第6話 終わり
「お兄ちゃん、醤油とって」
「・・・・・・はいよ、つうか、こんな早く来るんならあらかじめ連絡ぐらい入れとけよな・・」
「いやーー、お母さんの料理久しぶりー」
「人の話聞けよ!」
「だって、そんなことしたらお兄ちゃんの寝顔が拝見できないじゃないですかぁ?」
そんなもん拝見せんでいい・・・・
「あらあら・・うふふ・・」
いつもより3割増しで、笑顔を見せる母親。
「で、皐月 学校の方はどうなの?」
「へっ あぁ・・楽しいですよ!」
「そう、ならよかったわ もう一人暮らしには慣れた?」
「うん、友達とかも遊びにきてくれるし、 たまに、寂しいときもあるけど・・お兄ちゃんとも毎日連絡とってるし・・・」
・・誤解を招くような言い方するな!
オンラインゲーム一緒にやってるだけだろうが!
「「ごちそうさま」」
そういって、俺は食器を片づけて自分の部屋に戻った。
「いや~お兄ちゃんの部屋 なんか懐かしいなぁ~」
「勝手に入ってくんなよ・・・。 そういえば、健斗が久しぶりに4人で花火しないか?って言ってたぞ。」
「え、春山くん!? 懐かしい! する!いつするの?」
「一応明日の午後に予定してるんだけど・・・・・」
「わかった!」
随分食い付きがいいな・・・・
「で、今日は何か予定はあるのか?」
「う~ん 特に予定はないんだけど、久しぶりにこの町に帰ってきたんだし、散歩・・・・したいかな?」
なんだ、そんなことか。
「いやー 懐かしいなぁ。
あぁー!?あそこの店潰れっちゃったんだ・・・お気に入りだったのに~」
「そいつは、残念だったな。」
「ねぇお兄ちゃん、私たちって周りの人からどう見られてるのかなぁ?
恋人?それとも・・・夫婦?」
「どっからどうみても、兄妹だよ。」
「お兄ちゃん・・・・ムードってもんを大事にしようよ・・・・」
なにが、ムードだ。
お? あそこにいるのは、月島せんぱい?
なんで、あんなところに?
俺が月島せんぱいのことを見ていると横から妹が話かけてきた。
「ほえ~ すごい美人な人。 てっお兄ちゃん! デート中に何他の女の人に見惚れてるの!?」
「見惚れてねぇよ! ・・・つか、どこがデート中だ!?」
そんなコントのようなことをしている内に、俺たちは明日花火をする予定の公園へと着いた。
「うわぁ~ ここもまた懐かしいですねぇ~」
たしかに、俺もこの公園に入ったのは小学校以来かもしれない。
「ねぇ、お兄ちゃん? あっちの遊具で遊ぼうよ」
そういって、小学生のようにはしゃいでる妹を見て、俺はため息をつく。
「おい、まてよ・・皐月・・・」
そのあと、俺たちは日が暮れるまで、公園で遊んだ。
「「ごちそうさまでしたー」」
「おそまつさま、お風呂沸いてるけど。どうする?」
どうするって何だよ母さん・・・・
「もちろん一緒にh「俺が先に入る」」
俺は妹を無視して湯船につかった。
そういや、今日はまだMSOにログインしてないなぁ・・・・
そんなことを考えていると、風呂場に誰かが入ってきた。
「お兄さん、お背中を洗わしていただくて参りました。」
こいつは・・・・
「頼んでねぇよ!」
俺は近くにあった、石鹸を妹の頭に投げつけた。
「ユニバ――――――――――ス」
「もう、電気消すぞ」
「了解、であります!」
どこの、宇宙人だ、つうか自分の部屋があるんだからそこで寝ろよ!
といいたいところだが、
残念ながら今日一日中歩きまわってぼろぼろになった体には、こいつを部屋から追い出す体力も、
妹を自分の部屋に寝かしつける体力も残されていなかった。
瞼を閉じると、すぐに夢の世界へと旅立った。
「朝ご飯できてますよ、お兄ちゃん。おきて下さい」
皐月の微かな声に目を開けると、皐月の顔がアップで飛び込んでくる。
横向きに寝ていた俺は、丸めていた背をのばし、さらにそれをもう一度丸めることで、
柔道の寝技回避法を繰り出し、妹の突き出している唇を回避する。
ゴン!!
