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第5話 再開

ジリリリリリ――――――




無機質な部屋に、大音量の騒音が流れる。



もう…………朝か、俺は静かに布団から這い出ると、学校へいく準備を始めた。



「あら、 一人で起きられたの?」

それが、高校生にかける言葉か?

まぁ、起きない俺が悪いのだが。


「今日は雪でも降るかもねぇ・・・」

今は春だぞ母上。



「明日、学校行ったらゴールデンウィークだからな。」

「あぁ、そういえば、皐月が ゴールデンウィークは家に帰ってくるから!!って昨日電話で言ってたわよ」


「うん。知ってる」

「あらあらまぁまぁ、やっぱり仲良し兄妹ね」

「うるせぇよ」


母さんは笑顔で朝食を作り始めた。






「黒崎!! おい黒崎!!」


俺が目を開けると、そこには鬼のような顔をした先生がいた。

「あれ・・・・? 母さんは?」


「寝ぼけるなぁ!! 廊下に立っときなさい!」


周りからクスクスと笑い声が聞こえてくる。




最悪だ。




チャイムが鳴り響く


「よお、お母さん」

「うるせぇよ」

「いや、あれはお前が悪い」

たしかに、俺が悪いけど、今どき高校生にもなって、廊下に立っとけって・・・・・・・


「んで、アキヒサ ゴールデンウィークのご予定は?」

「いや、特には」


妹が帰ってくること以外は・・・


「んじゃあさ、俺と姉貴とお前とお前の妹さんの4人で久しびりにお前んちの近くの公園で花火しないか?」

「なんで、この時期に花火?  …………てか!?」


俺がなんで妹の事知って!?と聞こうとした時、健斗はにやにやと笑っていた。



「お前の考えてることなんてお見通しなんだよ。何年お前と付き合ってると思ってんだよ。」


そういって爽やかな笑顔を俺にぶつけてきた。


やめろ、気持ち悪い。


お前は知らんかもしれんが、俺とお前ができてるんじゃないか?

ってマンガ研究部の腐女子の奴らに聞かれたことは一度や二度じゃないんだからな!


