第82話 生まれたばかりの恋心
公爵家に呼び出されたのが金曜だったので、王宮に一泊し週末には学生寮へ戻ってくることが出来た。
襲われかけた時は本当に怖かったが、何かされる前にジークフェルドに助けてもらえたし、その後王妃様や生徒会のメンバーに慰め、はげまされ、リア自身はすっかり気持ちを持ち直すことが出来ていた。
寮の部屋に帰り一人きりになると、リアはベッドに寝そべり今回の出来事をじっくりと思い返してみた。
ジークフェルド様、格好よかったな・・・。
たった一人で颯爽と現れ、リアをかばいながら3人の男を体術で倒したのだ。
リンドブルムでは、兄王子が王位を継ぐため、ジークフェルドは軍部のトップとなるべく幼い時から騎士団の訓練にまじったりしていたと言っていた。
普通に考えれば、町のチンピラが訓練された騎士にかなうわけはないのかもしれない。
しかし、助けられたリアにとっては、文化祭の劇のように魔王から救い出してくれた王子様のように思えたのだ。
普段はクリスやヘンドリックに比べて、愛想がいいわけでもないし、ぶっきらぼうなのだが、いざという時にとても優しいのだ。
初潮で体調が悪かった時も、お姫様抱っこで保健室まで運んでくれた。
クロミー先生も言っていたが、あの時も王子様の様だった。
ただ、彼は王子様のような人ではなく、本物の王子様なのだ。
今日になり、トルドー公爵に言われた言葉がリアに重くのしかかっていた。
”身分をわきまえろ”
生徒会ではみんなが気さくに接してくれていたし、王妃様まであんなに親し気なそぶりだったので、今まで身分差というものを感じることがあまりなかった。
ただ、恋愛や結婚という話になると身分差は確かに存在するのだ。
目をつむり、ベッドの上で2,3回深呼吸をした。
「まだ、大丈夫。」
リアはつぶやいた。
今なら、まだ芽生えかけた恋心に蓋をすることが出来る。
週明けから、また生徒会のある日常が始まる。
「リア、いつも通りよ。」
胸を両手でおさえ、リアは自分に言い聞かせたのだった。




