エマ・グレイス【私の薔薇乙女】
王都の夜は、驚くほど静かだった。
祝賀の灯も消え、城の客間の窓から見えるのは、光を残した眠らない街だけ。
私はバルコニーに立つレティシアの背中を見つめていた。
(寝巻き姿・・・無防備・・・やめろ私、今は真面目な話をする場面だ)
「眠れませんか」
声をかけると、彼女は振り返った。
月明かりに照らされる横顔が、あまりにも綺麗で胸が痛くなる。
(妻になる人に隠し事は良くない)
私は彼女の隣に立った。
「レティシア様。ずっと、話さなければならないことがありました」
彼女がこちらを見る。
「私は・・・あなたの最初の人生を知っています」
彼女の未来を、運命を告げる。
彼女の瞳が揺れる。
「・・・私は、物語の中の悪役令嬢だったのですね」
「はい」
私は否定しなかった。
「あなたは必ず断罪され、必ず排除される存在でした」
そして、まっすぐに見つめる。
「でも私は、あなたを一人の人として愛しました。誇り高くて、優しくて、誰よりも強いあなたを」
私は指先に力を込めた。
「真実を知っても、私と生きたいと思えますか?」
彼女は、少しだけ微笑んだ。
「私は、あなたを選びます」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥で何かがほどけた。私は彼女を抱きしめる。
「私は、あなたを失うのがずっと怖かった」
彼女の腕が、私の背に回る。
「もう大丈夫です。私は、ここにいます」
夜明けの光が、少しずつ差し込んできた。
(レティシア・・・あなたの目の前の女は聖女と呼ばれてますが、あなたの想像を軽く超えたどエロいこと考えてます。実行してないだけです、実行してないだけです!)
でもそれは、まだ秘密。
本編[完]




