第74話 下町
ガラガラガラガラ
帰りの馬車の中で、リアはずっとうつむき涙を流していた。
しばらく走った後、馬車が止まった。
「着きましたよ。」
使者の男性に促されて、リアは馬車を降りた。
しかし、降りた先は見知らぬ場所だった。
人通りもなく、夕方なのに街灯も薄暗い。
地面にはゴミや廃材が落ち、転がっている。
ここ、どこ?
リアは焦って使者の方を振り返ったが、馬車の扉はさっと閉められ、あっという間に走り去ってしまった。
リアは唖然と馬車が去るのを見ていたが、ハッと意識を戻した。
誰かに場所を聞いて、歩いて学院に帰らなきゃ・・・。
恐ろしいと思う気持ちをこらえて、リアが人を探そうとしたその時、3人の若者がリアに近づいて来た。
3人ともガラの悪そうな人相で、ニヤついた表情を浮かべている。
リアが怯えていると、男の一人がリアの手首をつかんだ。
「ひゃあ。めっちゃ可愛いじゃん。この娘とヤッて報酬もらえるとかラッキーな仕事だな。」
「仕事?」
何それ?
リアの疑問に、その男が答えてくれた。
「さっきの馬車に乗ってたおっさんがいるだろ。あいつに頼まれたんだよ。ここに置いて行った娘をめちゃくちゃにしてくれって。」
「なっ!」
リアは絶句した。
公爵様の命令なの?
おびえるリアを見て、他の男が話しかけてきた。
「大丈夫。傷つけたり、殺したりなんてしないさ。俺たちとイイことするだけだ。終わったら学院に帰してやるよ。どうせなら、楽しもうぜ。」
絶体絶命だった。
逃げなきゃ・・・。
そう思っても手にも足にも力が入らない。
恐ろしさのあまりリアがギュッと目をつむった瞬間、男の”ぐあっ”という叫び声が聞こえ、手首をつかまれていた手が離された。
「汚い手でリアに触るな!」
聞き覚えのある声にリアが目を開けると、ジークフェルドが背にリアをかばうようにして立っているのが見えた。
先ほどリアの手首をつかんでいた男はわき腹を押さえ、地面に転がりうめいている。
ジークフェルドが回し蹴りをくらわせたのだ。
残りの2人がジークフェルドに襲い掛かってきた。
「この野郎。何しやがる。」
初めにとびかかってきた男に、ジークフェルドは右手でボディブローを打ち、その直後姿勢を変えたかと思うと、次の男に膝蹴りを食らわせた。
「うげっ!」
男たちは悲鳴をあげ、次々と地面に倒れこんだ。
さすがのジークフェルドもゼイゼイと肩で息をしている。
とその時、最初にジークフェルドが倒した男が立ち上がり、ナイフを片手に背後から忍び寄りジークフェルドに襲い掛かろうとしていた。




