第64話 アンドレアとの遭遇
その日、アンドレア・ディアブロンはご機嫌だった。
先ほど、憎きライバルの噂話を聞いたのだ。
アンドレアはディアブロン侯爵の嫡男で、身分良好・容姿端麗・成績優秀と非の打ちどころのない貴公子だ。(注;自己評価)
そんな彼の目の上のたん瘤がルーファス・トルドー公爵子息だ。
ルーファスは見た目も良く、身長もアンドレアより1cm高い。
身分も高位貴族の自分より、さらに上位の貴族だ。
しかし、一番の問題はそこではなく成績だった。
アンドレアは優秀だった。
おそらく一つ上や下の学年だったなら、学年主席を独走していただろう。
それなのに、この学年にはルーファスがいるため自分は万年2位に留められているのだ。
何かあいつに弱点はないのか。
常日頃から、ずっと彼の欠点やアラがないか探し続けていた。
そして、ついに先ほど面白い噂話を聞いたのだ。
”最近、ルーファスが大切にしている女の子がいて、食堂で仲睦まじく二人でランチをしていた。しかも彼女はルーファスの色の髪飾りを付けていた”というものだ。
それだけなら面白くもなんともないのだが、相手の女というのがくじ引きで生徒会に入ったど田舎の男爵家出身の超イモ娘だというのだ。
あのくじ引きの日、アンドレアは自分が選ばれるよう念じ続けていた。
憎きルーファスが当たり前のように初めから生徒会メンバにー入っているのに、なぜ自分が入っていないのか。
しかし祈りは届かず、選ばれたのは目立たない2年の男子生徒と小さいチンチクリンの1年の女子生徒だった。
特に壇上に上がった1年生は学院の中でも最下層の下に位置してそうな生徒だった。
ぐりぐりのメガネに、パサパサした髪、ブカブカの制服・・・。
本当に貴族なのか?
あまりのダサさに、その姿はアンドレアの脳裏に深く刻みこまれていた。
天が何物与えたのかと思われるほど、あらゆる面で優れているルーファスの女の趣味が田舎の子だぬきとは傑作だ。
神は彼に女を見る目というものを与えなかったのだろう。
陰で笑いものにしてやろう。
アンドレアがニヤニヤ笑いながら廊下を歩いていると、突然廊下の曲がり角で何かがぶつかってきた。
ドンッ
「きゃっ」
小柄な女生徒だった。
体格差のためか、はじき飛ばされたのは女生徒だけだった。
廊下に倒れこみ、カバンの中身があたりに散らばっていた。
くそっ!痛いだろうが。
廊下は走るな!ちゃんと前を見ろ!
アンドレアは心の中で悪態をつき、本人にもそれを伝えようと倒れこんだ女生徒に近づいた。
「おい。」
声をかけられ、女生徒は上を向き、焦った表情になった。
ぶつけたところが痛かったのか少し目がうるんでいる。
「あの、ごめんなさい。忘れ物をして、慌てていて。怪我とかないですか?」
アンドレアは謝る彼女の顔をみて固まった。




