第68話 定期テスト その2
「リアちゃん、アンドレアを知ってるの?」
代表してヘンドリックが尋ねた。
「はい。ちょっと前なんですけど、忘れ物をして廊下を走っていたら曲がり角でアンドレア先輩にぶつかってしまって、私が転んでしまったんです。」
4人全員が心の中で思った。
なんで、よりによってそんな奴にぶつかるんだ。
「私が悪かったのに、すぐに駆け寄ってきて心配そうに起き上がるのに手を貸して下さったんです。しかも、その後散らばったノートや文具を拾うのも手伝ってくれて。」
誰だ、それは。
本当にアンドレアなのか?
「おまけに、その時落としてしまった生徒手帳をわざわざ後で1年の教室まで届けに来てくれたんです。同級生に聞いたんですけど、侯爵家の方なんですよね?高位の貴族の方ってプライドの高そうな人も多いのに、気さくでいい方だなあって思ったんです。」
ニコニコ笑うリアに賛同する者は誰もいなかった。
クリスはこめかみを押さえ、ジークフェルドとルーファスは無表情で無言をつらぬき、ヘンドリックは苦笑いをしていた。
「手帳を返してもらってからは特に交流はないの?」
クリスに尋ねられ、リアは首を横に振った。
「はい。何か先輩が言いかけたんですけど、そこにオズワルド先生が通りかかったんです。決算書のミスが見つかったから訂正するのを手伝ってほしいとおっしゃられたので、そのまま一緒に職員室に行ったんです。あ、そうそう。そのぶつかった時にメガネが壊れてしまったので、それから裸眼なんですよ。」
リアの言葉を聞いてルーファスは心の中でつぶやいた。
あのポンコツ教師、会計の仕事ではさんざん迷惑を被っているが、時々タイミングよくいい仕事をするな。
※
話が一区切りし、皆にお茶をいれようとしたリアが”あっ”と声をあげた。
「お茶の葉が無くなってたの忘れてました。今なら購買があいてるから買ってきますね。」
リアは会計の財布を握りしめると、部屋から出て行ってしまった。
リアが去った後、ジークフェルドがため息をついた。
「この学院にはアンドレア・ディアブロンって同姓同名の奴がもう一人いるのか?」
「いえ、彼一人です。」
ヘンドリックが律義に答えた。
クリスが肩をすくめた。
「うちのお姫さまは大きな騎士やらいじめっ子やら、あちこちで妙な男をひっかけてくるから困ったものだね。ルーファス。」
クリスに名前を呼ばれ、ルーファスが彼の方に顔を向けた。
「君、害虫駆除とかは得意だろう?まかせたよ。」
「御意に。」
ニヤリと笑い、ルーファスは頭を下げたのだった。




