第75話 下町
それを見たリアはとっさに地面に落ちていた廃材を手に取り、渾身の力で男の向こうずねに打ち込んだ。
「いてぇ。」
男はナイフを落とし、すねを押さえ座り込んだ。
背後の男に気付いたジークフェルドはすばやくナイフを拾うと同時に、座り込んでいた男に再び蹴りをいれた。
男たちが完全に戦意を失くし、地面に転がり込んだ頃、警備隊員が数人走ってこちらにやって来るのが見えた。
「通報がありましたが、大丈夫ですか?」
「この3人がこの娘を襲おうとしていたんだ。しっかり締めあげておいてくれ。」
ジークフェルドの言葉を聞き、隊員たちは顔をしかめた。
「ああ、この辺りで有名な悪ガキたちですね。また、悪さをしたのか。」
隊員たちは、そう言って3人を縛りあげ連れて行った。
リアは茫然とその様子を見守っていたが、隊員たちが去ると襲われた恐怖がよみがえってきた。
ブルブルと震えだし涙を流すリアをジークフェルドが抱きしめた。
「もう大丈夫だ。誰にも何もさせないから。俺が守ってやるから。」
背中を優しく撫でながら、ジークフェルドは必死にリアをなぐさめたのだった。
「ジークフェルド様」
名前を呼ばれ、顔を向けると王宮の馬車が戻ってきていた。
ジークフェルドがリアを助けるため馬車から飛び降りる前に、警備隊を呼びに行くよう頼んでいたのだ。
「よく動いてくれて助かった。」
御者をねぎらうと、ジークフェルドは両腕でリアを抱き上げ、馬車に乗せた。
「王宮へ。」
ジークフェルドの命令で馬車は走り出した。
馬車の中でもリアはポロポロと泣き続けていた。
ジークフェルドは無言でハンカチを差し出し、リアの肩を抱き寄せた。




