第81話 王宮での朝
リアは恥ずかしそうに頬を染めた。
「イルさん達と剣の練習をしていて良かったです。」
「イルさんって、ワッツ伯爵家出身の背の高い騎士か?」
ジークフェルドが尋ねた。
「はい。領地で教わってた内容をお話ししたら、せっかくだから実戦で使えるように練習してみようかと言われたんです。それでこの間、イーリスと一緒に下半身を狙って打つ訓練をしてもらったばかりだったんです。」
イルとは確か文化祭でリアを高い高いしていた軽そうな男だ。
実はいい仕事をしてたんだな。
クリスは内心そんなことを考えた。
「領地で、なんでそんな訓練してたんだ?」
ジークフェルドに聞かれ、リアは首をかしげた。
「領地では訓練というよりは、遊んでもらいながら学んだというか。万が一、男に襲われたらこうするんだよー、みたいな感じで。」
そんな話をしながらリアは剣の使い方を指導してくれたロイの顔を思い浮かべた。
今度会った時、ロイから教わったことが役に立ったって報告しなきゃ。
一方、ジークフェルドは自分の剣の師匠であり、リンドブルムの将軍でもある男のことを考えていた。
リンドブルム王家の血を引いているとはいえ、リアの身分は男爵令嬢だ。
身を守ってくれる騎士が付くわけではない。
将来、リアが誰かに襲われることがあるかもしれないという可能性を考えて剣を教えていたんだろうか?
だとしたら、流石だな・・・。
※
朝食もあらかた済み、食後の紅茶を飲んでいるとき、リアがぽつりとつぶやいた。
「ルーファス先輩は?」
一瞬その場に静寂が訪れたが、クリスがリアの質問に答えてくれた。
「ルーファスは昨日、トルドー公爵と共に王宮に呼ばれ母上から厳重注意をうけているよ。」
ルーファス個人が注意されたわけではないが、公爵家全体としての扱いだ。
黙って話を聞いているリアにクリスは続けた。
「リア、君はどうしたい?公爵の行った行為は犯罪だ。リアが望むならルーファスを生徒会から外して、君の目に触れないようにもできるよ。」
それを聞いてリアは目をみはり首を振った。
「公爵様にはひどいことをされたと思いますが、ルーファス先輩に何かをされた訳じゃないです。先輩を罰してほしいなんて思いません。」
リアの言葉にクリスはニッコリと笑った。
「君ならそう言うと思ったよ。昨夜ルーファスは父親のしでかした事を聞いて、かなり落ち込んでいたよ。自分から生徒会を辞めると言い出すかもしれない。もし、彼がそう言いだしたら、一度本人と話をしてくれるかい?」
「わかりました。」
リアは真剣な表情で頷いた。




