁ。


ポテトチップスを食べながら映画。菓子にも娯楽にも事欠かない。

様々な菓子や映画ソフト、本、楽器、おもちゃやゲーム機など。

それらの山に埋もれつつ、取り扱いDVDが顔を出している。

そう言えば、まだ見てなかったな。


というか、なんかモノ出しすぎて部屋が狭い感じ。

広い部屋とかも出せるのかしら。フフフ。


おやおやおや?

なんか布団カバーの色変わってない?最初はなんというか純白だったような・・・。

今は薄いグレー色に見える。魔法の布団は色も変化するのかな。


そんなことより、・・・ちょっとまてよ。

この布団、ひょっとして人間も出せちゃうのかしら。

ゴクリと唾を飲み込む。

いやいや、いかんいかん。

両手で頬をピシピシと叩いて自分に言い聞かせる。

俺おかしなこと考えそうだった。


今日はもう寝よう。明日のバイト、早番だった。

むにゃむにゃ。


朝の日差しが窓から差し込む。

けたたましい目覚まし時計の音。

布団から伸びた手が、素早くストップ。


むにゃむにゃ。


おや?

これわっ!

女の子の感触!?


まさか!!

・・・あ。

なんだ違う。人かと思ったらよく出来た抱きまくらか。

なんか残念。昨晩ちょっと自制心働いたからなぁ。それで中途半端な結果になったのかな。


布団の色、また少し濃くなってないか?この濃さはグレーだな。

バクの貯金箱も最初の頃より気持ち大きくなっている気がした。

いや気のせいか。一度取り扱いDVD観たほうがいいな。


部屋に戻ってくるなり、ドサドサっとエロ本や写真週刊誌を床にばら撒く。

念入りにページをめくる。

よっし、イメトレイメトレ!


おもむろに服を脱ぎ、裸になって布団に潜り込む。

傍らにはお目当てのグラビアアイドルのページが開かれている。

準備完了。


夢の中。

ビーチでグラビアアイドルと水を掛け合い遊ぶ俺。

椰子の木陰でトロピカルドリンク。

ジリジリ・・・

暑いなぁ。

グゴゴゴゴ・・・。なんと巨大な津波が!

ザッパーン!

波に飲み込まれて身体が宙を舞う。

オゴオゴゴゴ。苦しいよ!


はっ。と目を覚ました瞬間、布団の中から一気に大量の海水が押し寄せる。

あっという間に部屋中が水浸し。

しょっぺー!

何日もかかって集めた家電も全部水浸し。

バクの貯金箱もプカプカと浮いている。


なんてこった。水飲みたかっただけなのに。なんで津波が来るかな〜。

魔法の精度が落ちてる?

う〜ちべた・・・。


う〜ん。

お、なんだ?

海水の中から、水着のアイドルがひょっこり登場。

わ!

おー、やった!グラビアアイドルお持ち帰り成功!

あれ?ここどこ?

あ、ははは。こんにちは!

きゃぁ!あ、あなた、どうしたの?

えへへへへ。

水をかき分けアイドルに近寄っていく俺。全裸のまま。

あ、あの、ちょっと。あんたそれ以上近付かないで!

え?ああ、ご、ごめん!そうだ!裸のままだった。

あたふた着るものを探す。


あたし行かなきゃ。さよなら。

え、俺が君のこと夢から連れてきたんだよ!チュ〜ぐらいさせてよ。

きゃぁ!ついて来ないで!

待って〜!

グラビアアイドルは出口のドアを開けると、あっという間に外へ。

部屋に溢れていた潮水もそのドアから、勢い良くドバっと外へ流れ出る。


流される水に浮かぶ取り扱いDVDに気付き、手を伸ばす。

が・・・。

あれ?右腕が?無い。

あれ?右腕が?無い?


ぎゃぁぁぁ!

無い!右腕がない!左腕は?ある。

右腕だけが肩の付け根からすっぽり無くなっている。

痛みはない。

いつからだ?目が覚めてこの部屋に戻ってきた時?!

それであの子は驚いていたのか。


水の引いた部屋。苦労の末、左腕だけでノートPCを起動。取り扱いDVDを再生。

どういうことだよ。なんで右腕が無くなるんだ。

泣きそうになるのをこらえて、今はまずなんとかする方法を調べなきゃ。


画面の中では、あの胡散臭いセールスマンが説明している。

まず使い方ですが、この布団でお休みになる前に、ご希望のものを頭で思い描いて下さい。

無事夢の中までその願望が持続出来れば、次に起きた時にそれを夢の中から取り出すことが出来るでしょう。

思い描けるものなら何でもOKです。


それはもう知ってる。人間だって出せたんだ。


次に取り扱いの注意点です。非常に大事なところなので絶対にお忘れなく。

夢の中から望みのものを取り出したら、次に夢に入るときにはあなたなりに同等と考えられる

別の何かを夢に持ち込んで下さい。

そのことで夢と現実のバランスを維持することが出来るのです。


え?

なにそのルール。


もしこの作業を怠ると、布団の色は徐々に黒ずんでいき、最終的には真っ黒になってしまいます。

もしも布団の色が黒になってしまった場合、布団は夢と現実の物質的バランスを保つため、

強制的にあなた自身を夢の中へ取り込もうとし始めます。


布団に取り込まれるだって?

何であのおっさん、買うときに言ってくれなかったんだ。こんな大事なこと。

ずぶ濡れの布団は、もはやどう見ても完全な黒色だった。

やばい!布団に食われる。とゆうか右腕はもう取り込まれた。


無くなった右腕のあったあたりを眺める。一旦落ち着かなきゃ。

で、どうやったら取り戻せるんだ?何か方法は?

