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帰還と誓い


王都ルミナリアが見えたのは、昼を少し過ぎた頃だった。

白い城壁が陽光を受けて輝き、大聖堂の尖塔が空に伸びている。

かつて――私が断罪され、すべてを失うはずだった場所。

けれど今、馬車の外には王国騎士団が整列し、城門前には王家の紋章が掲げられていた。


「・・・戻ってきたのですね」

思わず、そう呟く。隣に座るエマは、静かに頷いた。

「はい。王都です」

城門が開かれ、馬車はゆっくりと中へ入る。

街路には人々が集まり私たちの姿を見てざわめきが広がった。


「聖女様だ」

「ローゼンヴァルト令嬢ご無事だったのか・・・」


馬車は王城へと向かう。

胸の奥が、落ち着かない。王城の正門前で、馬車は止まった。

扉が開くと、そこに立っていたのは両親だった。


「レティ」

聞き慣れた声。


ローゼンヴァルト公爵と公爵夫人が、王城の階段の下で待っていた。

「お父様、お母様」

足が、震えた。父は無言で歩み寄り、私を強く抱きしめた。

「生きていてくれたか」

その声は、わずかに震えていた。

母も、私の肩を抱き寄せる。

「よかった本当に・・・」

私は、こらえていた涙が溢れそうになるのを必死で抑えた。

「ご心配をおかけしました」

父は、ゆっくりと私の顔を見つめる。

「よく耐えたな」

その言葉に、胸が熱くなった。

父は次に、エマさんへと向き直る。

「あなたが、娘を救ってくださった聖女エマ・グレイス様ですね。心より感謝いたします」

エマは、まっすぐに父を見て頭を下げた。

「レティシア様を救う事は、当然の事です。」

母が、そっと微笑む。

「レティシアを守ってくださったこと、決して忘れません」

エマは、深く息を吸った。


そして、はっきりと告げた。

「私はレティシア様を、必ず幸せにします。たとえ王国のすべてを敵に回すことになっても。たとえ、権力を使うことになっても。彼女の人生を、誰にも奪わせません」

その言葉は、迷いがなかった。


父は、一瞬だけ目を見開き、そして、頷いた。

「その覚悟、確かに受け取った。娘を、どうか頼みます」


私は、二人のやり取りを呆然と見つめていた。

(幸せにすると、ここまで言い切る人が・・・)


胸の奥が、静かに熱を帯びる。

母が、そっと私の手を取った。

「レティ。女性と婚約なんて、初めは反対だったけど、レティが幸せにならないなら意味ないもの。相手が聖女様なら尚更ね」

私は、こくりと頷いた。

「はい」


王城の鐘が鳴る。

帰還を告げる音が、王都に響き渡る。


こうして私は、全てを失うはずだった場所へ聖女の婚約者として、戻ってきた。


そして、気づき始めていた。

エマ・グレイスという人を。


私の未来を共に歩く者として。





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