「ぐわぁっ!?」
突如、後頭部を襲う痛みに悶絶する俺。
ベッドは壁際に配置されており、この技を繰り出せば確実にこうなるのだ。
「もう朝ご飯出来てるんだから、早く着替えてきて降りてきてよね!」
皐月は楽しそうに笑うと、一階の居間に下りていった。
「あの野郎・・・・いつか殺す」
一人つぶやく俺。
昨日の夜から何かしてくるとは思ってはいたが、
まさかキスをしようとしてくるとは・・・。
妹、恐ろしい子!
「そういや、妹今日のこと、忘れてないだろうなぁ?」
朝食を済ませ、俺の部屋でゲームをしている妹に話しかける。
「花火のことでしょ ちゃんと覚えてるよ」
「そうか、ならいいんだが」
「うふふ、よそ見なんかしてていいの?」
妹は俺の後ろから赤こうらを投げつけて目の前を通過する。
しまった!!!!!
「やっぱり、弱いね」
「いや、まだ本気を出しないだけだよ」
「ふーん、じゃあまだまだ楽しめそうね。」
「当たり前だ。」
妹と二人でゲームをしてる間に約束の時間が近づいていた。
「そろそろいくか」
「うん。」
俺たちは家を出た。
「おい、おっせえぞ アキヒサ」
そこには、健斗ともう一人、昔とまったく変わらない人物がいた。
「久しぶり、明久」
「お久しぶりです。菜月先輩」
「なっちゃん!」
そういって、先輩に抱きつく妹
「懐かしいわね、皐月」
「んじゃあ、さっそく始めるか花火」
そう、健斗がいい花火に火をつける。
「わーい」
妹は無邪気に花火をつけて、公園内を走りまわる。
すると、向こうから先輩が近づいてくる。
ー
ーー
ーーー
「実は今日、あなたたちを誘ったのは、私なのよ」
ほう、それは初耳だ・・・
「どうしてですか?」
「あなたたちが最近MSOにハマってるって弟に聞いてね。実はいうと、私もMSOのプレイヤーなのよ」
な、なんだってー
まぁでも先輩のことだから、きっとカエデと同じはじまりの森ぐらいだろう・・・・・・
「で、先輩は今どの辺なんですか・・・?」
「クリムゾンタウンよ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・へ?
「も、もういちど、言ってください」
「? クリムゾンタウンよ」
おいおい、こいつガチプレイヤーだ。
さすが大学生。
てか、健斗のやつ家にはパソコンはないって、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・は!
一人暮らし!
そうか、この人は一人で部屋に籠もってネトゲをしてるのか、
「どうして、肩を叩くのかしら、明久くん?」
なんだか、急に先輩のことがみじめに見えてきた。
「いや、何も言わなくてもわかってますって、先輩」
「何がよ? まぁいいわ、ところで明久くん、ヘルタウンって知ってる。」
「ヘルタウンですか?」
知ってるも何も、最近実装されて有名なんだからMSOをやっていれば知っていないわけはないだろう。
「実は・・・」
そういって、先輩が真剣な顔つきになったところで、突然あたりの景色が赤なる。
「なんだ?」
周りを見渡すと、明らかにここの公園だけ異常な空間に包まれている。
まるで、血の中にいるような赤い空。
ザァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
謎の音が公園に響く。
みんなも何が起こったか、理解できないようだ。
公園の中央から、黒い煙があがる。
なんだ!?
なんなんだ!?
なにが起こってる?
ズッ……ズッ……
何かを引きずる音?
黒い煙の中から出てきたものソレは・・・・・・・・・
「あ゛あ゛あ゛あああああああああああああ!!!!!!」
誰かが叫ぶ。
誰の叫び声かなんて、そんなこと考えている余裕がない、なぜならそこには、
そこには・・・・
ソンザイシテハイケナイモノガイタ
正体を視認して、俺は目を見開く。
いてはいけない者が。
来てはいけない者が。
入れてはいけない者が、そこにいた。
なんで、なんで、MSOのモンスターがこんなところにいるんだ?
ザァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ死ね