プレイヤーを早送り。


では皆様、この魔法の布団で快適な睡眠と夢の実現を楽しんで下さいませ。

等価交換のルールは絶対に忘れないでね!

パパパパ〜ン♪


終わり?

契約書類など書類を片っ端からひっくり返してみる。

サポートとかないのぉ?どうするんだよぉ。連絡先さえ書いてないなんて。

俺の右腕・・・。

こらえきれず涙が流れてくる。

簡単にものが出てくると思って調子に乗りすぎた。

今更等価交換とか言われても知らないよ。買う時に説明しといてくれよ。


悲嘆に暮れて泣きはらし、友達もいないこの街ではせめて酒飲むくらいしか思いつかなくて。

酔っ払った。


そして自分が布団に食われるかもしれないことなどすっかり忘れてしまって、

真っ黒な黒布団の中でそのまま眠ってしまったようだ。


最近は魔法でものを出したいが為に、浅い眠りで起きては寝、起きては寝の生活だった。

こんなに意識がなくなるまで深く長く眠ってしまったのは、どれくらいぶりだろう。


目が覚めると自分の部屋らしかった。

う・・・ん・・。

随分寝たな。しかも夢さえ観なかったなんて。


天井の明かりもつきっぱなし。

相変わらず狭く散らかった部屋だったが、不思議なことにそれまで布団から出して

潮水に浸ってしまった色んな家具や家電まで一切無くなっていた。

まるで布団を買った日に時間を遡ったかのようだ。


ひょっとしてここは布団の中の世界か。

布団がバランスを取るためについに俺を食べたのだろうか。

それともまだ俺は眠っていて、これも俺の夢なのか。

そして布団の色は相変わらず黒のままだった。


起き上がる。

そうだ右腕は!

左手で触れてみる。

無い。


そんな都合よくいかないか。一人で苦笑いしながら黒い羽毛布団の中、身構えていた身体の力をスッと抜く。

食べるなら食べるがいい。


そうしてしばらく黒布団の中でじっとしていた。

しかし一向に何かが始まる気配も無かった。

まてよ。

まだ俺が布団に取り込まれていないってことは、考え方によってはまだギリギリセーフってことじゃないか?

今のうちに色んな物を夢に持ち込めば、等価交換のバランスも戻って、腕だってまた戻ってくるかもしれないぞ!


するとゴソッ。ゴソッ。どこからか何かが擦れるような音が聞こえる。

あのバクの貯金箱が、こちらに向かってゴソゴソとあるいてくるのだ。


なんだ?

貯金箱が動き出すなんて・・・、無い無い無い。

もいちど確認。

ゴソッ。ゴソッ。徐々にその距離は狭まっていく。

な、何が起きてるんだ!やっぱりこれって夢なのか?!


バクの貯金箱はこちらに向かってくるに従い、だんだんと大きくなる。

人形の眼は虚ろで、これから一体何が始まるのか俺は恐ろしさを覚えた。


勿論布団から逃げ出そうとするのだが、身体が一ミリも動かない。

あー俺はどうなってしまうんだろう。


バクの巨大な顔が天井を埋め尽くした時、観念して俺は目を閉じた。

力が抜けた瞬間、急に身体が動くようになった。


もう俺は布団の中の奥へと、深く深く潜り込むくらいしか出来なかった。

黒布団の中は明るくて、奥から眩い光が差し込んでいた。

あそこを抜けると助かると勝手に信じて、俺は右腕のない三つん這いのまま無心で光に向かった。

目は閉じているはずなのに、開いているかのように眩しかった。


どれぐらい這いつくばって前に進んだのか。

次第に辺りは暗くなり、羽毛布団の温もりと肌触りに安心する。

いつの間にか右腕は元に戻っており、晴れて四本足で布団を抜けだした。


そこは、やはり俺の部屋だった。

ぐったりしながらも周りの様子を伺う。さっきと何が違っているのか。

あ!布団が白に戻ってる。理由はわからない。

バクの貯金箱はじっとこちらを見据えていたが、そのままで動く気配はなかった。


だがなんとなく妙な違和感があった。

ここは俺の部屋であるのに俺の部屋ではない肌で感じる感覚のようなものだ。


さっきのは夢だったのか。今が現実?

それともさっきのが現実で、今が夢?

何がどうなったのかよくわからない。ともかく右腕が戻ったのは嬉しかった。

バランスとやらは改善されたってことなんだろう。


白い布団から抜けだして窓を開けると天気は晴れやかで、

全ては俺のために新しくやり直してくれているかのようだった。

きっと何かリセットされたんだろう。そう思いたかった。


突如背後の白い布団が、もぞもぞと動き出した。

布団からにょきっと手が出てくる。

そこから顔を出したのは、・・・もう一人の俺!?


やあ!先に来てたか。

な、なんだ、この俺。馴れ馴れしいな。何様だよ。って俺のようだけど。


もう一人の俺は、俺をジロジロと舐めるように眺めてくる。

すげぇ!全く同じだ。自分がもう一人出せるなんてやっぱ凄い布団だ。


えっ?

お前が俺を。呼び出した?

ああ。君は俺が俺の夢から連れてきたもう一人の俺なんだよ。


は?

いやいや。まてよ。何で俺が呼び出される側なんだ。

やっぱり今が夢らしい。


うふふ、夢じゃないさ。

さっき君は俺が乗った巨大バクロボットに追いかけられてただろ。

その君を、俺が俺の夢の中からここに連れてきたのさ。

ええっ!


だから君の存在は君自身のものではなく、君は俺の持ち物なんだよ。

ふ、ふざけるな!

やって貰いたいことが色々あるんだよねぇ。うふふ。


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