何故か召喚されました
空中で風をきるような妙な感覚。
「ッ!!?」
自分の身に何が起きたのか考える暇も無く、無様に半回転した状態で地面につく。
一瞬では状況が理解できず、感じるのは全員の痛みだけ。
「のおわっ!?」
背中から足への激痛に耐えられずにもがき、そのひょうしに頭も打ってしまう。
「・・・いってぇ」
起き上がる気力もわいてこないので、倒れた状態のまま空を見る。
いつもと変わらないはずの青空には何もさえぎるものがない。
風は強めだが、さわやかな日差しがなんとも心地よい。
いったいぜんたいここはどこなんだ?
確かさっきまで自分の部屋にいたはずなんだが・・・
ずっとこうしているわけにもいかないので起き上がるとしよう。
体はまだ痛むが、動けないほどではない。
やっと落ち着きを取り戻し、そのまま目の前を見る。
数メートル先には一人の美少女がいた。
いや、『気の強そうな少女』というべきだろうか?
見るからに意志の強そうなつり目の瞳は何の混じりけの無い赤色。
ひざまで伸びるさらさらした髪に、とがった耳の上には2本の先端部分がくるっとカーブした角まではやしている。
それに服装は藍色のマントに白色のブラウス。それにこげ茶色のふわっとしたスカート。
胸の部分には赤っぽく光る石のペンダントをつけている。
それにすごい低身長。
「?」
その美少女は黙ってこっちを見つめてくる。
沈黙。
「あの・・・俺に何かようか?」
濃い茶色のブーツをトカトカとならしながらまっすぐ俺の方に近づいてくる。
そしてそのまま、ずいっと顔を近づけてくる。
俺と少女の顔の近さは、はなんと5センチあるかないかくらい。
「!?」
近くで見るとまつげが長く肌も透き通るような白さ。
簡単に言うのなら、・・・可愛い。
どこかの雑誌のモデルか?
・・・にしてもやけに近いな!さすがに照れるぞ!
そんなことを思っていたら少女はスッと顔を引き、口を開いてこういった。
「成功したようだけど・・・いや、でも失敗?
どうみても弱そうだし、あ~あ、魔力もったいない!」
第一声がコレだった。
少女の声はやっぱり幼い感じで、何かのアニメできいたことがあるようなないような
いわゆる『ロリ』っぽい声だった。
でも言っていることはさっぱりわからない。
成功って何のことだ?しかも魔力って・・・
たしかに彼女の服は魔女コスプレみたいなもんだけど、だからって本物の魔女わけがない!
それに俺に俺のことを弱そうだとか言ってやがる。
「ちょっと、聞いてるの!?」
おっと、考え事をしてる間に何度か呼ばれてたみたいだ。
怒って大きな声を出したときに気づいたんだが、八重歯がとがっていてまるで獣のようだった。
あれで噛み付かれたら、おそらく大変なことになるだろ・・・
ゲシッ!!!
蹴られた。
ブーツのそこが厚くなっていたのでマジで痛い。
ひどくないか?
ちょっと話を聞かなかっただけで蹴るなんて、初対面なんだぞ!?
「何するんだよ!」
あまりにも理不尽なんで怒鳴ってやった。
つーかまだヒリヒリする。
「何回も言わせないで!」
何回も言わせた覚えは無いんだが・・・
「口答えしないで」
やけにえらそうだな・・・
「いい?あたしは魔王サタンなのよ!」
腰に手を当てて自信満々な顔で宣言する『自称サタン』の少女は俺の返事を待っている。
はぁ???
ここは、
おおー!そうですか、凄いですね
とでも言うべきなのか?
冗談として笑うべきなのか?
俺がどう答えようか頭の中で考えをめぐらせていると
待つのがめんどくさくなったのか、少女が言う。
「アンタを召喚したから273万年分の魔力使い切っちゃった。」
シャー芯使い切っちゃった。
くらいに軽く言っているが273万年分って人間が生きられる年数を軽く越してるんだが・・・
俺は、あぁ・・・そう。としか言いようが無かった。
「信じてないの?」
むすっとした表情で俺を軽く睨む。
今の話を信じろと?
いやいやいや、どう考えても無理だろ。
「としかく!何が何でも信じてもらうから!
今日からアンタはあたしの手下よ!」
そんなこんなで、
かわいそうな俺はサタンの手下になってしまったのである。