第97話 近衛騎士との遭遇
リアがポカンとその人を見ていると、ジークフェルドが少し嫌そうな表情で声をかけた。
「なんでお前たち、こんな時間にここにいるんだ?」
「隊長に忘れ物を取ってきてほしいと頼まれたんですよ。」
真ん中にいた人が、”ほら”と言って手に持っていた豪華な飾りのついた剣を見せてきた。
「うわー。なんでそんな大事なもの忘れるんだよ。やばくないか?」
その言葉に3人とも”ですよね”と言いながら笑い声をあげている。
初めにジークフェルド様が嫌そうな顔をされた気がしたけど、仲良さそう・・・。
リアは黙って4人が話すのを見ていた。
「リア、こいつらは近衛騎士なんだ。左からライアン、リアム、ルイだ。年齢も近いから話す機会も多くて仲が良かったんだ。」
ジークフェルドが3人を紹介してくれた。
リアはスカートをつまみ膝を少し折って挨拶をした。
「リア・アーロンです。」
3人は興味深そうにリアを見ている。
王子が連れている見たことがない少女だし興味もわくだろう。
アルノーの生徒会の話とか、もっと何か自己紹介した方がいいのかしらとリアが考えていると、ジークフェルドが先に話し始めた。
「リアはアルノーの貴族なんだ。生徒会で一緒でな。後からクリスとか他のメンバーも来る予定なんだ。」
そう言うと、さっさと話題を打ち切り、留学している間の騎士団の様子を尋ね始めた。
他のメンバーって、後から来るのはクリス様だけよね?
後々の王子妃選びなどの時にもめ事になってもいけないし、あまりリアの存在を広めたくないのかもしれない。
そう思い、少し寂しく感じたが仕方のないことだ。
気持ちを切り替え、この3人を観察することにした。
近衛騎士になるには貴族でなければいけないし、式典に出ることが多いから外見も重視されるってイーリスが言ってたな・・・。
リアは目の前にいる3人を眺めながらイーリスの言葉を思い出し、心から納得していた。
よほど仲が良かったのか、4人の会話は途切れることなく続けられた。
初めはその優れた容姿や格好いい制服をジロジロと見ていたが、しばらくすると3人の観察にも飽きてしまった。
そしてふと目線を変えた瞬間、訓練場の向こう側に思わぬ人物を見つけた。
チラッと王子たちを見ると、まだまだ話は続きそうだった。
リアはくいっとジークフェルドの袖を軽く引いた。
「あの、少しだけここを離れてもいいですか?すぐに戻ってくるので・・・。」
小さな声で話しかけてきたリアにジークフェルドは頷いた。
「ああ、わかった。長話になって悪かったな。そこを真っ直ぐ行って右に曲がったらすぐだ。」
リアがお手洗いに行きたいと勘違いしたジークフェルドは手洗いの場所を説明してくれた。
しかし、リアは”わかった”を聞いた段階で身をひるがえし回廊を走っていってしまった。
そんなに手洗いを我慢していたのか。悪いことをしたな。
ジークフェルドが彼女の後ろ姿を見ながらそう思った瞬間、リアがきゅっと左に曲がった。
回廊から訓練場に出る短い階段を駆け下り、訓練場のど真ん中を横切っていく。
「リア⁉どこへ?」
ジークフェルドは驚いて声をあげた。
近衛の3人もびっくりした表情で走り去るリアを見ていた。




