『この世界を救うのが最もうまい勇者』の召喚
なんとも申し訳ないことに、魔王を倒してしまった。
「やりましたか……勇者様……」
戦士が。
「終わったのですな……勇者殿……」
魔術師が。
「これが勇者……なのですね……」
聖女様が。
みんなみんな――微妙な顔をしている。
いや、気持ちはわかる。
気持ちはわかるんだけど、僕は悪くないんです。
三ヶ月ほど前のことだ。
僕は、とある大作RPGをやり尽くした。
レベルもカンストしたし、装備も全部集めたし、その強化だって最大値だ。
そこで思い付いたのが、縛りプレイ。
新しいキャラで、装備を限定して再挑戦をした。
その途中で、ゲーム世界に召喚されたのだ。
――ネタ装備縛りの最中に。
「えーと……それじゃあ、僕は元の世界に帰るね」
聖剣ピコピコハンマーを片手に、お辞儀をした。
「お、お疲れ様でした」
ビキニ鎧にウサ耳装備の戦士にお礼を言われた。
「また冒険を……いや、やっぱりこの格好ではしたくないですな……」
アイスキャンディー型の杖を持ったピエロな魔術師にも別れを告げられた。
「ありがとうございました……でも、次があればもう少し人選に気を遣おうと思います……」
……危ない水着。
僕は悪くないんです。
僕は悪くないんですよ!