エマ・グレイス【交渉】
「聖女エマ・グレイス様、レティシア・フォン・ローゼンヴァルト公爵令嬢様。王国は、両名の帰還を要請いたします」
(でしょうね。そう簡単に手放すわけがない)
予想通り、フロストハイムに滞在しているとルミナリア王国から使者が来た。
私は一歩前に出た。
「帰還するなら、条件があります」
(交渉フェーズ突入)
「第一に、レティシア様の名誉の完全回復。第二に、彼女の身の安全を王家が永久に保証すること。第三に、王国が彼女の人生に二度と干渉しないこと」
使者の顔色が変わる。
(ここからが本命)
「そして第四に・・・私とレティシア様の婚姻を認めてください」
――謁見の間、凍結。
(推しを王国から切り離すにはこれしかない)
「女性同士の婚姻は――」
「なら、改正してください」
(即レス)
「王国が私の力を必要とするなら、私の人生も尊重されるべきです」
フロストハイム王が頷く。
「条件は受け取った。伝えよ」
(交渉成功!帰還フラグ+婚約フラグ成立)
謁見の後。
雪の回廊でレティシア様が不安そうに言う。
「無理な条件を出して、諦めてもらう為のものですよね?」
(・・・ピュア。本気だと思われてない)
「今は、まだお返事はいりません」
(きっと急に詰めると逃げるタイプ)
そっと彼女の手を取り、手の甲に口づける。
「今は、まだ。それでいいんです」
歩き出しながら、私は内心で拳を握った。
(多分もう、聖薔薇学園のゲーム外。レティシア生存ルート。確信はないけど)
私は深呼吸する。
(でもここまで来たら完走する。推しと結婚するなら、外堀から。がっついたら引かれる)
フロストハイムの雪空の下。
再び使者が条件をのんで来訪するのは数日後だった。