「わかった。 妹にも伝えておくよ」



にしても、菜月先輩に会うの久しぶりだなぁ。


菜月先輩とは、こいつの姉で、こいつより3っ年上で今は大学生だ。




昔は四人で互いの家を行き来したりして遊んだ。


そういえば、最後に遊んだ時もあの公園で花火をしたっけ。




最後の授業のチャイムが学校に響き渡る。


俺は大きく屈伸をする。


さて、家に帰るか・・そんなときだった。


「アキヒサお前に用があるってよ。」


「え?」


俺が振り向くと、そこにはこの学校の風紀委員長が立っていた。







「で? 何の用ですか? 先輩」

「いや、君の授業中の居眠りがあまりにひどいと聞いて、少し注意をしようと思ってね」



・・・めんどくせぇ・・・


こいつの名前は水無月みなづき なぎさ

鬼の風紀委員といわれていて、この学校では、月島楓と並んで有名人だ。




水無月 渚は今時にしては珍しい、どこまでも"和"が似合いそうな美少女だ。


その漆黒のビロードのような髪はひとつひとつ、毛先まで美しい。


肌は陶磁器のような白さと赤ん坊のようなみずみずしさがある。


くっきりとした顔のパーツは一瞬、西洋人形を連想させる。


だが柔らかく微笑む姿と、凜とした背筋とは裏腹に、この学校の風紀委員長を務めており、校則を破る者には容赦をしない。

そのギャップ萌えにより、わざと校則を乱してこの人に怒られにいく人もいるとかいないとか…………。







「―――ということです。 わかりましたか。」

あれから、一時間近く、説教された。



「……はい、わかりました。 本当に申し訳ありませんでした。」


俺は倒れそうになるのをこらえて何とか、先輩に謝る。


「まったく、これからは気をつけてくださいね。え―っと、ヨシヒサくん。」


すると、彼女はクスクスと笑い始めた。


さっきまで、あんなに怒っていたのに………。


「どうしたんですか?」

「嫌、なんでもない、ただアキヒサという名前に聞き慣れしていてな。」


ほう、俺と同じ名前の奴か、是非ともお会いしたい。

きっと、すばらしい人だろう。


て、そんなことはどうでもいい、とりあえず、はやく家に帰りたい。


「じゃぁ、俺はこの辺で、今日はすいませんでした――」

そういって、駆け足で、下駄箱へ急ぐ。






「ふぅ・・・」

家につき、パソコンの電源をつける。



妹はいない。

たぶん、明日の準備でもしてるんだろう。


ダグもきてないか、

アイツも結構忙しそうだもんなぁ。


お!


「よぉ 久しぶり カエデ」


「アキヒサーー 久しぶりだなぁーー元気にしてたか!?」


「あぁ……で? お前、今どこにいる?」




「  はじまりの森だ。 」




なんでだよ!?


「お前いつまでそこにいんの?、住んでんの? ローンでも組んでんの?」

「ボスが倒せない(涙)」


「悪いがそれは協力できない、まぁ、そのなんだ頑張れ」



MSOでは、次の街に移る前に必ずボスを倒さなくてはならない。

それも、一人で。



ちなみに、一度クリアした街には、いつでもワープできる使用になっている。


「ところで、アキヒサ そのゴールデンウィークはいつログインするのだ?」


「うーん そうだなぁ、まぁ明日から妹が家に帰ってくるしなぁ・・・家にパソコンは1台しかないし、いつになるかわからん。」


「そ・そうか・・・」



「なぁ、アキヒサ・・・・・・あの・・・・・・その・・・・・なんだ・・・・・お願い・・・・というか・・その・・ぇーと」


なんだろう?


「明久ー ご飯よー降りてきなさい。」


もう、飯か・・・時計を見ると短い針が7を指していた。

風紀委員に怒られていたせいだな。


「悪い、親にご飯だって呼ばれたから、今日はもうログアウトするよ。何かいいたいことがあれば、今言ってくれ」


「ううん たいしたことじゃないから、また今度ね、」


なんだ、たいした事じゃないのか・・・・


「おう、お前こそいい加減ゴールデンウィーク中には、はじまりの森から抜けれるように、頑張れよ。」


そういって、俺は自室から出た。







「そういえば、明久! 今日学校の先生から電話が掛ってきたわよ!」

げ、最悪だ。


「もう! ちゃんと先生の話聞かないとだめじゃない!」


「・・・ごめんなさい」


「まったく――もういいわ、ご飯が冷めるから早く食べましょう。」


「「いただきます」」









ふぅ………今日は疲れたなぁ………

明日はゴールデンウィークか・・・・

あいつと会うのも3カ月ぶりか、

そう考えるとあっという間だったな。



あんまりさみしく感じないのは、いつもゲームで会ってるせいだな。

そういって、俺は一人で笑った。


そういえば、あの時カエデは何を言おうとしたんだろう?



そう、考えている内に、俺は夢の世界へと旅立っていた。












―――――何度か見たことのある光景だ。



でも、慣れなかった。


夢であっても、この場所にたどり着くたびに俺は胸が壊れそうなほどの悲哀を感じる。


安っぽい恋愛映画や、小説なんかでは味わうことのできない気持ち。


本当に、本当に大切な人が亡くなってしまうような悲しみ。


俺は目が覚めると、枕を濡らしていた。



心地よい風が吹き込んで、なんとも悪い夢見を少しやわらげてくれた。


指先で頬をなぞると、やはり乾いた涙の後があった。


「あれっ、もう起きてるの??」


俺が感傷に耽っていると、素っ頓狂に響き渡る妹の声


「ただいま、お兄ちゃん!!」







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