表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

薔薇乙女の最期

挿絵(By みてみん)


あの日の空は、どこまでも青かった。

成人祝祭の広場は花で満ち、王城の鐘は祝福の音を響かせていた。


私は、ただそこに立っていた。


「レティシア・フォン・ローゼンヴァルト」

第一王子レオン・ビート・ルミナリアの声が、広場に響く。

冷たく、はっきりと。

「本日をもって、貴殿との婚約を破棄する」


ざわめきが走る。貴族たちの囁き。市民の驚きの声。視線が、私に突き刺さる。


「理由は明白だ」

王子は続けた。

「貴殿は、聖女エマ・グレイスに対し長きにわたり、陰湿な虐めを行ってきた」

人々の視線が、広場の端に集まる。

淡い髪の少女が、立っていた。顔色は悪く、今にも倒れそうだった。

「私は・・・」

エマの声は、震えていた。

「レティシア様にずっと、怖い思いをさせられていました・・・」

その言葉が、刃のように胸に突き刺さる。


「そんなことは」

言いかけた声は、掻き消される。


「ローゼンヴァルト家は王国の名誉を汚した。よってレティシア・フォン・ローゼンヴァルトを本日をもって国外追放とする」


(追放?)

「待ってください」

私は声を張った。

「私は、何もしていません。エマさんに――」

「黙れ」

王子の声は、氷のようだった。

「お前は、聖女を傷つけた。それだけで、罪だ」


私は、言葉を失った。


◇◇◇


その日のうちに、私は城を追い出された。

持ち出しを許されたのは、最小限の荷物だけ。

家の者とも会えなかった。


「お嬢様」

御者が、気まずそうに言った。

「国外へ向かいます」

私は、馬車の中で膝を抱えていた。

(なぜ、こんなことに)

私は、エマさんに何をした?

私は、何を奪った?

私は、何を壊した?

答えは、どこにもなかった。

馬車は、山道へと入る。道は細く、森が深くなり、人の気配が消えていく。

胸が、ざわついた。

「・・・おかしい」

その時だった。


ガタン、と馬車が大きく揺れた。

「止まれ!」

外から、荒々しい声。馬が嘶く。刃の音。

私は、息を呑んだ。


「・・・まさか」

扉が開かれる。

男たちが、乗り込んでくる。

覆面。

武装。

訓練された動き。

「ローゼンヴァルト令嬢だな」


「・・・あなたたちは」

「依頼だ」

短い言葉。感情のない声。理解した。


(・・・最初から・・・生かすつもりはなかったのだ)

刃が、振り上げられる。


(エマさん・・・あなたは、私を――)


最期に見たのは、木々の隙間から差し込む青空だった。

そして――すべてが、闇に沈んだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