エマ・グレイス【断罪の広場】
「・・・国外追放とする」
王子レオンの声が、広間に静かに響いた。
その宣告に、貴族たちがざわめく。
赤いドレスの少女――
レティシア・フォン・ローゼンヴァルトは、頭を下げた。
「承知しました」
誇りを失わぬその姿は、あまりにも美しく、あまりにも孤独だった。
(レティシア、本物だ・・・)
レティシアは静かに踵を返す。
誰も引き止めない。誰も声をかけない。
赤いドレスの裾が揺れ、その背中が扉の向こうへ消えていく。
広間に、重い沈黙が落ちた。
そのときだった。
「・・・え?」
エマは、ようやく我に返ったように声を上げる。
「え、ええっ!?」
周囲の視線が、一斉に集まる。
「ちょ、ちょっと待ってください!国外追放って確定、ですか?」
さっきまでレティシアを断罪していたエマに王子が眉をひそめる。
エマは、隣に立つ王子に勢いで言った。
「わ、私たち、友達ですよね!レオン様!」
「え?」
エマとの婚約発表をしようとしていたレオンが目を瞬かせる。
「・・・友達・・・だが」
「ですよね!」
(よし、王子との婚約回避!)
エマは身を乗り出した。
「追放なんて、さすがに可哀想じゃないですか!せめて護衛はちゃんとしてあげてください!」
貴族たちがざわめく。
「聖女様?」
「何をおっしゃって・・・」
エマは気にも留めず、続けた。
「ほら!国外ですよ!?野獣とか、山賊とか、絶対出ますよね!?丸腰で行かせるなんて、あんまりです!」
レオンは困惑した顔で口を開く。
「それは」
「なら決まりです!」
エマは勢いよく振り返った。
「私が王妃様に直接言ってきますね!」
「え?え、ちょっとエマ!?」
レオンの制止も聞かず、エマはスカートを掴んで駆け出した。
「失礼します!!」
そして――全力疾走。
(やばいやばいやばい!!このままだと国外追放から暗殺ルート直行!王妃好感度MAXルート開放条件は直談判!今行かなきゃ詰む!!なんで転生先が断罪の後なの!!)
王城の回廊を駆け抜けながら、エマは歯を食いしばる。
(レティシア!待ってて、絶対、助けるから!!)
こうして。聖女エマ・グレイスは運命を書き換えるために走り出したのだった。




